日本国召喚×不沈戦艦紀伊   作:明日をユメミル

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第88話

リョノスとの戦闘が終わり、主戦場となった草原には砲撃によるクレーター、自衛隊とムーの攻撃で息絶えた魔物の死骸が散乱しており、死臭が漂っている。

海上歩兵団と自衛隊は現場の後処理に追われていた。

双方とも死骸から発生する病原菌による感染症を防ぐため、ガスマスクと防護服を着用しながら作業に当たっているものの、彼らの表情は全く優れていない。

 

 

「うぇ……あんまし触りたくねぇな」

 

「血が緑色だったり重油みたいに真っ黒だぜ……やっぱり俺達とは違うんだってのがよくわかるよ」

 

 

防護服の手袋越しに伝わってくる魔物の死骸の感触は決して良い物ではない。砲弾の破片や爆風と衝撃波により殆ど原型を留めていないものが多く、隊員や歩兵団達の気力が削がれていく中でも彼らは死骸を砲弾の爆発で出来た大きなクレーターに集めていく。

 

 

「燃料はこれで足りそうか?」

 

「いや、完全に熱消毒させる必要があるから多めに持ってきてくれ」

 

 

魔物の死骸による感染症の蔓延を防ぐ必要がある事から、魔獣の死骸は熱消毒を行った後に地中に埋める手筈となっている。魔獣の死骸や血液から発生する病原菌は他の生物の死骸から発生する病原菌に比べて毒性が強いが、熱により完全に死滅する事から、駆除作戦隊には多数の衛生・化学関連の装備が配備されている。

駆除作戦隊は携帯放射器と民生用火炎放射器を大量に用意しており、背中に背負うタンクに燃料を注入していく。

 

 

 

 

「準備完了」

 

 

クレーターに魔物の死骸が集められた。

隊員達はそれぞれ死骸を熱消毒する係と、魔獣の死骸があった場所一帯の熱消毒を行う係に分かれる。

 

 

「放射用意、放射!」

 

 

 

合図と共に放射が開始された。

魔物の死骸に浴びせられる携帯放射器からゲル化油に点火された炎が空気によって押し出され、魔獣の死骸に降りかかり、熱消毒が行われていく。

一方の民生用火炎放射器を使う隊員達は地面の魔獣の肉片や血液を焼いて消毒していく。

作業開始から僅か10分足らずで辺りは煙に覆われ、風の流れにより他の作業をしていた隊員や海上歩兵団の兵士達にも煙が到達し、たまらずガスマスクをつけてから作業を強いられる。

 

 

そして、後方の司令部に設けられた医療エリアでは戦闘で負傷した隊員や海上歩兵団の兵士達の治療が行われている。

しかし治療と言っても、戦闘で負傷した者は非常に少なく、運ばれてくるのは煙を吸って体調不良になったり、熱中症になったものが大半で命に関わるような者は居なかった。

 

 

その中で、戦闘で負傷した者に入っていた猿渡は医務官から治療を受けていた。

 

 

「いてっ!」

 

 

治療を受けていた猿渡の頬には切り傷がある。これは先の戦闘で飛んできた砲弾の破片か石によるものであり、傷自体も対した事はなく、傷口の消毒とガーゼによる保護で済んだ。

 

 

治療を終えて、テントから出ると車両駐車エリアに向かう。

 

 

「お」

 

 

そこには、先の戦闘で走行不能となった自身が車長を勤める10式戦車が11式戦車回収車により牽引されながら帰ってきたところであった。

 

 

「猿渡1尉ですか?」

 

 

「あぁ」

 

 

「車両の損傷確認をお願いします」

 

 

「了解」

 

 

 

猿渡は整備員から渡されたチェックリストによる損傷確認を行う。

 

 

「しかしまぁ派手にやりましたね。履帯は左右とも剥離、油圧装置も一部破損、エンジンはオーバーブロー、一部センサーの機能不全」

 

「あの状況だ、仕方無いさ。で、コイツは直りそうか?」

 

「今此処にある機材では無理です。本国に戻ったら直ぐにメーカーに回して修理とオーバーホールになるでしょうね」

 

 

 

損傷は予想以上に激しかったが、それと引き換えに厄介なリョノスを倒す事が出来たのは大きい。猿渡には何処か達成感のような感情があった。

 

 

「猿渡殿」

 

 

ふとそこへ、ファルタスがやって来た。

 

 

「ファルタスさん、体は大丈夫ですか?」

 

「私は大した事は無い。猿渡殿は怪我をしたと聞いたが」

 

「なに、頬を破片か小石かなにかで切っただけですよ」

 

 

猿渡はガーゼを指差す。

 

 

「そうか………ならその傷口を見せてくれないか?」

 

「え?」

 

「治癒魔法だよ」

 

 

ファルタスはガーゼを剥がすと、治癒魔法をかける。切り傷は徐々に消えていき、1分足らずで傷は完全に消えた。

 

 

「おぉ………痛くない。ありがとうございます」

 

「なに、対した事はないさ。それじゃ私はリョノスの所へ行ってくる」

 

 

 

そう言うとファルタスは、立ち入り禁止エリアへと向かった。

 

 

 

完全武装の隊員とムー兵によって厳重に守られた立ち入り禁止エリアにあるテントの1つに、捕らえられたリョノスの身柄がある。

 

 

「あ、ファルタスさん」

 

 

そこには大内田とヴァンデクリフトの姿もあった。

 

 

「どうだ?」

 

「目を覚ましません。一応監視していますが」

 

「なら好都合だ。今のうちに魔法封じをしておこう」

 

 

ファルタスはそう言うと、用意していたミリシアル製の首輪と腕輪を未だ意識が戻らないリョノスに掛ける。

 

 

「これで奴は魔法を使ってくる事はない。念のために鎖で手足を拘束しておこう」

 

「はい」

 

 

魔法封じを終えると今度は両手両足を鎖で縛りあげ、完全に動けないようにする。

 

 

「やれやれ、これで何とかミリシアルに引き渡せそうだ」

 

「ご協力ありがとうございます」

 

「構わん」

 

 

 

一連のリョノスが起こした事件はまたしても日本の活躍によりあっけなく終わり、この後捕らえられたリョノスはこの後、ミリシアルへと身柄が引き渡され、既に捕らえられていたノスグーラと共に魔法帝国研究に大いに生かされる事となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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