エネシーの案内で王国に入った北村達使節団一行は、取りあえずウィスーク公爵邸へと案内され、エネシーは自身の父親と母親に事の経緯と北村達の事を全て説明した。
「よもや!?外の世界からの使者!」
「エネシー、それは本当なの?」
「はい!間違いありません!こちらの北村様は、遥か彼方の日本国と呼ばれる国から参られた使者で、後ろの緑の服と騎士の甲冑をお召しになられているのが北村様の護衛の方達なのです」
エネシーの父親であるウィスーク公爵は彼女の説明に、自身の執務室にあるソファーに座り込んでしまい、公爵夫人で母親でもあるニッカも呆然と立ち尽くしている。
(何と言う事だ…………黙って出掛けてしまったと思ったら異国の、しかもこの国より遠く離れた場所にある国からの使者と護衛を連れてきただと!?)
ウィスークは北村達を見つめながら、考え込んでしまう。
(異国の使いと名乗ったが本当なのか?どうにも胡散臭いな…………)
建国以来、外の世界に旅立って無事に帰ってこれた者は居ないという歴史を持つこの国の人間にとっては、北村達が外の世界からやって来たと聞かされれば、胡散臭く感じてしまうのは当然である。
(ここは、彼らの言う事が本当か確かめる必要があるな………)
ウィスークは表情を何時もの仕事している時の凛とした表情で、北村に問い掛ける。
「北村殿、私は娘と貴方達の言葉を疑う訳では無いが、本当に外の世界から来られたのかと言う確証が欲しい。我が国の歴史については道中に娘から聞いていると思う。いきなり外の世界から来られたと言われても正直、疑わしいのだ」
「お父様……!?」
エネシーが反論しようとするが、ウィスークはそれを片手で制止し、北村との視線を外さない。
「成る程、それはごもっともです。私も貴方と同じ立場に置かれれば同じような考えに至るのは当然の事です。実はそれを予想して、本日証拠となる物をお持ちしました」
北村は浜崎に目線を送る。秘書官の浜崎は手にしていたボストンバックからノートパソコンを取り出し、それを机の上に置くと電源を入れる。
「これは!?」
ディスプレイの表示にウィスークは驚く。
北村はノートパソコンを操作すると、政府広報が作成した日本についての紹介PVを再生させる。
「ご覧ください。これが我が国です」
それから数時間の時が流れ、ウィスークとニッカ、エネシーの表情は固まっていた。
「これは………」
この時、ウィスークは人生で一番の衝撃を受けた。それこそ自身に雷が落ち、身体中に電気が走ったかのような程のものだった。
(これ程の国力と技術力を持った国と国交が持てれば、この国の発展は約束された様なもの!しかも自国と国交を結べば他国との仲介も買って出てくれる!これ程の条件をみすみす逃す手はない!)
ウィスークはその場で立ち上がる。
「北村殿、私は何をすれば宜しいのですか?」
「はい。聞けば公爵閣下はこの国の中枢とも強い繋がりがあるとの事なので、この国の外交を司る部署との仲介をお願いしたいのと、許可さえ頂ければ、我々が乗ってきた船を貴国に迎え入れたいのです」
「承知した!では直ぐに王宮に知らせを……いや、私が直接出向いて話をつけてこよう!北村殿、暫しお待ちを!」
「はい」
その日、ウィスークは自ら馬を走らせ王宮にある外交局へと駆け込むと事の経緯を全て説明した。
ウィスークからの話を聞いた外交局は直ちに、王宮へと報告し、国王を中心とした緊急会議が召集され、翌日早朝まで続いた。
そして、夜を徹した会議の結果、北村達の話を真実と判断し、カルミアーク王国を統べる国王『ブランデ』が直接、北村達と面会する事となった。
翌日の朝
「………………と言う事になりました」
「分かりました。では我々も準備に入ります」
その事が伝えられた北村達は早速、国王との謁見に備えての準備に入った。
「さて、我々も鎧を磨くとするか」
レクマイアとムーラも自身が身に付けている鎧を日本で購入した研磨剤を使って綺麗に磨く作業に入った。
「あの、ムーラ様、レクマイア様、私もお手伝い致します」
「え……あ………」
「え~と……。」
そこへエネシーが2人の作業を手伝いたいと申し出てきた。突然の事に2人はどうしようかと言う表情となる。
「ご心配には及びません。私も自前で鎧を所有していて、毎日手入れをしております」
エネシーは懐から鎧を整備する道具を取り出す。
「えぇと……じゃあ、私の鎧を押さえててもらえませんか?」
「はい!」
彼女からの申し出を無下に出来ないと、ムーラは自身の鎧を磨いている間、鎧がズレないように押さえてて欲しいと頼み、満面の笑顔でエネシーは両手で鎧を押さえる。
「…………………」
「……………………」
ムーラは鎧に研磨剤を塗り、その上から布で磨き上げ、それをエネシーが見つめる。
「…………………」
「…………………」
2人の間で沈黙が流れ、隣に居たレクマイアも場の空気から声が出せず、黙々と鎧を磨き続ける。
「あの、もう良いですよ」
「はい。ではレクマイア様、私は何を?」
「そうですな…………私もムーラ殿と同じよう」
「はい」
先ほどと同じようにエネシーはレクマイアの鎧を押さえ、レクマイアは鎧を磨き続け、1時間もすると2人の作業は終わった。
「ムーラさん、レクマイアさん、そろそろ行きましょう」
「はい」
「じゃあ行きましょう」
浜崎が2人を呼びに来た。ムーラとレクマイアは鎧を着用する。
「エネシー殿、ありがとうございます」
「お陰で助かりました。では我々は王宮へ」
「はい。行ってらっしゃいませ」
エネシーの見送りの基、2人は部屋を出ると、北村達と共に王宮からの迎えの馬車に乗り込むと城に向かっていった。
城に到着した北村達は盛大な歓迎を受けながら、遂に国王との謁見を果たし、日本政府からの親書を手渡した後、お互いの国について話し合い、午前中には特にこれと言ったトラブルも無く会談を終えた。
そしてその日の正午………
「おぉ~………あれが日本国の船か」
「なんと言う………」
午前の会談で入港許可を得られたため、沖に待機していた巡視船れいめいと尾張が山脈の北側にある外海へ続く洞窟から内海へ入り、王宮の裏にある港へ無事に入港した。
一方その頃、マウリ・ハンマン達は王国の西部にて、動き始めていた。
「さて。全ての準備は整いました。マウリ様、ご采下を」
「うむ。これより我々は長年の計画を実行に移す時が来た!我が配下の兵達よ!世に革命を起こそうぞ!」
マウリの声に、辺り一帯にマウリの配下にある諸侯軍の兵達が声を挙げた。
「では、行くぞ!」
諸侯軍は、遺跡から掘り起こした魔炎駆動式戦車と火喰い鳥と共に王都へ向けて進撃を開始した。
続く
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