「何故だ!何故だ!何故だ!何故だ!何故だぁぁぁ!」
王都の西部にある反乱軍陣地に居たマウリは、目の前で自身の軍勢と遺跡から掘り起こした超兵器が一方的に蹂躙され壊滅してしまった事に、怒りのあまり地団駄を踏んでいた。
「オルドはどうなったのだ!?」
「はい。行方不明でして…………」
反乱軍の中で、遺跡に記されている超兵器の解析が出来る人物はオルド以外に居ない。これでは遺跡の解析どころか戦力の建て直しも不可能である。
「マウリ様、如何致しましょう?」
「決まっておろう!逃げるのだ!このまま西の果てに逃げ延びれば奴等も早々追ってはこれまい!我は諦めんぞ!」
マウリは野望を諦められないのか、西の果てにある深い森林地帯へ、撤退と言う名の逃亡を図ろうとする。
「撤退だ!このまま西へと撤退だ!」
反乱軍は陣地を放棄し、残り僅かな戦力を以て西へ向け撤退を始める。完全に戦意を失った反乱軍は、我先にと撤退のため走り出す。
「マウリ様!王国軍が追撃してきております!」
「えぇい!奴等を足止めしろ!早く!」
戦意を失ってもマウリの命令に従う反乱兵。マウリへの忠誠心の表れなのか、或いは投降しても殺されるのは免れないと言う恐怖からか、故にせめて戦って死にたいと言う感情によるものなのか、彼らは追撃してきた王国軍に立ち向かう。
「うぉぉぉぉ!!!!」
「西の町の者の仇ぃぃぃぃ!!!」
しかし、王国を裏切った者に向けられる殺意は凄まじく、戦意損失に陥っていていた反乱軍は王国軍の勢いに呑まれていき、その命を無惨に散らしていく。
善戦する王国軍の上空を、ムーラとレクマイアが相棒に乗りながら今回の事件の首謀者であるマウリを探していた。だが2人ともマウリの顔を知らないため、ムーラはマウリの顔を知っているウィスークと無理矢理着いてきたエネシーを後ろに乗せていた。
「何処だ?」
下を見ながら、マウリの姿を血眼になって探すムーラとレクマイア。2人の表情は怒りに満ちており、それこそマウリを見つけ次第殺しにかかりそうである。
「ん?」
ふと前方真下に、西に向かって馬に跨りながら全速力で逃亡する騎馬集団を発見した。
「ムーラ殿!あの先頭の男は間違いなくマウリだ!」
「本当ですか!?」
騎馬集団の先頭を走る一騎を指差すウィスーク。
「あの男がマウリか!」
「ムーラ殿!アイツの取り巻きと護衛は私に任せてくれ!アイツを……あの極悪人を捕まえてくれ!」
「分かった!」
ムーラはマウリの護衛達をレクマイアに任せると、マウリに向けて相棒を急降下させる。
「落ちろ!」
マウリの頭上を高速で通過し、突風でマウリを馬から転落させる。
「何だ!?」
何が起こったのか分からないマウリの目の前に降り立つムーラ。
「ムーラ様!」
「エネシー、君は父上とそこに居てくれ」
相棒の背中から降りたムーラはエネシーにそう言うと、ゆっくりとマウリに近付く。
「お前がマウリか……」
怒気を含んだ声にマウリに問い掛けつつも、歩みを止めないムーラにマウリは完全に怖じ気づく。今のムーラは、かつてのロウリア軍人だった頃の覇気を纏っていた
「ヒィィィ!助けてくれぇぇ!許してくれぇぇ!」
「許しは今までお前に殺された人々に乞うんだな。俺達は始めからお前を許す気は無いんだ………」
「ひ……………金………金と遺跡にある超兵器を譲ってやる!だからそれで見逃してくれ!」
尚も許しを乞うマウリにムーラは呆れ返る。
「やれやれ………貴様、正真正銘史上最低の男だな」
ムーラはマウリに向けて拳を振り上げる。
「お前のツケは…………………金やモノでは払えないぞ!!」
振り上げた拳をマウリの顔面に向けて思い切り振り下した。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!!!!!!!!!!!!」
一発で歯をへし折る程の威力があるパンチを、ムーラは何発、何十発と打ち込んでいく。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!オラァァァァァ!!!!!」
顔面の形が変わる程のパンチを受けたマウリは大きく吹き飛ばされ、近くにあった大木に叩きつけられた。
ムーラは懐から小さい紙とペンを取り出し、大陸共通語で自分の名前を書く。
「ツケの領収書だ…………受け取っておけ」
そう呟き、紙をマウリに投げつけ身を翻して相棒に歩み寄る。
「終わったぞ………相棒」
『グルルルルゥゥゥ~』
相棒は「お疲れ様」と言わんばかりにムーラに頭を寄せる。
「やったな。ムーラ殿」
マウリの取り巻きを縛り上げたレクマイアが駆け寄ってくる。
「あぁ…………良い土産話が出来た」
「土産話にしては壮大だが、こんな経験、生涯絶対に出来ないだろう。こりゃ孫の代まで自慢できるな」
「全くだ」
その時、西の空に沈みかけていた夕日の光が、ムーラとレクマイアを照らし出す。
「ムーラ様、レクマイア様………」
少し遠くからその様子を見ていたエネシーは、その光景に顔を赤くしていた。その表情は正に恋する乙女そのものであった。
続く
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