シエリアとダラスが日本国内の視察を行っている頃、瀬戸内海の無人島に建設された捕虜収容所では、グレード・アトラスターの乗員1800名が収容生活を送っていた。
収容所は国内にある刑務所と同様の作りをしており、島周辺の海上を海上保安庁第6管区所属の巡視艇が24時間態勢で警備し、収容所は敷地内も含めて周囲を高電圧電流付きのフェンスで囲まれ、フェンス上には10メートル間隔で監視カメラ、入り口も顔認識カメラや金属探知機が設けられ、IDと指紋認証システムが導入されている。
そんな厳重警備態勢の中、収容所内では毎日、刑務官、検察官、弁護士達による事情聴取が毎日行われていた。但し、収容人数が人数なため毎日20人ずつ分けて行われている。
収容所の本棟の一角に設けられた一室に、グレード・アトラスター艦長のラクスタルの姿があった。
「ラクスタルさん、事情聴取のお時間です」
質素な部屋の入り口にある鉄製の扉の小さな蓋から刑務官の声が響く。
「あぁ」
部屋にある小さな机で本を読んでいたラクスタルは刑務官の言葉に素直に従い、部屋を出て、2人の刑務官に連れられ一階下の事情聴取室へと向かった。
聴取室に入ると、そこには刑務官、検察官、弁護士に加えて外務省の職員1人を含めた4人が待っていた
「それではこれより聴取を行います。我々の質問に素直にお答えください」
事情聴取は始まった。
4人からはラクスタルの年齢、血液型、所属先の詳細、カルトアルパス事件の当事者としてどのような行動をしていたのかが細かく質問される。
ラクスタルは何とか不利にならない程度に、話せない事はなるべくオブラートに包んで話し、様々な質問にも嫌な表情を浮かべる事なく答えていく。
聴取開始から一時間が経過し、用意されていた質問を終えるとラクスタルは再び部屋に戻った。
「ふぅ………」
ラクスタルは事情聴取の間の緊張感から解放され、部屋の床に寝そべる。
(あれからもう2週間近くか…………)
カルトアルパス戦から2週間が経過し、収容所の生活にも慣れてきたラクスタル達は、当初予想していた尋問や拷問等の暴力行為を受ける事なく、監視付きではあるか穏やかに平穏に過ごせ、収容所生活にも慣れ始めていた。
(今、国はどうなってるのだろうか?)
天井から吊り下がる電球を見つめながら、国が今どうなってるのかを気にしていた。
(何の情報もない所を見ると……やはり交渉は進んでいないのか、あるいはその段階では無いと言う事か)
事情聴取の時に自分から自由な質問をしても良いと言われ、その件に関して質問してみた所、外務省職員からは『まだ接触に向けて努力しています』としか話してくれなかったため、未だに接触できても返還に関する交渉の段階では無いとラクスタルは判断した。
(まぁ良い……大人しくしていれば、何れは帰れる)
何もしなければ帰れると信じ、考えるのを止める。
数時間後、昼食の時間となり食堂へ移動する。
そこには既に、乗員達が集まって各々に食事をとっていた。
セルフ式となっているため、ラクスタルはトレーに好きなメニューを入れ、誰もいない席に座る。
「ん?」
ふと、食堂のTVがある一角がごったがえしていた。何事かと気になり、そこへ向かう。
「どうしたんだ?」
「あ、艦長。いや、グレード・アトラスターに良く似た戦艦の映画を見ているのであります」
若い乗員がそう説明しTVに目を向けると、戦後間もない頃に製作された、第二次沖縄戦で連合軍の戦艦部隊により撃沈された戦艦大和を主役とした白黒映画が写し出されていた。
「ほぅ。良くできているな」
戦後直ぐに製作された映画ながら、国の運命を掛けた作戦に出撃していく大和の当時の乗員の心情、数で勝る連合軍の戦艦部隊へ囮として、もう一隻の戦艦と共に果敢に挑み、最終的には撃沈されるも、その活躍で沖縄の米軍に大打撃を与え、大和の死が報われると言った内容で、彼等には他人事とは思えないという感情が芽生えていた。
「凄まじいな」
ラクスタルもいつの間にかその映画に魅了されていた。そして、あの戦いで紀伊と尾張からの攻撃で生き残れた自分が偶然に生かされていると実感した。
昼食を終えたラクスタルは再び部屋に戻り、本を読みふけり、そのまま一日を終えて眠りについた。
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