シエリアとダラスを乗せたマイクロバスは、東京都港区の、東京タワーの下にある駐車場に止まっていた。
((大きい!))
マイクロバスから降りたシエリアとダラスは赤く塗装された東京タワーを見上げていた。
「こちらが、我が国が60年前に完成させた東京タワーです。このタワーはこの東京そのものを示すシンボルのような存在です」
太田の説明を聴きながら2人は東京タワーに圧倒される。
「何という高さだ………これ程の高さの建造物を作れる技術を60年前から持っていたと言うのか。太田殿、この塔は何に使われているのか?」
「東京タワーと言うのは通称で、正式名称は日本電波塔と言い、読んで字のごとく各テレビ局の電波を発信し、日本各地の家庭にあるテレビに映像を送信する役目を担っているのです」
シエリアは思い出した。此処に来るまでの間、町中にある家電量販店に置かれていたテレビが全て鮮やかなカラーだった事に。科学に疎い彼女でもテレビやラジオで電波を広範囲に飛ばすためには高い建造物が必要である事は知っているが、あれほど鮮やかで繊細なカラー映像をリアルタイムで送信するには高い技術力が必要である。
(このスマホなる携帯端末と日本のテレビの性能から考えて、おそらくこの国の電子技術の前では帝国の電子技術など赤子同然だな)
シエリアは日本の電子技術の高さを改めて理解し、前世界のユグドやこの世界のどの国よりも高い技術力を持っていると自負していた帝国の電子技術が、実は日本の前ではどんなに頑張った所で歯が立つ訳がないと、心の中に抱いていたプライドが崩れていくのを感じた。
ふと隣に立っているダラスも同じ心境なのか、考えるのを止めている様子だった。
「では次に、この東京タワーの後継として5年前に完成した東京スカイツリーへとご案内します」
次に、東京スカイツリーへと案内されさる。
「あれがスカイツリーか…」
車で移動しているとスカイツリーが窓越しに見えてきた。
「ん?見た所、東京タワーとそんなに変わらない様だな」
「いえ、ここからスカイツリーまではかなり離れてますよ」
「どれくらいだ?」
「そうですね………ざっと10キロでしょうか」
車はスカイツリーへ近付いていく。距離が縮まる度にスカイツリーがどんどん巨大になっていく様に見えていき、5キロ以内に入ると最早東京タワーが可愛く見える程に高く巨大になっていた。
「お……おぉぉぉぉぉぉぉぉぉ~!」
スカイツリーへとたどり着き、真下から首を真上に向けながら驚く2人。
「嘘だろ……」
ダラスは思わず呟いた。
「太田殿、この塔はどれ程の高さが?」
「634メートルです。この塔も先程の東京タワーの様に電波塔や商業施設として利用され、東京の新たな観光名所として注目されています」
太田の説明に回りを見ると、スマホを片手にスカイツリーを撮影したりする観光客や一般人の姿があり、中には獣のような耳や尻尾を生やしている獣人や耳が長いエルフの姿もある。
転移後、東京タワーと並んでスカイツリーは新世界最大の建造物として国交を締結した国から次々と観光客が押し寄せており、一大観光地となっている。それに合わせて日本も国内にある観光名所の整備を進め、諸外国からの観光客の受け入れを推進しているため、前世界よりも日本の観光名所は賑わいを見せ、地域活性化や雇用率増加に一役買っている。
(もし我が国がこの国と国交を締結出来れば……しかし、あの会議での発言の取り消しと、国内の主戦派をどうにかしなければならないか)
シエリアは密かに、日本との国交締結を前向きに検討をはじめる。しかし自身は国の一外交官に過ぎないため、自身が属する外務省や帝王府をその気にさせるには恐らく身を粉にしても難しいと理解している。
そこへシエリアはダラスに耳打ちする
(ダラス…)
(はい)
(お前はこの国をどう思う?)
(はっきり言って、脅威としか言い様がありません。この国の実力が帝国を遙かに上回っているのは明白です)
(そうか、私も同じ意見だ。ダラス、本国に帰れたらこの国との国交締結に向けての工作に協力してくれるか?)
(勿論。帝国の明日のためには何としても、帝王陛下にご納得していただかなければ)
最早ダラスには、帝国最強と言う傲慢な考えは消え去っていた。いくら国力では勝っていようと、この日本とだけは事を構えてはならないと直感で理解する。
その後、2人はスカイツリーに昇り、展望台から東京を見下ろす。
(ここから見ると帝都が益々情けなく見えてきたな…………首都がこれ程の規模だと考えると地方都市ですら似た様な規模を持っているに違いない)
そんな感想を抱きつつ、スカイツリーを降りた2人は今晩宿泊するホテルへと移動した。
都内にある帝国ホテル東京へと案内された2人はそれぞれの個室を与えられ、カードキーの使い方やホテル内の設備の説明を受けた後、各々の自室へと入った。
「疲れた……」
部屋に入り、シエリアはベッドに座り込む。今日1日で衝撃の連続だった彼女の心は疲れ果てていた。普段の彼女なら仕事で疲れた時は、趣味である映画を見て楽しみながら過ごすのだが、カルトアルパスから今まで映画が見られない日々が続いたため、心と身体が映画を欲していた。
「そう言えばスマホで映画が見られると言っていたな」
シエリアは太田から受けたスマホの説明を思い出した、スマホを手に取ると慣れない手つきで操作する。
某配信サービスのアプリを立ち上げると、中にはシエリアの心を牽くような映画が沢山配信されている。
「こんなに……どれも見てみたい…………」
シエリアはアクション物、恋愛物、軍事物、アニメ物の映画や劇場版、または過去にTV放送されたアニメやドラマの内容からどれを見たいか決められなかった。
「オススメは……………」
一ヶ月間に最も再生されたオススメの欄を開くと、アニメ物が非常に多かった。
「アニメーションだけでこれ程の数が…」
シエリアはその後、一晩掛けて見れるだけのアニメを見回り、翌朝には目に隈が出来ていた。
続く
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