日本国召喚×不沈戦艦紀伊   作:明日をユメミル

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今回から少し急ぎ足になります


外伝:9

カルアミーク王国入りを果たした尾張とれいめいは、港で錨を降ろし、港に集まった大勢の市民の注目を集めていた。

 

 

「凄い人出だな」

 

 

れいめいのブリッジで山崎が、そう呟く。

 

 

「観閲式でもこんな人が集まるなんて無いですから、新鮮ですね」

 

「全くだ。向こうの人達にはウチと尾張がどう見えてるんだろうな?」

 

 

れいめいの更に奥に停泊している尾張でも、神が山崎と同じ事を考えていた。

 

 

「だじゃっとん、凄か盛り上がりじゃな」

 

「フェンの時とは比べものにならない程の盛況ですね」

 

「まぁ、尾張程ん艦を見れば当然じゃな」

 

 

山崎達、れいめい乗員とは違い、尾張はフェンで同じような光景には慣れているため、神達は特段緊張はしていなかった。

むしろ、自分達の艦をこれだけの人が見て驚いている反応を見るのを楽しんでいる節もある。

 

 

「で、これからん予定はどうなっちょっど?」

 

「えぇと。夕方に北村大使達と共に、艦長とれいめいの山崎船長は王宮での歓迎会に参加の予定です」

 

「そうか。楽しみじゃな」

 

 

 

神は、初めて参加する外交の場に出席する事への責任感を痛感する。日本を守る自衛官として恥ずかしくないよう行動しなければと一層気を引き締め直す。

 

 

「ん?」

 

 

王城を眺めていた神は、城門に向けて騎馬集団が何やら慌てたような様子で走っていくのを偶然にも目撃した。

 

 

「どうしたんですか艦長?」

 

「あん騎馬集団、見てみぃ」

 

 

副長がその騎馬集団に視線を向ける。

 

 

「ボロボロですね………まるでついさっき戦闘をしていたかのように」

 

「なんだか嫌な予感がすっ………」

 

 

 

おおよそ現状にはそぐわない程にボロボロな様子の騎馬集団は、城門が開かれると慌てて城へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

その頃、北村達は王城内にて、宛がわれた部屋で今後の予定を確認していた。

 

 

「………えぇとこの後は」

 

 

カルアミーク側の担当者から提供された予定表を翻訳し、自分の手帳に細かく記録していく。

 

 

「ん?」

 

 

そんな作業をしていると、部屋の外が妙に慌ただしいのに気がつく。松本がドアを少し開けて外を見ると、衛兵や貴族らしき人達が慌てた様子で駆け回っている。

 

 

 

「何かあったのだろうか?」

 

「……………」

 

 

ムーラとレクマイアはその様子から、何かあったのだろうかと直感で悟った。

 

 

 

「あ」

 

 

 

そこへ、慌てた様子の外務局の担当者がやって来た。

 

 

 

「北村様!お忙しい所申し訳ありません!」

 

「どうかしたのですか?」

 

「緊急事態につき、本日のご予定は全て取り消しと言う事でお願いしたいのです」

 

 

担当者の言葉に、その場の空気が変わった。

 

 

「緊急事態!?」

 

「はい。実は我が国の3大諸侯の1人、マウリ・ハンマンを筆頭とする諸侯軍が突如として西のイワン公爵の領地に攻め入り、占領したとの報告が入ったのです!」

 

「つまり……クーデターですか?」

 

「はい…………」

 

 

突然の事態に、北村達は困惑した。

 

 

「北村様につきましては、安全のためウィスーク公爵の邸宅へお戻り願いたいのです」

 

「分かりました!では我々は直ぐに戻ります」

 

「ご協力感謝します」

 

 

北村達は担当者からの指示で、一度ウィスーク公爵の邸宅へと戻る。

邸宅へと戻った北村は早速、長距離用衛星通信電話で本国に報告し、ムーラとレクマイアも万が一に備えて、山に残してきた愛騎を呼び寄せる。

 

 

 

「まさか内戦が勃発する事になるとはな」

 

 

まさかこんなことになるとは思っていなかった北村は、今後の対応に頭を抱える。

 

 

 

 

 

この日、カルアミーク王国の西部はマウリ・ハンマンの率いる反乱軍によって陥落し、国全土に非常事態宣言が発表され反乱軍討伐のため王下直轄騎士団が派遣された。

 

 

 

 

 

 

 

それから3日後、早朝

 

 

 

北村達はウィスーク公爵からの説明を受けていた。

 

 

 

「出国できない?」

 

「はい。昨晩の御前会議で今回のマウリ諸侯軍による大規模反乱に対して、王国軍は全力を以て対処する事が決定されました。今は外交交渉が出来ない状況下となり、スパイ防止の観点から王都からの移動も申し訳ありませんが制限させていただきます」

 

 

北村は更に頭を抱えた。

昨晩、本国からの指示で早急に帰国せよとの指示を受けた矢先にこの話である。

 

 

(不味いな。退路を絶たれては内戦に介入することになりかねん)

 

 

 

北村は介入を何とか避けようと、港に停泊している尾張とれいめいに乗り込んで退去できないかと提案したが…………

 

 

「申し訳ありませんが……それも不可能かと」

 

「何故です?」

 

「港には既に民間船舶や他国の船が集結していて、とてもですがあの巨大船が移動できる程の余裕は無いかと」

 

 

時既に遅し。

海上からの退去もできなくなり、北村達は完全にこの国に留まるしかなくなった。

 

 

 

「心配なされるな北村殿。たかが1諸侯の反乱など、一週間もあれば…」

 

 

 

その時、王宮からの使いの者が飛び込んできた。

 

 

 

「公爵!反乱軍討伐に出た王宮直轄騎士団が全滅!敵は多数の魔獣と火喰い鳥、火を吐く鉄の箱車を使役し、王都に迫る勢いです!」

 

「何だと!」

 

 

 

立て続けに入ってきた最悪な報告に、王都もいよいよ危ないと直感する。

 

 

 

 

 

 

 

そして更に1日が経過し、反乱軍は破竹の勢いで進撃を続け、遂に王都を守る3つの城門に迫っていた。

 

 

 

「意外と早く来れたな」

 

「えぇ。既に王国軍は形骸も同然。このまま行きますか?」

 

「勿論だ。このまま王都を攻め落とすぞ!」

 

 

 

反乱軍は王国軍に立て直す時間を与えず、1番目の城門へと迫る。

そして数時間のうちに城門は突破され、戦車や魔獣が雪崩れ込み、空を火喰い鳥が乱舞する。既に王国軍は態勢が建て直せない程の損害を負い、反乱軍に対して成す術がなくなっていた。

 

 

「見ろ!世界最強と言われた城門の一つを落としてやったぞ!」

 

「はい!流石はマウリ様!」

 

「うむ。この分だと今日中にはこの国は落とせそうだ………直ちに有翼騎士団に王城攻撃を命じよ!それとウィスーク公爵の邸宅に2騎回せ!」

 

「はっ!」

 

 

 

 

その頃

 

 

 

「いよいよ此処も不味いな………」

 

 

 

ウィスークは反乱軍の勢いと王国軍の現状から、自身の邸宅も不味いと考える。

 

 

「北村殿、此処は危険だ。直ぐに地下へ避難を」

 

「分かりました」

 

 

皆が地下へ避難する中、ムーラとレクマイアはその場から動かなかった。

 

 

 

「ムーラ殿」

 

「あぁ………この光景………前の戦争を思い出す」

 

 

ムーラは相棒の側で、かつての日本との戦争を思い出しながら語り始める。

 

 

「日本は我が国との戦争でも、民間人や力無き者に対して一切手を出さなかった。だが、目の前を跋扈する反乱軍は軍人だろうが民間人だろうが容赦なく殺していく………かつての我が国もそうだった。私は日本の捕虜となってから軍人が抱えている使命とは何かと考えた。そして私は分かったのだ、軍人とは国と弱き人を守るために存在しているのだと」

 

「レクマイア殿……」

 

「反乱軍のやっている事は自分の同胞へ対する重大な裏切りに過ぎない!こんな事があっていいのか…………殺された人は一人一人ちゃんと親や兄弟、子供が居て、幸せに暮らしている普通の人だった。そんな彼等が何をしたと言うんだ!何をしたからこんな事を…」

 

 

元から正義感の強いムーラは目の前の反乱軍に対して怒りを募らせていた。

 

 

 

「レクマイア殿……」

 

 

レクマイアはムーラの肩に手を置く。

 

 

「すまない」

 

「あぁ」

 

 

2人は自分の愛騎にまたがる。

 

 

「ムーラ様!レクマイア様!」

 

 

地下に避難しようとしていたエネシーは、2人が愛騎に乗り込むのを見て慌てて走りだし、止めようとする。

 

 

 

「無茶です!お二人は強いのは確かです!でもあの数を相手に無謀すぎます!」

 

 

 

ムーラとレクマイアはエネシーに視線を向けて笑顔を見せる。まるでそれは『決して死なない。任せろ』とでも訴えているようだった。

 

 

 

「ムーラ様、レクマイア様…」

 

 

 

2人の決心が固いと感じたエネシーはもう何も言わなかった。内心、2人に恋心を抱いている彼女は2人を見送ろうとする。

 

 

 

「キャッ!」

 

 

 

その時、強烈な風圧が吹き付ける。

上を見ると、2騎の火喰い鳥が翼をはためかせていた。

 

 

 

「ウィスークの娘か………運が無かったな」

 

 

火喰い鳥を操っていた騎士が淡々と無慈悲な言葉を投げ掛けて、エネシーに向けて火喰い鳥による火炎攻撃を仕掛けようとする。

 

 

(もう……ダメなの?)

 

 

エネシーは最早、死ぬ以外無いと思い目を閉じる。

 

 

 

「やらせるかぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

そこへ、ムーラとレクマイアの叫び声が響く。

 

 

 

「相棒!あのワイバーン擬きを焼き鳥だ!」

 

「行けぇぇぇぇ!!」

 

 

 

同時に2人の相棒の口から、火喰い鳥が出すよりも強力な青白い炎が吐き出され、エネシーを攻撃しようとしていた火喰い鳥を火達磨にした。

 

 

 

「何っ!?」

 

 

 

突然の横槍に、もう1騎の火喰い鳥に乗っていた騎士が驚く。

 

 

 

「こうなれば!」

 

 

 

騎士は標的を、エネシーから地下に避難しようとしていた北村達に変える。

 

 

 

「しまった!北村殿!」

 

 

 

ムーラが叫ぶ。

 

 

 

「燃え尽きろ!」

 

 

 

火喰い鳥が火を吐こうとした瞬間。

 

 

 

「撃てぇ!」

 

 

 

怒声が響くと同時に、火喰い鳥に向けて銃撃が浴びせられる。

 

 

 

「何っ!」

 

 

 

火喰い鳥に銃撃を浴びせていたのは、松本と岸田の2人だった。

 

 

 

「岸田!奴に撃ちまくれ!」

 

「はい!」

 

 

松本の指示で、岸田はMINIMI軽機関銃を撃ち込んでいく。

 

 

 

「グァァァァァァ!!」

 

 

 

毎分725発の発射速度で放たれる5・56㎜弾が火喰い鳥と騎士を穴だらけにし、やがて力を失い地面に落ちた。動かなくなった火喰い鳥と騎士へ向けて岸田が近寄る。

 

 

「死亡を確認」

 

 

岸田が騎士と火喰い鳥の死亡確認をとった。

地下への入り口からその様子を見ていた北村は更に頭を抱えた。

 

 

 

「なんて事だ」

 

 

北村は、これで日本が内戦に本格介入は免れないと落ち込んでしまった。

 

 

 

「こうなっては仕方無い……北村殿、私とレクマイア殿は王都へ向かう!今は時間が惜しい、後で煮るなり焼くなり好きにしてくれて構わない!」

 

 

ムーラとレクマイアは公爵邸の庭から飛び出し、王都へ飛び出していった。

 

 

 

「行ってしまったか…………」

 

「北村さん!本国から電話が」

 

 

浜崎が衛星通信電話を持ってくる。北村は電話に出た。

 

 

「はい……………え?……はい………はい………分かりました」

 

 

北村は本国から出た指示に驚きつつ電話を切った。

 

 

 

「本国からの指示だ。尾張とれいめいに自衛権に基づいての武器使用の許可が降りた!直ぐに連絡だ!」

 

 

 

 

 

 

続く




今回は急ぎ足でしたが、次回は久しぶりに尾張の出番が来ます!お楽しみください。

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