日本国召喚×不沈戦艦紀伊   作:明日をユメミル

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第79話

マギカライヒ共同体首都エーベスト

 

中世ヨーロッパを思わせるような町並みのエーベスト市内には、政府要人や外国VIP用に用意された『エーベストホテル』がある。

そのホテルの最上階にある最高級スイートルームの一室に2人の男が居た。

 

 

「成る程、それで私にご助言をですか?」

 

「はい。大魔道士と謳われているファルタス殿に是非ともお力を」

 

 

マギカライヒの外交部門を示す服に身を包んだ男の目の前に居るこの男、中央法王国でも指折りの魔導士『ファルタス・ラ・バーン』はこの日、旅行目的でマギカライヒに訪れており、休日を満喫中にマギカライヒ外交部門からの訪問を受けていたのである。

 

彼が何故にマギカライヒの政府機関の人間と話をしているのかと言うと、それは魔法帝国の遺跡調査に向かった調査隊と陸上隊からの連絡が途絶した事についてであった。

 

 

「捜索に向かった別の陸上隊が確認したところによると、首都エーベストから南へ50キロにあるバルーン平野に突如としてこのような塔が出現し、それを産み出したと思われる化け物の存在を確認いたしました」

 

 

彼は懐から1枚の写真をファルタスに見せる。

 

 

「拝見します」

 

 

ファルタスは写真に写っている化け物を観察する。

 

 

「これは…!?」

 

 

その直後、ファルタスの顔色が変わった。

 

 

「成人男性ほどの背丈にブツブツとした青と緑に変色する皮膚、どす黒い目…………まさかアレなのか!?」

 

「アレとは?」

 

「…………魔法帝国はノスグーラと言う人工生命体を産み出したと言う話はご存じでしょうか?」

 

「えぇ。確か、トーパ王国に出現したと言うあのノスグーラの事でしょう?」

 

「えぇ。伝承によれば、トーパ王国のノスグーラは魔法帝国が自分たちに変わり戦闘を行う戦闘生物を研究していた様で、その試作品として産み出されたのがトーパ王国のノスグーラです。ノスグーラはその強大な魔力を遺憾なく発揮し、たった1体で世界を滅亡寸前に追いやりました。それはご存じでしょう?」

 

「えぇ」

 

 

「しかしこれには続きがあったのをご存じでしょうか?」

 

「続き……ですか?」

 

 

「はい」

 

 

ファルタスは水を一口だけ口に含んでから話を続ける。

 

 

「実は魔法帝国はノスグーラを量産しようとしていたらしいのです」

 

「量産ですと!?あのノスグーラをですか!」

 

「はい。確かにノスグーラは言い伝え通り、この世界の如何なる種族を以てしても対抗できない戦闘能力を発揮しました。しかしノスグーラを産み出すには尋常ではない量の魔力が必要で、これが量産を阻む大きな壁となったのです。そこで魔法帝国はノスグーラをなんとしてでも量産するためにある事を考えたのです」

 

「ある事?」

 

「それは試作品のノスグーラからある程度能力を省き、魔導兵器をある程度扱えるだけの能力を持った、量産型ノスグーラ、所謂"廉価版"を試作した訳です」

 

「ノスグーラの廉価版………して、その戦闘能力は?」

 

「文献にはあまり詳しくは記載されてはいませんでしたが、魔力を発した際に背中から光の翼が生えるそうです」

 

「光の翼…………そう言えば、捜索隊がその化け物から光の翼が生えているのを見たとの証言がありますが、その化け物が」

 

「量産型ノスグーラに間違いないでしょう」

 

 

 

外交部門の役人はノスグーラのような化け物が魔物を多数従えては攻めてくる光景を思い浮かべ顔を青くする。

もしそうなれば自国の戦力と技術力ではあまりにも非力で、到底叶う事は出来ないと理解する。

 

 

「ファルタス殿!今のお話、直ちに上層部へお伝えします!そして、他国に支援を仰ぐ必要がありそうです!」

 

「分かりました。では私も非力ながらご協力いたしましょう。私程度でどこまでお役に立てるか分かりませんが、戦力は一人でも多い方がよろしいでしょう」

 

「ありがとうございます!」

 

 

 

ファルタスの話は直ちにマギカライヒ共同体の上層部へと上げられた。

古の魔法帝国に関する事案だと理解した上層部は自国の危機とし直ぐ様、隣国ムーと日本に援軍を要請したのであった。

 

 

 

 

 

 

そしてその2日後……

 

 

 

ムー首都オタハイトにある統括軍本部庁舎内にある海軍省『海上歩兵団準備室』にて執務を行っていたヴァンデクリフトの元に内線電話が掛かってきた。

 

 

「この番号は……」

 

 

ヴァンデクリフトは机の上にある複数の内線電話にはそれぞれ1から5までの番号が割られており、その中でも最高位の人物から掛かってくる番号には1が割り振られている。今、ベルがなっているのはその1番の電話機であり、これは統括軍最高司令部直通のものであり防諜用に会話は全て暗号化される極秘回線となっている。

 

 

何事かと思いつつヴァンデクリフトは受話器をとる。

 

 

「海上歩兵団準備室」

 

『私だ。たった今、最高司令官より君達へ1号命令が下った』

 

「1号命令……しかも最高司令官からの」

 

 

彼は驚いた。

1号命令とはムー軍における命令の重要度を示しており、それぞれ優先順位と重要度に合わせて5つがあり、その中でも最高位である1号命令は緊急を要する最重要命令を意味している。

しかもその命令を出せるのはムー国の全軍最高司令官である、国王『ラ・ムー』以外には居ない。

 

 

国王直々の命令と聞き、ヴァンデクリフトは緊張で体が強張る。

 

 

『命令内容は追って連絡する。海上歩兵団全部隊は直ちに24時間態勢で全力出撃可能状態で待機せよ。ヴァンデクリフト中将は至急王城に出頭するように』

 

「了解しました!」

 

 

ヴァンデクリフトは受話器を置くと直ぐに、海上歩兵団隷下の全部隊の指揮官に連絡を入れ、海上歩兵団全部隊の出撃用意を指示した後、王城へと赴いた。

 

 

 

 

 

 

同じ頃、日本国 静岡県習志野市 陸上自衛隊習志野市駐屯地

 

 

第1空挺団、特殊作戦群の本部があるこの駐屯地内に今年新たに創設された『特殊有害鳥獣駆除作戦隊』という部隊がある。

これは、昨年のトーパ王国での事件を教訓に設立され、主に魔法帝国関連の有事に対処する部隊である。

 

この部隊に所属する隊員と装備は、トーパ王国事件でトーパ王国に派遣されたトーパ王国有事鳥獣駆除任務部隊のものを引き継いでおり、同部隊の指揮を任されている鬼島浩1等陸佐は、防衛省本部からの命令を受けていた。

 

 

「はい………はい…………了解しました。では準備に入ります」

 

 

鬼島は電話の受話器を置くと、ある人物を呼びつけた。

 

 

『入ります!』

 

 

群長室のドアが開かれ、鬼島の目の前に現れたのは、トーパ王国事件の際に先遣隊の率いてノスグーラ撃破に貢献し、現在はこの部隊の副隊長を勤めている百田太郎3等陸佐だった。

 

 

「ご苦労、3佐。たった今市ヶ谷から命令が下った」

 

「ではまた…」

 

「あぁ、今度はマギカライヒでの任務だ。どうやら魔法帝国の遺跡から魔王が現れたとの事だ」

 

「魔王っ!?たしかアレは昨年撃破してミリシアルに引き渡した筈では!」

 

「話によると、そのマギカライヒに現れた魔王は昨年3佐達が撃破した魔王とは別個体のようだ」

 

「別個体ですか……」

 

「詳細は追って届くとの事だ。直ぐ全隊員に召集を掛けてくれ」

 

「了解!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

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