日本国召喚×不沈戦艦紀伊   作:明日をユメミル

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閑話休題:4

時系列はカルトアルパス戦後まで遡る。

 

グラ・バルカス帝国と、途中退場したアニュンリール皇国を除いた先進"9"ヶ国世界会議が終了し、其々の国の代表が帰国の途に就き、今回の会議の一番の目玉となった戦艦紀伊と尾張は、会議に参加していた近藤全権大使を乗せ出港準備に入っていた。

 

 

 

「かなり激しい戦いだったみたいですね」

 

 

甲板を歩いていた近藤は、グレード・アトラスターとの戦闘で"僅か"な損害を受けていた紀伊を見て呟いた。

 

 

「えぇ。ですが、紀伊からすれば微々たるものです」

 

 

 

一緒に歩いていた松田がそう応える。

 

 

 

「相手は大和とほぼ同性能の艦だったと聞いていましたが、どうでしたか?相手の実力は?」

 

「中々手強い艦でした。尾張が居てくれなかったら、恐らくかなりの被害が出ていたかもしれません。大和型は機動性と運動性に優れていたと聴きますから、敵もそれを利用しようとしていたようです」

 

 

 

そんな話をしながら2人は艦内へと入っていく。

近藤は自室へと戻り、松田は出港の指揮を執るため、艦橋へと上がる。

 

 

 

「艦長、間も無く出港準備完了致します」

 

「うむ。それで、敵の捕虜達は?」

 

「ミリシアルが用意した施設に一時的に収容しています。後日。海上保安庁の巡視船が捕虜達を収容の後、本国の捕虜収容所に移す予定です」

 

「そうか。なら我々は気にせず此処を離れられるな」

 

 

 

先日の戦闘で捕虜となったグレード・アトラスターの乗員達は現在、ミリシアルが用意した捕虜収容施設にて一時的に収容されている。今の護衛艦隊には捕虜達を乗せる余裕が無いため、ミリシアル側との交渉で後日、護衛艦3隻に護衛された巡視船を使って国内に護送する事が決まっている。

 

 

「右舷、係留索切り離し確認!」

 

「出港用意!」

 

 

出港用意のラッパが鳴らされ、紀伊と尾張は出港用意に入った。

右舷の埠頭から延びていた係留索が外され、艦首の主錨が上げられる。

 

 

「錨水面切った!」

 

「機関始動、両舷前進微速!」

 

 

主機関が唸りを上げ、紀伊の船体がゆっくりと埠頭から離れていく。後方からも、尾張と他の護衛艦も続く。

 

 

「ん?」

 

 

埠頭を離れて沖に出ると、会議に参加していた他国の使節護衛艦隊の生き残りから紀伊と尾張に向けて汽笛と、『航海の無事を祈る』『心より感謝と祝福を贈る』を意味する旗がマストに上げられていた。

 

 

「総員、帽振れ!」

 

 

松田は甲板に出ていた乗員に感謝を意味する帽振れの指示を送り、マストに『感謝』『ご安航を祈る』を意味する旗を上げて返す。

紀伊と尾張は他国に見守られながらカルトアルパスを後にし、ミリシアルの領海を出て日本への帰路に就いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日が経過した日の午後、沖縄本島より南東へ400キロ地点の水面から海上を覗く1本の潜望鏡の姿があった。それを辿ると、海中に大型潜水艦が停止していた。

 

 

「艦長、目標を視認」

 

「ふむ…………」

 

 

 

艦長と呼ばれた男は潜望鏡を覗き、レンズ越しに見える巨艦の姿を見る。艦長は海上を突き進む巨艦の姿を見て口元を曲げた。

 

 

 

「運が良いぞ。例の日本の戦艦と此処で出逢えるとはな」

 

 

グラ・バルカス帝国海軍第2潜水隊所属のシータス級潜水艦『ミラ』だった。潜望鏡を覗いていたのはミラの艦長を勤める男である。

グラ・バルカス帝国本土から遥かに離れている大東洋に態々出向いているのは、つい先日に帝国本土からの遠距離秘匿通信にてカルトアルパス戦への報復として日本船籍の船へ対する報復攻撃を命じられていたからである。

既に旧太平洋地域の小島には極秘裏に建設された秘密基地からミラを含めた第2潜水隊所属のシータス級大型潜水艦、中型のハイドラ級攻撃型潜水艦が展開している。

 

 

 

「雷撃用意。先ずは巨艦を囲むように展開している小型艦を仕留めるぞ」

 

 

 

ミラの艦長は目の前を走る艦隊の灰色をした小型艦を狙うように指示し、ミラとハイドラ級『アルファルド』の2隻が動き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

「どこの国の潜水艦か、分かったか?」

 

 

カルトアルパスから日本に向けて帰還していた紀伊と尾張を護衛する、護衛艦『しらぬい』の艦長『蕪木』2佐が、CICに設けられた艦長席に座りながら水雷長に尋ねる。

 

 

「不明です。音響反射から大型艦と中型艦と思われますが、酷い雑音です」

 

 

ミラとアルファルドの行動は既に日本側や護衛艦にも筒抜けだった。

この2日前に、日本近海に設置された水中固定聴音機と海上自衛隊の岩国・鹿屋・那覇基地所属のP-3CとP-1哨戒機によるソノブイ・ソナーと磁気探知機によって発見され、その情報が艦隊にもたらされていたのである。

 

 

「敵艦増速、接近中です」

 

「連中は我々が潜水艦を知らないと思ってる上で自分達の存在が露見していないと思っているのか……取りあえず突発事態に備えておこう」

 

 

 

相手から攻撃があるまで様子を見る事に決め込もうとした時、ソナーマンが何かに気がつく。

 

 

「どうした?」

 

「不明艦より複数の注水音を探知!攻撃態勢に入ったと思われます!魚雷発射!続けて2発!」

 

「CICより艦橋、回避行動取り舵一杯!!プレーリーマスカー起動!艦が旋回と同時に音響デコイ投下!」

 

 

 

ミラとアルファルドの魚雷発射を合図に、しらぬいを含めた全艦が一斉に回頭し、回避行動に入った。

艦隊の右舷側より2艦から一斉に放たれた16本の魚雷が白い航跡を吐きながら迫ってくる。

だが幸いな事に、発射されたのは真っ直ぐ進むだけの前時代的な無誘導魚雷だった。16本の魚雷は全て命中コースを外れ、艦隊の後方を通過していった。

 

 

「ソナー!敵艦は!」

 

「魚雷発射後に急速潜航に入りました!」

 

「対潜戦闘!VLA攻撃用意!」

 

「攻撃用意よし!」

 

「攻撃始め!」

 

 

 

しらぬいから2発のVLAアスロックが発射された。ロケットブースターによる加速でミラとアルファルドの近くの海上まで飛行した後、ブースターが切り離され、先端の短魚雷が着水し、潜航していく2艦を追い詰める。

 

 

 

「5、4、3、2………今!」

 

 

アスロックはミラとアルファルドに直撃。海面に水柱が上がった。

 

 

 

「圧潰音、目標消失」

 

「対潜戦闘用具収め」

 

 

 

やる事をやったしらぬいは警戒態勢を維持しつつ、戦闘配備を解いた。

艦隊は脅威を排除した後、無事に横須賀港へと帰還した。

 

 

 

 

 

 

 

 




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