「う………」
衝撃波に吹き飛ばされたハイトマンは、血が滴り落ちる頭を押さえながら立ち上がる。
「これは!?」
辺りを見回すと、先程まで多数の兵士が居た地点には大きなクレーターが9つ程出来ており、その回りには死亡した兵士の遺体や、千切れた手足が散乱しており、奇跡的に生き残っていた兵士が負傷者の手当てと状況確認を行っていた。
「中隊長!」
そこへ、下士官兵が駆け寄ってきた。
「何が起きたんだ?」
「分かりません………恐らく敵による攻撃かと」
「馬鹿な………何故我々が此処に居るのが分かったんだ?」
ハイトマンは林の中に溶け込むよう徹底的に擬装していた筈の防衛部隊が展開している地点が何故敵に分かってしまったのか理解できなかった。最初は空爆かと考えたが空を見ても航空機らしき姿は無く、次に艦砲射撃かとも思ったが海上を見ても敵の艦船の姿は見えず、謎の攻撃を前にハイトマンは益々混乱する。
「じゃあ今の爆発は何なんだ?」
ハイトマンはクレーターの大きさから恐らく爆弾の類いではなく、戦艦級の砲による艦砲射撃であると結論付ける。帝国には戦艦の砲弾に匹敵する程の破壊力と大きさを持つ爆弾も、それを搭載できる航空機も存在しない事からそう判断したのだが、彼を含めた帝国軍人の常識から考えれば、目標に砲弾を叩き込むためには遠距離とはいえ目視距離にまで近付かなければならないのだが、海上や水平線上に敵艦の姿はない。
ならばそれ以外にどんな手段があるのかと考えるが、答えは見つからなかった。
「何にせよ、
「了解!」
ハイトマンは取りあえず自分の仕事を先にこなすため、被害の確認と、防衛部隊の再編成を急がせる。
その直後……
「うわぁ!」
再び爆発が起き、再編成中だった兵士や車両が木の葉の様に舞い上がる。
「またか!?」
ハイトマンはまるで自分達が見透かされているかのように、正確に砲弾を叩き込んでくる敵に恐怖した。
「中隊長、どうしますか?」
「敵は明らかにこちらの動きを見透かしている。このままだと戦う前に全滅だ…………今のうちに無事な兵と火器を地下壕に待避させろ!」
「了解!」
防衛部隊は敵艦による艦砲射撃から身を守るため、林の中にある鍾乳洞を利用して作られた地下壕へ兵と砲火器を待避させる。
その様子を見ていた特殊作戦群第2小隊は無線を開く。
「こちらナイトメア、敵は巣に籠った。繰り返す、敵は巣に籠った」
特殊作戦群からの報告を受けた、第2護衛隊群は夜明けに合わせて一気に前進する。
おおすみの艦内では、艦尾のウェルドックへ続く第4甲板では水陸機動団が出撃準備を整えていた。
「いよいよですな」
「あぁ」
緊迫した第4甲板の奥でマイラス、ラッサン、ヴァンデクリフトの3人の緊張した面持ちで水陸機動団を見ている。
「マイラスさん、ラッサンさん、ヴァンデクリフト少将」
そこへ、中隊長がやって来た。
「間も無く出撃です。こちらを身に付けてください」
中隊長はマイラス達に迷彩柄のヘルメットと防弾チョッキ3型、膨張式救命胴衣を手渡す。
マイラス達は事前に受けた説明を思い出しながらそれらを装着していく。
「重い…」
「彼等はこんな物を身に付けてるのか」
ヘルメットにライフル弾阻止用のセラミックプレートが入った防弾チョッキ、その上に救命胴衣を装着しているため慣れていないと歩くのが大変であるが、これも命を守るために必要なため文句は言わなかった。
「もう一度確認しますが、出撃した後は我々の指示に従って頂きます」
「心得ている。我々は貴軍達の邪魔をしないよう注意しよう」
ヴァンデクリフトは他人の仕事を邪魔する人間ではないため、中隊長の言葉に特に嫌悪感を抱く事なく快く賛同の意を示す。
「作戦中はこちらの3人を護衛に就けます」
マイラス達は一応同盟国の人間であるため護衛が付けられる事となっており、3人の隊員が護衛に就く。
「本日は宜しくお願い致します」
「こちらこそ」
「我々の能力で良ければ貴国のために是非役立ててください」
マイラス達は3人の隊員達と握手を交わす。
『作戦開始30分前』
出撃前のアナウンスが第4甲板内に鳴り響く。
「ではこれより車両に搭乗します!」
護衛に案内され、マイラス達は甲板の一番後ろに控えている最後尾のAAV7に乗り込んでいく。
「皆さん、本日は宜しくお願い致します」
AAV7に乗り込んでいた20人程の隊員にマイラスが挨拶をする。隊員達はマイラス達に緊張していた表情を崩しながら、柔らかい笑みで相づちを打って答える。
マイラス達が座席に座るとハッチがゆっくりと閉まっていき、車内は赤いライトの光に包まれる。
「さて」
マイラスとラッサンは鞄から日本から購入したビデオカメラと一眼レフカメラを取り出し、何時でも使えるように準備する。
第2護衛隊群は、遂に島を目視で捉えられる地点にまで近づいた。
護衛艦は島の沖合いで辺りを警戒する様に展開し、3隻の輸送艦は水陸機動団を降ろす準備に入った。
先ずは、先遣隊を務める水陸機動団第1水陸機動連隊とそれを島に送り届ける戦闘上陸大隊を載せたおおすみが、海上と繋がるウェルドック内に海水を注入していく。
「ウェルドック扉開放、ドック内注水確認!」
『了解。各車エンジン始動!』
第4甲板内に居た戦闘上陸大隊に所属する18両のAAV7がエンジンを始動させる。
『1号車、前進!』
先頭の1号車がゆっくりと前進し、ウェルドックに入るとそのまま海上へ向かって海水を浴びながら海上へと出る。その後ろから2号車、3号車と次々と続いていき、ウェルドックから海上へと出たAAV7は水上航行用のウォータージェット推進により、時速13キロの速度で島へ向けて直進する。
夜明け前の薄暗い海上を18両のAAV7は波に揺られつつ、マフラーから侵入してきた海水を吐き出しながら、島の西浜へ向けて進んでいく。
今の所、島からの攻撃はなく、各車両の車長はぺリスコープに装備された暗視装置越しに見える島を見ながら攻撃が来ない事を祈る。
そして島が近付き水深が浅くなると、各車両はマフラーから白い煙を煙幕代わりに吐き出し、煙幕を張る。
「上陸1分前!」
車長からその報告を受けた水陸機動連隊の隊員達は手にしていた銃や装具の最後の確認を行い、上陸に備える。
浜辺に到達したAAV7はウォータージェットを停止させ、履帯を回転させる。
海底に接地した履帯は車体を前進させ、波を掻き分けながら浜辺へと上がった。
『1号車、上陸!』
先頭の1号車が浜に上がり、後続の車両は左右に展開しながら浜辺へと上がり、遂に上陸に成功した、
「よし!ハッチ開け!総員下車!」
ハッチが開かれ、待機していた水陸機動連隊の隊員達はAAV7から一斉に飛び出した。
続く
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