総理官邸の地下には、表には決して出ない存在として危機管理センターと呼ばれる部屋が存在する。此処は内閣情報調査室から緊急事態の速報を受けた時に、総理大臣以下の内閣閣僚が集合する事となっている。
今此処には情報連絡室が設けられ、総理大臣以下の閣僚が一つの丸い机を囲むように座っている。
「皆様にお集まり戴いたのは他でもありません」
情報連絡室内に内閣情報調査室のトップである情報官が説明を行う。
「予てより、大東洋方面のグラ・バルカス帝国の潜水艦事案に関連して、つい数日程前、情報収集衛星がその潜水艦の拠点らしき場所を捕捉しました」
情報官の説明に室内がざわつく。
「こちらの画像をご覧ください」
プロジェクターが作動し、部屋の奥にある壁に画像を写し出す。
写し出されたのは、衛星が撮影した島の画像だった。
「これが、その拠点と思われる島です。この島はカルアミーク王国から南へ3000キロの地点にあります」
続いて島を拡大した画像に切り替わる。
島の南側に船舶らしき影が数隻停泊しており、西側には軍艦らしき船舶が6隻程程停泊している。島の真ん中にある小高い山の山頂には建物が写っている。
「現在この島には潜水艦が5隻、小型空母が1隻、巡洋艦1隻、駆逐艦が4隻程が停泊しており、島にもレーダーサイトらしき建造物が確認されています」
「ちょっとした要塞ですな」
島の画像を見た防衛大臣が感想を述べる。
「恐らく、この島はグラ・バルカスが我が国を含めた第3文明圏の調査と通商破壊のための最前線基地と見ています」
「奴ら、何時の間に…………」
「現在、海上自衛隊による対潜哨戒により10隻を越える潜水艦を捕捉、撃破していますが、グラ・バルカスとの戦争が避けられない現状と、今後の自衛隊の運用と国家安全保障維持を鑑みて、どのように対処すべきかを提案します」
その言葉に、皆は直ぐに意見を出す。
「相手の拠点が分かったなら、やはりこの島を叩く必要があると思います。前年に締結された大東洋憲章でもこの島の付近は日本の排他的経済水域内でありますから我が国の領土ですので、占領された島の奪還として自衛隊を派遣すべきです」
「しかし、此処は日本から3000キロ以上は離れている。今の自衛隊の能力でこの島の奪還は出来るのか?」
「防衛大臣はどう思いますか?」
総理から意見を聞かれた防衛大臣が答える。
「恐らく可能です。今、対潜哨戒任務に就いている航空部隊と第1護衛隊群、第1潜水隊群を既に展開していると思われる敵潜水艦の掃討に当たらせます。カルアミーク王国に建設された連絡用の空港から爆装した航空自衛隊の戦闘機と電子戦機を飛び立たせ、島内に居る空母と潜水艦を優先的に叩きます。後は輸送艦に乗り込み島の奪還任務に当たる陸上自衛隊に新設された水陸機動団を上陸させ奪還させる………現状ではこれが最適かと」
「成る程。奪還は可能なのは分かったが、実際にやるとしたら自衛隊の準備に何れくらいの時間が必要だ?」
「陸海空自衛隊は24時間態勢で出動できます。命令が下れば24時間以内に準備と出動が可能です」
「分かった。今は各国との貿易に重大な影響を与えている事から事態は一刻を争う。ここは緊急性ありと判断し、自衛隊には早急なる防衛出動を命じたいと思いますが、各々の意見は?」
総理の言葉に閣僚は誰も何も言わなかった。
ロウリア戦とパーパルディア戦時の教訓から、皆決断は早く、既に宣戦布告されているならグラ・バルカス帝国による日本本土や領土、領海への武力行使に対する自衛隊の防衛出動に関しては自衛隊法による自衛隊の出動条件を満たしているため反対意見は少なく、2度の戦争の経験から世論も自衛隊の出動には肯定的であると鑑み『何かあってからでは遅い』と判断したからである。
「では自衛隊には防衛出動を命じます!それと、国民に対する説明のための記者会見の準備を!」
日本は遂に3回目となる防衛出動に向けて動き出した。
続く
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