フェン王国 首都アマノキの沖500㎞の海上
パーパルディア皇国監査軍東方艦隊旗艦に乗り込む、艦隊司令官『ポクトアール』は、懲罰攻撃に向かったワイバーン部隊からの通信途絶の報告を受けていた。
「いったい何があった………」
皇国の第3外務局に所属する監察軍東方艦隊の戦力は、他の列強を除けば文明圏外国に遅れを取る事はなく、配属されているワイバーン部隊も指折りの実力者が揃えられていたが、その部隊が突然報告を絶ち、誰も帰還しなかった事に彼を含めた幹部達は疑問に陥る。
「まさか……フェンにやられたのでは?」
「その可能性は無くはないが、仮にも彼らは精鋭のワイバーン部隊だ。何の報告もなく全員未帰還は有り得ん。フェンが我々に楯突けるような戦力を持ってるとは思えんし、恐らく別の勢力による武力介入があったという可能性が考えられる。我々に対抗できる国といえば、ムーかミリシアル以外には考え付かんが……」
彼等の疑問が尽きないが、現実にワイバーン部隊が壊滅したのは事実である。一体何処の勢力が手を下したのかを確かめるため、東洋艦隊は帆を一杯に張り、全速力でフェンへと舵を取った。
その頃………
「なんて事だ………」
「まさかこんな事になるなんて」
島田と浜本は頭を抱える。
アマノキと尾張を突如襲撃してきた、正体不明の武装勢力からの攻撃を受けた尾張は自衛権として武装勢力を殲滅してしまったのを目撃し混乱していた。
尾張の行動は結果的に他国との争いに巻き込まれてしまう原因となり得るが、あの襲撃で尾張が反撃しなければ島田と浜本の両名と尾張の乗員、無関係な一般人の命まで奪われてしまう事になりかねず、多くの命を救った事もまた事実である。
法に照らし合わせれば、尾張の行動は正当防衛と緊急避難に当たるため、島田は彼らを責める事は出来ない。
「島田さん」
「あぁ……こりゃヤバイぞ」
二人は身の危険を考え、一刻も早くこの国から脱出するため港に停泊していた海上保安庁所属の巡視船『あきつしま』に乗り込んだが、出港直前にいなさのスクリューが何故か網と海草が絡まり航行不能となってしまったのである。
「これじゃ航行できない…船を置いて脱出するしかないが」
「駄目です!技術流出防止法に引っ掛かります!」
「なら曳航船を呼ぶしかありません。しかし今要請したとしても来れるのは明日の昼になるかと」
「じゃあ我々は足止め状態か………」
機密保持のため、いなさを置いていく訳にも行かず、かと言って尾張や他の護衛艦に曳航するにしても、近代的な港とは違い海底が浅いため座礁と言う二次被害の可能性を考慮すると、この手は使えない。
「本当にツイてないな」
二人は暫く頭を抱えながら今後について考えることになる。
「島田さん」
「あぁ分かってる。俺の考えは正解だったみたいだ」
島田は昨日のシハンからの提案に含まれていたフェン側の意図を確信して更に頭を抱える。
「あのシハンて男は、火中の栗を我々に拾わせたと言う訳か」
二人は取り合えず、今後の事についての指示を仰ぐため外務省に連絡をとり指示を仰いだ後、再びフェン王国側との協議に入る。
「……今回の件について我が国からの正式な回答をお伝えします。我が国は貴国との国交開設の本格的な協議のため我々はこの場に留まりたい。つきましては我が国の艦船は我々の警護を兼ねて引き続き停泊許可をお願いしたい」
「それは我々としても特に異論は無い。心行くまで留まって行くがよい」
日本政府からの正式な回答を聞いたシハン達は僅かに安堵の表情を浮かべるが、島田は更に続ける。
「ですが先程の武装勢力が再度襲撃を仕掛けてくる可能性も否定できません。もし襲撃が行われた場合は我々も反撃はしますが、それは自衛でのみに限定されます」
「つまり貴方達は積極的な攻撃を行わないと申すか?」
「はい。我が国は平和を重んじる事を国是としています。我が国が保有している戦力、あそこに居る尾張も無駄な争いを避けるための必要最低限の戦力なのです」
「平和か……確かに聞こえは良い。平和は誰もが願っている事だ。しかしそんな事が通じる程、パーパルディア皇国は甘くはありませんぞ」
シハンはパーパルディア皇国についての説明を始める。シハンからの説明を聞いた二人は心底呆れ返ると同時に、パーパルディア皇国の実情に言葉がでない。
「成る程。ご忠告と貴重な情報に感謝いたします。では我々は一度船に戻り現状の説明を行いますので失礼します。」
二人は城を出て、あきつしまへと戻った。
続く
皆様からのご意見とご感想お待ちしております。