ムーラの愛騎からの炎攻撃を受けた魔獣は一瞬のうちに身体中を焼かれ、もがき苦しみながら悶える。
「ふぅ……間に合ったな」
ムーラと相棒は魔獣と少女の間に割って入ると、燃え上がる魔獣を見る。
既に身体の半分以上が炭化しているが、それでも魔獣はしぶとく起き上がろうとする。
「まだ生きてる………せめて苦しまないようトドめを刺すか」
彼は元騎士として、せめて相手が長く苦しむ事が無いよう、剣を鞘から引き抜いて大きく振り上げる。
「……………」
無表情、無言のまま振り下ろす。
傷口からは人間のものとは思えない真っ黒な血液が吹き出し、魔獣は動かなくなった。
「ふぅ………レクマイア殿!そちらはどうだ!」
「おぅ!猪肉のステーキが出来たぞ!」
イノシシを攻撃したレクマイアは、黒く焼けたイノシシ型魔獣を引き摺りながらやって来た。
「旨そうな匂いだな………だが血抜きと内蔵を取らないと食べられたモノじゃないぞ」
「それは残念だ。せっかく肉が食べられるかと思ったんだがな」
そんな会話を聞いていた少女、『エネシー』は2人を見つめながら頬を赤らめていた。
『騎士様と竜…………間違いない………あの預言にあった………………私のナイト様が2人も!』
エネシーは心の中でそんな事を考えながら、地面に尻餅をついていた。
「ん?」
視線を感じた2人はエネシーに振り返った。
「えぇと………大丈夫かい?」
「怪我はないかな?」
2人の問い掛けにエネシーは一瞬だけ答えられなかった。
「は…………はい!大丈夫です」
「良かった。で、君はどうして此処に?」
「はい………この辺りは私の家が所有する土地の一角で、散歩をしていたのです」
「成る程。でもあんな化け物が居るかもしれない所へ良く一人で」
「普段は魔物など出ない場所だったので……つい油断してしまいまして」
「………まぁ兎に角無事で良かった」
そこへ近くの草むらから複数の足音が聞こえてくる。そこへ視線を向けると、北村達がやって来た。
「ムーラさん、レクマイアさん!大丈夫ですか?」
「はい。何とか無事ですよ」
「そうでしたか。で、そちらのお嬢さんは何方でしょうか?」
「どうやら現地人の様です」
「そうでしたか」
北村はエネシーに歩み寄ると、頭を下げて挨拶する。
「はじめまして、私は日本国より貴国へ遣わされました、特使の北村と申します。こちらは秘書官の浜崎、そして後ろを2人は護衛の者です」
北村の自己紹介にエネシーは、家で読んだ例の預言の一文を思い出した。
『異国の竜を操る騎士様に異国からの使いとその戦士達…………嘘でしょ!あの預言文と一致してるじゃない!』
エネシーは目の前で預言にあった通りの面々が居る事に驚いた。そして偶然とはいえ、それに立ち会えた事に喜びも感じていた。
続く
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