駅からバルーン平野に向けて出発した日ムーのリョノス討伐部隊は市街地の大通りを進んでいた。
「凄い注目されてるな」
82式指揮通信車のハッチから身を乗り出していた鬼島と百田は、沿道に集まっていた一般市民達からの視線を受け、少し緊張していた。
「えぇ。こんな大それた車列が通るなら、当然ですけどね」
自衛隊と海上歩兵団の車列は注目を集めており、トレーラーに乗せられた99式と10式が特に視線を集めていた。他の車両、特に外から車内が見えるトラックの荷台に乗っている隊員は緊張からか、表情が堅い。
「今頃、空自が出張ってる頃でしょうね」
その頃、バルーン平野周辺空域では………
『今日で2日目か………』
清んだ青空を轟音を放ちながら飛行している、ムー本土の飛行場から飛行してきた航空自衛隊ムー分遣隊所属のF-2戦闘機4機がバルーン平野一帯を偵察していた。
その内の1機の操縦桿を握っているのは、同分遣隊の小隊長でロウリア戦にも参加していた樋口浩介3等空佐だった。
『しかしコイツの解像度は凄いな』
樋口らは自身が乗り込むF-2に装備されているAN/AAQ-33スナイパーXR照準ポッドのカメラが捉えている高解像度の映像が写し出されている多機能表示装置MFD画面に視線を向けた。
画面にはバルーン平野のほぼ真ん中に聳え立つ謎の塔とリョノスに率いられた魔物の軍勢を鮮明に捉えており、しかもこの映像はデータリンクシステムによりリアルタイムで地上部隊にも送られている。
映像には特に塔や軍勢に動きは見られず、対峙するマギカライヒ共同体の陸上隊と海上歩兵団の偵察小隊が頻繁に動き回っているくらいであった。
それから数時間後………
首都エーベストから、陸上自衛隊と海上歩兵団の連合部隊が遂にバルーン平野へと到達した。
「状況報告!」
バルーン平野を見渡せる小高い丘の上に指揮所が設置され、仮設テントが組み立てられ、無線機や対地レーダー、指揮通信システムが設置されていく。
日ムーの連合部隊は予め待機していた海上歩兵団偵察小隊からの報告を受ける。
「現在、敵拠点は平野中心部の塔を囲むように半径3キロ以内に陣地を構築しており、現在まで特に目立った動きも変化も確認されませんでした」
偵察小隊を率いる小隊長からの報告を聞く鬼島、山西、ヴァンデクリフト。
「敵の数は?」
「コブリンとコブリンロードを中心とした魔物が多数確認されています。数は概算で3000」
「目標に航空戦力はあるか?」
「目標に航空その他の戦力は確認されていません」
「うむ。この様子だと相手は航空戦力は保有していないと見ていいかな?」
「何処かにその他の戦力を秘匿している可能性も捨てきれません。航空優勢を確保する必要があります。幸い空自の戦闘機部隊が空中待機していますから、万が一の際に」
「了解。先ずは確認されている敵地上戦力の最優先にしよう」
連合部隊は航空優勢確保を空自に一任し、先ずは敵の地上部隊の戦力分析をした後、それに最適な部隊配置を進めた。
続く