カルアミーク王国連絡用空港から飛び立った第3飛行隊は第201飛行隊に護衛されながら、島の北方向から高度3000以下の低空で接近していた。
既に先行しているEC-1は島の周辺に強力な電波妨害を行っており、攻撃隊は遥か上空を飛行している第601飛行隊のE2Cホークアイの誘導を受け目標との距離を縮めていく。
「バフリーダーより全機へ、間も無くターゲットに接近。アタック隊とスピアー隊は作戦通り指定されたターゲットを攻撃!」
攻撃隊の指揮官を勤める樋口は指揮下にある各機体に無線を送る。今回攻撃隊は島にあるレーダーサイトと艦艇に攻撃を同時に行うため隊を2つに分けており、樋口が指揮するアタック隊の3機のF-2はレーダーサイトを、樋口の同僚である『本田浩介』3佐の指揮するスピアー隊の5機のF-2は艦艇攻撃を担当する事となっている。
攻撃隊は2手に分かれ、アタック隊は針路を維持したまま南下し、スピアー隊は島の南に回り込むため針路を一度西に変えた。
「タリホー!」
暗闇の中、ヘルメットに装着されたナイトビジョン越しに島が見えた。
「全機上昇!」
アタック隊はそのまま高度を一気に上げ上昇し、高高度爆撃を敢行する。
『バフ、こちらナイトメア』
「こちらバフ」
高度5000を越えたタイミングで、島に居る特殊作戦群からの通信が入った。
『ナイトメア、目標をマーク』
「了解。攻撃態勢に入る」
攻撃隊はそのままの高度を維持しながら攻撃態勢に入る。主翼下のLJDAMの最終安全装置が解除され投下態勢に入った。
「ドロップ、レディ…ナウ!」
サイドスティックのボタンを押すと、主翼下のLJDAMが切り離され、そのまま真下へ向けて落下を始めた。
LJDAMの弾頭にあるレーザーシーカーが、特殊作戦群のレーザー誘導装置のレーザー光線を捉え、爆弾本体に装備されたフィンが小刻みに動き、本体を落下地点に向けて修正していく。LJDAMは寸分の狂いもなくレーダーサイトに着弾、レーダーサイトは粉々に吹き飛んだ。
『こちらナイトメア、目標の完全破壊を確認』
「了解」
一方で、西回りに島の南側へ回り込んだスピアー隊は、超低空飛行で島へ接近していた。
「目標補足」
スピアー隊のF-2に装備されているフェイズドアレイレーダーが、港に停泊している軽空母と艦艇を捉えた。
各機はE-2Cによるデータリンクで目標を割り振られてるため、後は所定の位置でミサイルを発射するだけである。
「アタックFOX-1、Fire!」
5機のF-2からASM-2が発射された。海面スレスレの低空飛行に入った20発近い数のASM-2はそのまま島に向かって飛び去っていく。
その頃、島の南にある港に停泊していた帝国海軍のシグナス級軽空母『デネブ』は、現在この島に於ける航空戦力の拠点となっている。
この島は面積が小さく起伏が激しい地形をもち、しかも地盤が緩いため航空基地が作れない。そのため、島の防空すべてをデネブが担っているのである。
「今日は月が綺麗だな」
夜の涼しい風がそよぐ飛行甲板で夜風に当たっている、当直の若い下士官兵が煙草を片手に夜空を眺めている。
「明日には此処を出て帰れるな………帰ったら休暇だ。何しようかな?」
デネブは明日の夕方には本国から来る交代の艦に任務を引き継ぎ、帰還する予定となっている。
彼も1ヶ月に及ぶ任務を帰ってからどう癒すかを考える。
ゴォォォォォォォォォォォォ!!!
「ん?雷か?」
何処からともなく聞こえてきた轟音に彼は雷かと思い、空を見回すが雨雲は見当たらなかった。
「雷じゃない?」
音はだんだんと大きくなり、それは右方向から聞こえてくるのが分かる。
「何だ?」
ふと見ると、水平線から海面ギリギリの低空で高速接近してくる光点が見えた。その数およそ20程。
「て、敵しゅ……」
敵襲と叫ぼうとした瞬間、鼓膜が破れそうな程の爆音と衝撃が襲い掛かる。
「うわぁっ!」
彼は衝撃波に煽られて甲板から海へと転落した。
暗い海中を必死にもがきながら海上へ出ようと必死に体を動かし、ようやく海上に浮き出た彼の目には驚きの光景が目に見えた。
「デネブが………」
目の前でデネブが炎上し右舷へ傾斜、甲板には格納庫内で起きた爆発により穴が開き、そこから炎が見えた。
回りを見てみるが自分以外に脱出した乗員の姿は無く、無事だったのは自分だけだと直感した。
「あ……」
ふと、島の山の上にあるレーダーサイトが炎上しているのも見えた。状況から見て明らかに敵襲だと理解するが、彼にはどうする事も出来ない。艦から流れてきた漂流物に掴まり、生暖かい海水に晒されながらなんとか海岸まで泳ぎ着こうとした。
続く
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