頭上から降り注いだ大量のクラスター爆弾は、魔物の軍勢を一瞬のうちに爆発の渦に包み込んだ。
大量の子爆弾の爆発による爆風と衝撃、熱波、破片はコブリンとコブリンロードをバラバラに吹き飛ばし、身体が木の葉のように宙を舞い、落下して地面に叩きつける。
『初弾、敵頭上にて炸裂。敵襲団、被害甚大!』
「次弾斉射!撃て!」
続けてMLRSはM26を斉射で発射し、魔物に被害を与えてる。
クラスター爆弾の利点である広範囲の敵地上目標に被害を与える効果は高く、大雨の如く降り注ぐクラスター爆弾は2000もの魔物を効率的に破壊していく。
「射撃終了!次弾装填作業開始!!」
MLRSが射撃を終えて、装填作業に入った。
この時点で魔物らはほぼ全滅に近い状態だが、ノスグーラの下位互換であるリョノスの戦闘能力が不明な現状、敵の数を少しでも減らす必要があるため、容赦をする事は無い。
「射撃用意、撃て!」
「砲撃はじめ!」
99式と105ミリ、120ミリ榴弾砲が射撃を開始する。大小の砲弾が連続射撃を行い、既に虫の息だった魔物らにトドメを刺す。
彼らの居た場所は爆炎に覆われ、土が舞い上がり、地面にクレーターが作られていく。
「撃ち方やめ!」
射撃が終わる。
観測隊が着弾地点を確認する。
「確認、敵地上部隊全滅!」
着弾地点に魔物の姿はなく、動くものも無く、あるのはクレーターが出来た地面に、地面を燻っている炎だけであった。
「ヌゥッ!」
塔からこの様子を見ていたリョノスは驚いていた。
「これ程の破壊………何が起きたと言うのだ。敵にこれ程の破壊を巻き起こす程の魔力など感知出来なかったぞ」
リョノスは魔力を計測する計測計が壊れているのでは無いかとチェックするが、計測計に異常はなく適正な数値を表している。
「えぇい!これでは本当に魔帝様の障害になり得る!こうなればアーマーとカイザーゴーレムを使い、奴らを滅ぼす!」
此処に来てリョノスは切り札である魔導アーマーと自身の能力であるカイザーゴーレムを引き、打って出る事にした。
「うぉっ!!」
準備をしていると塔に、衝撃が走った。
「なんだ!?」
リョノスは外を監視している魔導監視装置を起動させ、ディスプレイに表示させる。
そこには、特科と砲兵隊が塔に対して攻撃を仕掛けている様子が写し出されている。
「ヌゥっ!小賢しい真似を!」
リョノスは塔の防御を固めるため、塔を守る防御装置に魔力を送る。すると、塔を囲むように薄い幕が形成され、飛んできた砲弾が幕に触れたと同時に爆発していく。
「これで時間稼ぎは出来る!奴らの攻撃が止まったと同時に出れば!」
リョノスはシールドで時間を稼ぎ、アーマーとカイザーゴーレムの準備を進める。
「あれは!」
丘の頂上から攻撃の一部始終を見ていたファルタスは、塔にシールドが貼られているのに気がつく。
「鬼島殿、ヴァンデクリフト閣下、あの塔に強固なシールドが貼られている様だ!」
「シールド?」
「あぁ。今、貴殿らの攻撃が悉く防がれている!」
ファルタスが塔を指差す。
鬼島とヴァンデクリフトの目に砲弾が塔に命中するまえに爆発しているのが見えた。
「確かに……山西1佐、砲撃中止を!」
「了解!」
砲撃中止命令が出され砲撃が止まる。
シールドによって完全に防がれてしまった塔に傷は無かった。
「なんて事だ……榴弾が通じないとは」
「どうする?」
「攻撃を中止して、敵の様子を見よう」
日ムー連合部隊は攻撃を中止して、様子を見る事にした。
しかしその直後、塔の扉が再び開かれる。
「あれは!?」
扉の向こうから姿を表したのは、魔導アーマーを身に纏ったリョノスだった。ファルタスはアーマーの頭部にある透明のバイザーの奥に見えるリョノスの顔を見る。
「あれは……リョノスか!」
「リョノス!?あれが敵の親玉か」
鬼島達は初めて見るリョノスの姿に驚く。
まさか魔王がロボットのような格好で姿を表したのだから。
「此処からは普通科と戦車の出番だな。百田3佐!」
「はいっ!」
「指揮を任せる!」
「了解!」
此処からは魔王との戦闘経験がある百田の指揮による戦闘が始まる。百田は部隊通信用無線を使い、普通科と戦車隊に指示を送る。
「猿渡、敵はノスグーラと同等の戦闘力を持ってると思え!奴が着込んでるパワードスーツの戦闘力に注意しろ!」
『こちら指揮車了解!派手に立ち回って見せます!』
「任せるぞ。犬神、普通科隊の指揮を任せるが、油断するな!猿渡の戦車隊との連携を密に」
『了解!』
戦闘態勢を整えた猿渡率いる戦車隊、犬神率いる普通科はリョノスと対峙する。
『来るか下種共!良いだろう、相手になってやる!』
リョノスはアーマーに魔力を送り、魔導機関を始動させると、背中の魔導推進装置のノズルからの噴射力を使い、一気に駆け出した。
「来たぞ!」
『先ずは俺らからだ!指揮車より小隊各車、前進!』
こっちに向かって、信じられない速度で迫ってくるリョノスに対して猿渡が指揮する4両の10式戦車小隊も戦車壕から這い出ると、リョノスを迎え討った。
「先ずは小手調べだ!目標敵車両!弾種徹甲!」
10式戦車の自動装填装置が弾薬庫からAPFSDS弾を引き揚げ、素早く砲に装填する。
触るは車長席にあるタッチパネルを操作し火器管制装置の情報をデータリンクシステムで小隊の全戦車の火器管制装置に送り、自動照準による射撃を指示する。
「小隊集中射、撃て!」
自動照準により小隊からほぼ同時に放たれた4発のAPFSDS弾はリョノスに向かって飛翔する。
『むぅっ!』
しかしこの事を予め予期していたリョノスはノズルの向きを変えてアーマーの移動速度と向き無理やり変えて、砲弾を紙一重で避けた。
「避けやがった!?」
猿渡は当たると思っていた砲弾が紙一重で避けられた事に驚いた。
『やるではないか。なら次は我から行くぞ』
リョノスは火器管制装置を起動させ背中のバックパックから伸びる両肩の魔光砲を起動させる。
魔光砲の砲身が頭部を挟むように上下し、向かってくる10式戦車に向けて照準を合わせる。
『喰らえ!』
砲身から強力な光線が放たれた。リョノスはアーマーの火器管制が光線が戦車小隊に確実に命中するという高い確率を示し、敵を焼き払えると確信した。
『何っ!?』
しかし命中するほんの一瞬、戦車小隊はその場で左右に分かれるようスラロームを行い、間一髪だが光線を回避した。
「危ねぇっ!」
『何なんですか今の!?』
『ビームか!?』
小隊の戦車長達はアーマーから放たれた光線に驚く。猿渡は逸れた光線が地面に塹壕のような縦に長い大穴を開けて、回りの地面に生えてた草を焼き払っているのを見て、あれが命中していたらと戦慄する。
「あんなの喰らったら叶わんな。操縦手、当たらないよう派手に動けよ!」
『勿論!戦車の中で焼かれるのはゴメン被りますからね!』
「こりゃノスグーラよりホネが折れそうだな」
猿渡は苦戦は必至だと直感した。
「小隊、死に物狂いで立ち回れ!必ず奴を仕留める!」
続く
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