米ムー共同訓練が終了し後処理も一段落した頃、新生合衆国最大規模の軍港である『ニューノーフォーク』の岸壁にムー本国からやって来た貨物船が停泊していた。
岸壁に横付けされた貨物船には演習を終えた海上歩兵団の戦車や装甲車が次々とクレーンに持ち上げられながら収容され、別の貨物船には海上歩兵団の兵士達が乗り込んでいく。
この日は合衆国本土に派遣されていた海上歩兵団撤収予定日であり、海上歩兵団は夕刻には合衆国本土を離れてムー本国へ向けて帰還する予定である。
「短いようで長かったな」
ヴァンデクリフトは貨物船の甲板からニューノーフォーク港を眺めている。
演習でこの地を訪れた時の緊張感とは裏腹に、今の彼の心情は緊張感から全て解放されたかのような感情に満たされている。
今回の演習では様々な教訓を得る事が出来、ムーに於ける4つめの軍事組織である海兵隊構想に大きく前進できた事が何よりもの喜びであった。
「閣下。全部隊の収容、正午には全て完了します」
「分かった。くれぐれも事故のないように」
「了解です」
副官からの報告を受け、ヴァンデクリフトは書類に目を通す。
「さて、帰ったらまた訓練だな」
そして、この日の夕方には、海上歩兵団を乗せた貨物船団とムー艦隊はニューノーフォークから出港し、ムーへの帰路に就いた。
一方その頃………
「どうやらこの先にあるみたいだ」
ムーの隣国マギカライヒ共同体の首都から南に100キロの場所にあるラヴァナーナル帝国の遺跡がある。
今現在この場所には、マギカライヒ共同体の事実上の政府である学院連合から派遣された調査隊19人と護衛の陸上隊(事実上の陸軍)部隊20人が遺跡調査に訪れていた。
調査隊は遺跡の隅々まで調査し、この日は最後の遺跡調査として、遺跡の奥深くに安置されている棺のような箱の調査が行われている。
「見たことの無い素材だな」
「何なんだこれは?」
調査隊の一人が棺の蓋にあたる部分にポツンと取り付けられている赤いボタンを見つける。
「あまりあれこれ触るな。罠が仕掛けられているかもしれんぞ」
「ですがこの遺跡は1万年も昔のものでしょ?どうせ使い物になんてならないですよ」
研究員はそう言いながらボタンを押した。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……………
すると、固く閉ざされていた棺の蓋が左にスライドするように自動で開きはじめた。
「棺が開いたぞ!」
「誰か中を覗いてみろ」
若い研究員が棺の中を覗き込む。
「どうなってるんだ?回りが暗くてよく見えないぞ」
棺の中は回りの建物の影に覆われて何も見えない。より深く覗き込もうと顔を棺の奥へと近づける。
「なんだ?音がする……」
その瞬間……
「グァバ!」
棺の中から鋭い何かが飛び出し、研究員の頭を貫いた。
「隊長がやられた!!」
「まさか………あの棺の中に何か居るのか!」
調査隊は言葉が出なかった。
調査隊の隊長が鋭い何かに頭を貫かれ絶命し、傷口から血が鋭い何かを伝って滴り落ちる。
「戦闘配置!!」
調査隊の護衛に来ていた陸上隊は手にしていたライフルを構える。
「何か出てくるぞ!」
棺の中から人影のような物体が起き上がってきた。
人影は上半身だけを棺の外へと晒し、首を調査隊と陸上隊に向ける。
「撃てぇ!」
陸上隊は人影に向けて射撃をはじめたが、放たれた弾丸は全て弾かれてしまう。
『私が眠っている間、外の世界がどのように変わったのか、この貧弱そうな発明をを見て想像できるな』
「喋った!?」
人影が喋りだした事にその場にいた全員が驚いた。
『そのような幼稚な発明でこのリョノスに傷をつける事ができるかっ!!』
人影の目のようなものが赤く光る。
この日、調査隊と陸上隊からの連絡が途絶し、マギカライヒ共同体は直ちに調査隊と陸上隊の捜索を開始した。
続く
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