今回の富士総合火力演習の一番の目玉である、ムー陸軍特殊部隊『特殊空挺連隊』の公開訓練。
ムーからの要請で陸上自衛隊第1空挺団、警視庁特殊急襲部隊、在日米軍の各特殊部隊から本格的な特殊作戦訓練を受け、この演習の前からその能力については注目されていただけに来賓達はその成果を見るのを楽しみにしていた。
『先ず最初に会場左手をご覧ください』
アナウンスで誰もが左に視線を向けると、3階立てのビルを模したプレハブと大型のスクリーンがある
『あそこに建てられているのは武装した敵が立て籠っている建物になります。その側に設置されているのは、建物内に設置されたカメラからの映像になります。最初にご覧頂きますのは、建物に居る武装勢力を制圧する屋内戦闘訓練です。ムー陸軍特殊部隊の勇姿をご覧ください』
アナウンスが終わり、辺りが静粛に包まれる。そんな中、建物へ向けて目出し帽とライフルを携えた20人程の敵役が人質を模した人形と共に銃を構えながら建物に入っていく。
『只今、人質をとった武装勢力が建物内に入っていきました。』
訓練展示の準備が整い、再び静粛が訪れる。
ふとそこへ、建物へ向けて全身を黒ずくめの装備で固めた5人の人影が現れた。
『只今進入してきましたのは、特殊部隊に所属する偵察隊の隊員です。彼等は作戦に先駆けて、敵が立て籠る建物に忍び寄り敵の死角を突き、偵察を行います』
最初に現れたのは、特殊空挺連隊の偵察を担当する偵察小隊だった。
高所用の梯子を携えた偵察小隊は素早く建物の裏側に近付き、周囲を手にしていたサブマシンガンで警戒しながら、裏側へたどり着くと梯子を素早く組み立てる。組み立てた梯子を立て掛けると、一人一人が梯子を駆けるように登りはじめ、建物の屋上へと到達した。
『これより偵察小隊は屋上より建物内の偵察を行います』
偵察小隊は腰に装備されていた頑丈なワイヤーと繋がれたフックを屋上のサッシに引っ掻けると、サッシを跨いで乗り越え、そのまま敵が立て籠っている2階の窓に向けてゆっくりと降下していき、窓の上から、紐で繋がれた鏡を降ろすと部屋の中を観察する。
「おぉ~……あのような方法で偵察とは」
「危なくないのか?」
来賓達は不安そうにその様子を見つめる。
モニターに写し出されている敵役達に特段動きは見られないため、まだ気がついた様子はない。
暫く偵察を行っていた偵察小隊は、ハンドサインで建物内の様子を共有しながら、その情報を逐一本隊へ送り続ける。
そこへ、制圧を担当する1個小隊を乗せたトラック3両が到着し、建物の裏側の手前で停車すると、30名程が降りてくる。
小隊は2手に分かれ建物の外側に設置された非常階段を駆け足で登り、敵がいる部屋に続くドアの前で待機し、もう1隊は偵察小隊が使用した梯子を使って屋上に上り、偵察小隊と入れ替わるようにワイヤーフックをサッシに引っ掛けて降下態勢のまま待機する。
『これより特殊部隊は合図と共に一斉に突入し、目標を制圧します』
アナウンスの直後、小隊は互いにハンドサインで合図を送り、突入態勢に入った。
『5、4、3、2、1、GO!』
秒読みの後、ドアの前に待機していた特殊部隊が破城槌でドアを破壊し、一斉に突入、同時に屋上に待機していた隊も一気に滑り落ちるように降下し、窓を蹴破って部屋に突入した。直後には銃声を模した爆竹や花火の音が響き渡る。
「なんと凄まじい………」
「何がどうなっているんだ!」
モニターには隊が敵役を取り押さえ、人質を救助する様子が写し出される。
そして突入から僅か数分で、敵を制圧し人質は無事救助に成功した。
建物から出てきた部隊は、人質役の人形と共に車両に乗り込むと会場から足早に立ち去っていった。
『これにて、ムー陸軍特殊部隊による訓練展示を終了します』
意外に呆気なく終わった公開訓練に、来賓達は少し物足りなさそうな様子だった。
「何だか不完全燃焼な感じだな」
「仕方ありませんよ。彼等は本来、非公開の部隊ですからな」
「ですがこの演習見学で得られた物は非常に大きいと思う。対グラバルカス戦、ひいては対魔帝戦に備えての良い教訓となった」
彼等にとって非常に有意義となった富士総合火力演習は、名残惜しみつつ終了し、来賓達も余韻に浸りながら各々の大使館へと帰っていった。
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