日本国召喚×不沈戦艦紀伊   作:明日をユメミル

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閑話休題:5-1

真夏の強い太陽の光が降り注ぎ、東富士演習場では毎年恒例の『富士総合火力演習』が行われていた。

演習場に設けられた一角は毎年、抽選で招かれた大勢の民間人でごった返している。

 

 

だが、異世界に転移してから4年目となる今回の演習は、例年とは異なった様相を呈していた。

 

 

『目標3の台左、小隊集中射!撃て!』

 

 

陸上自衛隊の主力戦車である10式戦車小隊が、持ち前の機動性を生かしたスラローム射撃を観客の前で披露する。

 

 

『おぉぉ~』

 

 

観客席からはその様子に感嘆する声が聞こえてくる。その観客席から少し離れた位置に、外国から招かれた武官向けの来賓席が設置されていた。

異世界転移から4年で日本はロウリアとパーパルディア戦で圧倒的勝利を納め世界各国から非常に注目されている。その影響もあってか、今年の演習には大東洋諸国の武官と外交官に加えて、ムー、ミリシアル、エモールの列強3国の外交官と武官に軍属と民間の技術員、更にはムーの報道機関が揃っていた。

 

 

 

「あれが戦車と呼ばれる日本の陸戦兵器か……あのような激しい動きで的を外さんとは。日本の軍人はかなりの練度を持っているみたいだな」

 

 

ミリシアルの駐日大使の『フィアーム』が10式戦車の演目を見て素直な感想を述べる。

 

 

「それにあの大きさであのような素早い動きをさせるには、恐らく相当なパワーを持つ心臓と脚でなければ不可能に違いない」

 

 

エモール王国駐日大使『モーリアウル』は外交官としての洞察力を遺憾なく発揮していた。

 

 

 

一方でムーから招待された来賓達は、演習の様子についてカメラで撮影したり、内容を事細かくメモやノートに記録している。その中でも特に熱心だったのは、マイラス以下の技術士官達やムーの報道機関の記者達だった。

 

 

「今の射撃シーンの写真は記録したな?」

 

「はい!バッチリです!」

 

「よし!記録は一言一句漏らさずに全て記録するんだ!こんな機会滅多に無いからな!」

 

「フィルムは大量にあるんだ!ケチケチしなくても良いぞ!」

 

 

 

彼等は持ち込んだカメラ等の記録用の機材を活用し、演習を細かく記録していく。

 

 

 

「テレビの前の皆様、ご覧になりましたでしょうか!あの戦車と呼ばれる日本国の兵器は信じられない動きをしながらも全ての車両が的を射抜きました!」

 

 

報道機関のニュースキャスターに至っては、カメラの前に自分なりの解釈で必死にリポートしながら、自身も興奮しながら演習に魅せられていた。

 

 

 

『続きまして、対戦車戦闘の様子をご覧頂きます』

 

 

次の演習のアナウンスが流れる。

そのアナウンスと同時に、対戦車誘導弾を搭載した複数の車両が進入してきた。

 

 

『目の前に進入してきましたのは対戦車火力として、対戦車誘導弾と呼ばれる火器を装備した対戦車部隊です。始めに進入してきた青の旗で表示された車両には87式対戦車誘導弾が搭載されています。この誘導弾は目標にレーザーと呼ばれる目に見えない光線を照射する事により誘導します』

 

 

紹介のアナウンスが開始されたと同時に、青色の旗が装着されたパジェロが現れる。後部座席には87式対戦車誘導弾を装備されており、搭乗している隊員は車両が停止すると同時に飛び降り、誘導弾本体を地上に降ろして、発射準備を行う。

 

 

『次に、赤色の旗で示された車両は中距離多目的誘導弾です。この発射装置は目標が発する熱を捉えるか、先程の87式のようにレーザー照射による2種類の誘導方法を状況によって使い分けて誘導します。また、一台の発射装置には6発の誘導弾が搭載可能であり、連続で複数の目標を攻撃し速やかに移動する事が可能で、敵の反撃を受ける事なく陣地転換が可能となっております』

 

 

高機動車を改造した車体後部に設置された6発の対戦車誘導弾を装備した中距離多目的誘導弾のランチャーがせり上がり、発射態勢に入る。

 

 

『最後に、白の旗で示された2台の車両には、96式多目的誘導弾システムが搭載されています。左の車両は地上誘導装置、右の車両には誘導弾本体が内蔵された発射装置です。96式はこの2台1組で構成され、より遠距離から相手の車両を攻撃可能で、装甲の薄い敵車両の上部分に着弾させる事が可能です』

 

 

先程の中距離多目的誘導弾と同じ、高機動車を改造した車体に搭載された96式多目的誘導弾システムも発射態勢を整える。

 

 

『これらの火器は後方への噴射と爆風が激しく、広場での射撃は大変危険なため予め右の台、並びに左の台に設置した発射機で射撃します』

 

 

そのアナウンスに、来賓達は右の台と左の台に設置された各種誘導弾発射機に視線を向ける。

 

 

「モーリアウル様、先程の説明が本当なら日本はカルトアルパスの時のように誘導魔光弾を戦力化していると言う情報の確証が得られます」

 

「だな。日本よ………態々こんな暑い日に無理して来た事が無駄にならぬよう楽しませてくれ」

 

 

 

モーリアウルは目を見開く。

 

 

 

『先ずは、87式対戦車誘導弾による射撃をご覧頂きます。目標は6の台の赤い標的です』

 

 

アナウンスが終わると、スピーカーから無線機越しの音声が響き渡る。

 

 

『87式対戦車誘導弾、6の台戦車、撃て!』

 

 

合図と同時に、発射機から87式対戦車誘導弾が発射された。そして一瞬のうちに標的に着弾した。

 

 

『命中!』

 

「馬鹿な!あそこから標的までかなりの距離だぞ!」

 

「早すぎて見えなかったな」

 

 

フィアームらミリシアルの来賓達は発射から一呼吸置かずに命中した87式の速度に驚く。

 

 

 

「成る程………あそこの地点からあの距離にある目標の中心を正確に射抜いている。何と言う命中精度だ」

 

 

モーリアウルは87式の正確性と命中精度に感嘆する。

 

 

「ご覧ください!一瞬です!ほんの一瞬で標的は完全に射抜かれました!信じられません!」

 

 

ムーのキャスターも驚きを隠せない様子で必死にカメラに向けてリポートし、マイラス達も発射から命中までの時間を図り、それを細かく記録する。

 

 

 

『続いて中距離多目的誘導弾が射撃します。本日は目標が発する熱を捕捉する赤外線誘導方式で3発の連続射撃を行い複数の目標に着弾させます』

 

 

 

待機していた中距離多目的誘導弾が発射態勢に入った。

 

 

『中距離多目的誘導弾、目標1から3を捕捉。撃て!』

 

 

発射命令と共に3発の誘導弾が連続して撃ち出され、一瞬で3つの標的に同時に命中した。

 

 

 

「「「おおお~」」」

 

 

 

来賓達は最早言葉が出なかった。

複数の誘導弾を複数の目標に同時に着弾させるという、信じられない光景にミリシアル、エモール、ムーの外交官達は噂レベルで聞いていた日本の兵器に関する性能が嘘や誇張ではなく事実であったと痛感した。

 

 

「最早………これはもう疑う余地は無いな」

 

「全くだ。私はつくづく日本が味方で良かったと思います」

 

「やはり占いの通り日本国は魔帝の脅威を打ち破る希望となりそうだ」

 

 

 

 

 

 

続いて行われたのは、普通科による機動戦闘だった。

 

 

 

『只今進入してきたのは、96式装輪装甲車と呼ばれる車両で、複数の普通科隊員を前線へ向けて輸送するための車両です。これより普通科隊員による小銃、機関銃射撃をご覧頂きます』

 

 

 

会場に普通科隊員を乗せた96式装輪装甲車が進入してきた。各車両が所定の位置で停止すると後部のハッチが開き、小銃で武装した普通科隊員が一斉に降りてくる。

 

 

「あの者達が日本の陸軍が。変わった模様の服を着ているし、被っている兜も丸く質素だな」

 

 

 

フィアームは普通科隊員の装備を見て、自国の陸軍よりも華やかさが無い事に鼻を鳴らした。

 

 

 

「あの方々が着用されているのは迷彩服と呼ばれる戦闘服だそうで、被っているのは戦場で爆弾や砲弾の爆発から頭を守るためのヘルメットと呼ばれる兜との事です」

 

「恐らく華やかさよりも実用性を主眼に造られているのだろう。戦場では派手な軍装は目立つからな」

 

 

 

マイラスとモーリアウルは普通科隊員の装備の内容を自分なりに理解する。

 

 

 

『これより普通科が射撃を開始します』

 

 

 

数秒後、小銃と機関銃を構えていた隊員達が一斉に射撃を開始した。

 

 

 

「これは!」

 

「何と言う……」

 

 

 

普通科1個小隊から繰り出される火力に、来賓達は言葉が出なかった。

隊員1人1人が装備している小銃は全て、列強の軍隊が実用化しているライフルよりも遥かに高い発射速度で標的を穴だらけにしていく。

 

 

 

「資料で事前に見たが……凄まじい火力だな」

 

「我が陸軍もあのようなライフルを実用化出来れば」

 

 

 

マイラス達は事前に自衛隊の火器については確認していた事もあり、大して驚きもせず記録に集中していた。

 

 

 

 

 

その後も演習は滞り無く進み、演習の最終段階に入る。

 

 

 

『最後のプログラムとして、現在我が国で訓練中のムー陸軍による訓練成果をご覧ください』

 

 

 

今年の演習には自衛隊から訓練を受けていたムー陸軍戦車隊と歩兵部隊、そしてこれが最初で最後となるムー陸軍特殊部隊による公開訓練が披露される。

 

 

 

『左をご覧ください。ムー陸軍戦車隊と歩兵部隊が進入して参りました』

 

 

 

広場の左側にある入り口の遥か向こうの戦車道から、日本からムーに提供された61式戦車で編成された戦車隊と歩兵部隊が姿を表す。

 

 

 

『これより、ムー陸軍による勇姿をご覧頂きます』

 

 

 

61式戦車小隊は入り口手前で停止すると、後ろに居た3両のジープに乗り込んだムー陸軍偵察分隊12人が先行して演習場に進入してきた。

偵察分隊は、車体に擬装ネットを施したジープから降りると、前方の高台に敵部隊が居ると言う想定で偵察を開始する。

 

 

 

『こちら偵察、敵戦車小隊、歩兵部隊を発見!』

 

『こちら戦車隊了解!これより展開する!』

 

 

 

偵察隊からの報告を受けた61式戦車小隊は入り口から隊列を組んで進入してきた。同時に目標が居る方向へ砲塔と車体を向けて、叢の手前で停止した。

 

 

『戦車隊、目標を発見!これより攻撃態勢に入る!』

 

 

戦車小隊は砲塔を標的に向ける。砲塔内では砲撃手がスコープを使って標的に向けて照準を合わせ、装填手が弾薬庫から砲弾を取り出して砲に装填する。

 

 

 

『小隊各車、射撃用意良し。目標4の台左、射撃用意……撃て!』

 

 

 

小隊長の合図で全ての61式が同時に発砲し、標的を破壊した。

 

 

 

『命中!続いて撃ち方用意!』

 

 

 

次なる目標に向けての射撃準備に入る。

 

 

 

『射撃用意……撃て!』

 

 

 

次弾が発射され、またもや全ての標的を破壊した。

 

 

 

『敵戦車小隊撃破確認!前進を開始!』

 

『前進!』

 

 

続いて数両の60式装甲車が演習場に入ってきた。

歩兵部隊を満載した60式装甲車隊は敵歩兵部隊の真正面に来るように前進し、所定の位置で停止、中に居た歩兵を降ろした。

 

 

『射撃用意、撃て!』

 

 

ライフルと軽機関銃を装備したムー陸軍の歩兵部隊が射撃を開始した。射撃をしながら前進する歩兵部隊を援護するように60式からの機関銃射撃も加わった。

 

 

『敵歩兵部隊後退、前進!』

 

 

 

歩兵部隊は60式を盾に前進を開始し、暫く射撃が続いた後、動きを止めた。

 

 

『敵歩兵部隊の撤退を確認!』

 

『了解!歩兵部隊は直ちに撤収せよ!』

 

 

歩兵部隊は一斉に60式に乗り込み、全員を乗せた60式は演習場から撤退していった。

 

 

 

『続いて、ムー陸軍特殊部隊による各種技能をご覧頂きます』

 

 

 

いよいよ今回の目玉となる、ムー陸軍特殊空軍連隊の公開訓練が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




今回は前編、後編に分けます
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