「艦長!北村大使から連絡で、本国から自衛権による武器使用の許可が出たとの事です!」
港に居た尾張の艦橋に通信員からの報告が響き、彼らの表情が変わった。
「よし!戦闘配置!」
戦闘配置の命令で、尾張は戦闘態勢に入る。
れいめいでも、乗員達が不測の事態に備えての準備に入っていた。
「武器庫開放、実弾用意!」
山崎の指示で乗員達は武器庫から64式小銃と拳銃、ヘルメットと防弾チョッキを取り出し、万が一に敵が乗り込んで来た場合の白兵戦闘に備える。
無論、れいめいには不審船対策として40㎜と20㎜の機関砲が2基ずつ装備されているため、それにも実弾が装填されていく。
「警告用のLRADの用意は?」
「完了しています。後は向こうの出方次第ですが、相手は来ますかね?」
「絶対来るさ。なにせウチの船と尾張は相当目立つからな」
この時点で第2の城壁の一部を敵が突破、そこから敵地上部隊が雪崩れ込んでおり、空にも火喰い鳥が舞っている。今のところ向こうは尾張とれいめいに対しては接近と離脱を繰り返しているが、今にも向かってきそうな雰囲気である。
「町には既に敵が雪崩れ込んでいるとの事です。北村大使達が心配ですね」
「あぁ……尾張に居る陸自のヘリも、現状では出せないそうだからな」
火喰い鳥はワイバーンと比べれば航空戦力的にはさほど驚異ではないが、しかし数が多い事もあり救援にヘリは出せない状況である。
「何とか制空権だけでも取れれば良いんですがね」
「そこは我々の領分じゃない。自衛隊さんに任せよう」
一方、尾張とれいめいの存在は、マウリの元へと届けられていた。
「何?とてつもない程の巨大船が居るだと?」
マウリは火喰い鳥を操る騎士からの報告に耳を傾ける。
「はい!2隻を確認しまして、一方は白く塗られており、もう片方は全長300メートルは優に越えており、大小様々な大砲を載せておりました」
「ふむ…………そんな船を王国が作っていたとは、聞いた事が無いな」
尾張とれいめいの存在についてマウリ以下の反乱軍は一切把握しておらず、北村達が来ている事も知らない。
「如何いたしましょうか?」
「言うまでもない。その船を沈めて…………いや、それ程巨大なら沈めるより我々の手中に納める方が良い。いずれ外の世界に出るための貴重な存在になるからな」
「さすがマウリ様。では有翼騎士団の半数を差し向けましょう」
マウリの指示で、有翼騎士団のおよそ6割近い数が尾張とれいめいに差し向けられた。
上空に居た有翼騎士団100騎のうち60騎は、王城への攻撃を中止し、命令通り港に向けて大挙して押し寄せる。
「艦長!敵火喰い鳥の動きが変わりました!上空に展開中の半分以上が向かってきます!」
「対空戦闘用意!れいめいにも打電!」
尾張は対空戦闘に備え、速射砲とCIWS、シースパローランチャーが上空に向けられる。
れいめいでも、機関砲の安全装置が解除されFCSによる自動照準で砲身が上空に向けられる。
「敵騎視認!数、およそ70!」
「凄か数じゃがロウリア戦の時と比べれば大した事はなか!尾張にとって不足なしじゃ!主砲発射用意!」
尾張の主砲塔が旋回し、上空の有翼騎士団に向けられる。
『各砲照準よし!3式改装填よし!主砲射撃用意よし!』
「主砲発射ぁ!」
『主砲発射!』
警報ブザーが鳴り響き、51センチ砲9門が轟音を響かせながら火を吹いた。
その衝撃波と発射音は港に居た建物を揺らし、港と王城の中、そして町の人々の耳に入った。それは無論、尾張に接近していた有翼騎士団の目にも入っていた。
「何だ?敵が爆…」
その直後、超音速で有翼騎士団に迫っていた3式改は彼等の目と鼻の先で爆発し、大量の酸化マグネシウムの化学反応で火の塊となったゴム片を撒き散らす。
「グァァァァァァ!!!!!」
「熱い!熱い!」
ゴム片の直撃を受けた火喰い鳥は、自身が吐き出す炎よりも高熱の炎に焼かれながら、落ちていく。
「何だ!何が起きた!」
騎士団の後方に居た指揮官らしき騎士が驚いた。
目標としていた巨大船が火を吹いたと思ったら、突然目の前を飛行していた10騎もの火喰い鳥が火だるまになって落ちていったのだ。
「初弾、敵騎10を撃墜!」
「次弾装填急げ!副砲、速射砲撃ち方始め!」
主砲の次弾装填の間、副砲が射撃を開始し、同時に速射砲も砲撃を開始する。
副砲から放たれた3式改による散弾とMk42速度砲による正確無比な砲撃を前に有翼騎士団は近づく度に次々と叩き落とされていく。
「おぉ…………」
「あの火喰い鳥が、あんなにあっさりと……」
「あれが日本の戦船の力か……」
王城で敵の地上部隊と戦っていた王国軍とブランデ国王は、その様子を見ていた。
彼等にとっては空飛ぶ化け物のような存在の火喰い鳥を、尾張はたった1隻で何十騎も落としている。
「皆の者!日本の戦船が参戦したぞ!彼等と共に今一度、国のためにその力を振り絞れぇ!」
「「「「「おぉぉぉぉぉ!!!!」」」」」
尾張の攻撃が、崩壊しかけていたカルアミーク王国軍の士気を再び向上させ、戦っていた全将兵は剣や槍を握り直し、向かってくる敵に向けて攻撃の手を強めた。
「お?日本のモンスターがやってくれたか?」
「その様だ」
王城へ向けて飛行していたレクマイアとムーラは、敵の火喰い鳥の動きと、港から聞こえてくる砲撃音に尾張が参戦したと悟る。
『こちらノブナガ、こちらノブナガ。ムーラ騎、レクマイア騎、応答されたし!』
そこへ2人の耳に装着されていたインカムに尾張からの連絡が入った。
『これよりヘリを北村大使の居るウィスーク公爵邸へ向かわせる!貴官達には上空援護をお願いしたい!』
「了解した!さてレクマイア殿」
「あぁ…では久し振りに大暴れと行きましょう!」
2人は、王城へ向けて愛騎を突撃させる。
「行けぇぇ!」
ムーラと相棒は目の前から迫ってきていた火喰い鳥に向けてブレス攻撃を放った。
ブレス攻撃をまともに受けた火喰い鳥はあっという間に炎上し墜落していく。
「次ぃ!」
ムーラは次なる敵を探し、相棒を操る。
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄ぁ!無駄ぁぁ!」
久し振りの実戦でハイとなっていたレクマイアは、すれ違い様に複数の火喰い鳥に向けてブレス攻撃と、手にしていた剣で敵を八つ裂きにしていく。
「このブァァァァカ者がぁぁぁ!我ぁぁぁがパーパルディアのぉぉぉーワイバーンロードはぁぁぁ世界一ィィィィ!!こぉぉぉのワイバーンオーバーロードこそ我ぁぁぁが民族の最高知能の結晶でありぃぃぃぃー誇りであるぅぅぅぅー!!!!つまり、すべてのワイバーンを越えているのだぁぁぁぁ!!!」
彼を見ると、やはりかつての皇国軍人としての血が騒ぐのか、表情が何処かのドイツ軍人のような顔となっていた。
「流石はレクマイア殿だ!竜騎士として尊敬できる!尚更負けられないな!」
ムーラも触発されたのか敵の火喰い鳥を次々と一撃離脱で撃ち落としていく。
「えぇい!何をしておる!相手はたかが2騎と2隻だぞ!」
マウリは尾張とムーラ、レクマイアの参戦で、描いていた勝利像にヒビが入っていた。
この国では最強と信じていた火喰い鳥が、突然現れた伝説上の存在である竜と謎の巨大船により撃ち落とされていく。これでは謀反の計画そのものが狂わされるのではないか、そういう強迫観念に囚われていた。
「えぇい!こうなれば総攻撃だ!全戦車と兵力を差し向けよ!」
続く
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