P3Cに発見された、グラ・バルカス帝国海軍第2潜水艦隊第3文明圏派遣隊のシータス級潜水艦『メンカル』は、海中へと向けて急速潜航していた。
「現在深度30」
「ダウントリム最大!急ぐんだ!」
メンカル艦長の『サーカスティック・フリンジヘッド』少佐は慌てて指示を出す。彼の指揮下にあるメンカルは、日本国と第3文明圏に対する通商破壊作戦のためこの海域で相手を待ち受けていたのである。
しかし彼らは日本の対潜哨戒能力と対潜哨戒機の性能を知らなかった事と、この付近はロデニウス大陸から日本とフィルアデス大陸へ向かう商船ばかりで、近くに日本の海軍戦力は無いとの情報しか得ていなかったため、魚雷を使わずとも艦に搭載されている150㎜単装砲でも充分だと浮上していたのである。
しかしそれが仇となり、P3CのレーダーとMADに捕まってしまい、メンカルも警戒用の対空レーダーでP3Cの接近を知ったため、急速潜航に入ったのだった。
「艦長、直上に着水音多数!」
「爆雷か?」
「分かりませ………」
コーン………コーン……コーン……コーン……コーン…
その時、直上から規則的に反響音が聞こえてきた。
サーカスティックは戦慄した。
「これは……アクティブソナー!?我が軍でも実用間近の物を何故奴等が?」
「艦長!音源、更に上がっています!」
「最大深度まで潜航!潜れ潜れ潜れ!!」
海上に着水したソノブイはアクティブソナーを使い、メンカルを確実に捉え、その情報を上空で旋回しているP3Cに送り続ける。
「かなりデカイ艦みたいだな。この艦が大戦当時の潜水艦と同じ性能なら、やりようはある」
岡本はソノブイから送られてきた情報を受け取りながら、次の指示を出す。
「音響警告弾、投下用意!」
P3Cは高度を少し下げ、低空飛行に入ると爆弾倉を開く。
「音響警告弾、投下用意よし!」
「投下」
爆弾倉から音響警告弾が投下され、着水すると同時に強烈な音響音を放った。
「うわっ!」
「耳が!」
パッシブソナーに全神経を集中していたメンカルのソナー員は強烈な音に耳をやられてしまった。
この時点でメンカルは耳を失い、何も捉えられない事態に陥る。
「これで向こうの耳は潰した筈だ。しばらく様子を見よう」
司令部からは警告して退去しなければ攻撃せよと命令を受けているため、メンカルの様子を伺う。
だがメンカルは深度200近くで針路と速度を変えずに進み続ける。
「目標、速度針路変わらず。間も無く領海に入りました!」
「よし、攻撃する。魚雷投下用意」
再び低高度飛行に入ると爆弾倉が開かれ97式短魚雷が姿を表す。
「諸元入力よし。投下用意よし」
「投下!」
爆弾倉から切り離された短魚雷は、尾部のパラシュートを開き海上へ着水すると、パラシュートを切り離し、水中に潜っていく。弾頭部に備えられたアクティブソナーが海中のメンカルを捉え続け追尾していく。
「後方から推進音が来ます!魚雷です!」
「馬鹿な!こんな深い所まで追いかけてくる魚雷が………回避!」
サーカスティックは慌てて指示を出すが、旧軍の伊400型と同じ船体規模を持つシータス級の巨大な船体は、舵の効きが悪く、直ぐに回避行動はとれない。
「魚雷来ます!」
「艦尾の乗員は直ちに艦首に待避せよ!」
艦尾区画に居た乗員達は我先にと艦首方向へ向けて走り出す。
「到達まで5、4、3、2、1!」
「総員衝撃に備え!」
その直後、海中に巨大な爆発音が響く。
爆発によって発生した圧力は真上に向かい、海上に1本の水柱が上げる。
「着弾確認」
窓越しに双眼鏡で水柱が上がるのを確認した岡本。相手を撃破したかを確認するため戦果確認に入る。
水柱が上がった地点の上空を周回しながら、戦果確認を行う。
「海上に多数の浮遊物を確認」
岡本は双眼鏡で海上を確認する。海面には黒いオイルとメンカルの残骸、艦内から漏れだした乗員の私物のような物が見える。状況から見て撃沈したのは確実だった。
「撃沈を確認、対潜戦闘用具収め」
岡本は撃沈と判断し戦闘終了を宣言する。岡本は司令部に戦闘報告をし、機体は再び哨戒活動に戻った。
「訓練で慣れているとはいえ、実戦は気持ちが良いモンじゃないな」
窓越しに現場を見ながら岡本はそう呟き、撃沈したメンカルの乗員に向けて黙祷をした。
続く
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