日本との軍事的繋がりの深いムーでは、グラ・バルカス帝国がこの世界に転移してきた直後から、対グラ・バルカス戦に備えてきた。
ムーの情報組織による決死の諜報活動や集めた情報から、グラ・バルカス帝国の技術力の高さと、列強に数えられていたレイフォルやパガンダ王国を滅ぼせる程の実力を備えている事を痛感した当時のムー政府は、当時国交を開設したばかりの日本から輸入される様々な技術力を下敷きとした、『5ヶ年計画』と言う国家プロジェクトを発動させた。
『5ヶ年計画』の、主な目的は既存の技術力の向上が表向きではあるが、それを基に軍の近代化を推し進めるのが本音である。
ムーから技術提供を求められた日本も、グラ・バルカス帝国に対する防波堤としたい日本政府の思惑と利害の一致により、『新世界技術流出防止法』の大幅緩和に踏み切った事により、日本から旧式ながらもムーにとっては画期的とも言える様々な技術力を手に入れる事に成功した。
その成果のほんの一部を紹介したいと思う。
オタハイトから東にある広大な土地を持つ陸軍演習場には、先進技術立証室が管轄する『陸軍アイディーン試験場』がある。
此処では先進技術立証室が開発した各種兵器や銃砲火器のテストが行われており、広大な土地を活用し様々な兵器が実用化されている。
その試験場の一角に、先進技術立証室に於ける陸戦兵器の開発を担当する『新型陸戦兵器開発部門』が管理する大型の車両格納用倉庫があり、その中で先進技術立証室室長となったマイラスと、新型陸戦兵器開発部門を統括する『ショーン・パットン』陸軍少将の2人が居た。
「少佐、これが?」
「はい」
2人の目の前には、日本からムーに技術提供の一環てして引き渡された61式戦車が鎮座しているが、その姿はオリジナルの61式から大きく掛け離れていた。
ボルト留めの車体前面と砲塔にレンガサイズのような長方形の塊がビッシリと、所狭しに貼り付けられている。
その見た目はさながら、戦国時代に鎧を纏った武者の様に見える。
「これこそ、我が先進技術立証室の技術の粋を集めて開発した新型装甲です!」
マイラスは長方形の塊を指差して自信満々に答える。
「少佐、この資料に書かれている爆発反応装甲とはいったい何なんだ?」
「はい、説明させて頂きますと、この金属製の箱の中には爆薬が詰められています。敵弾が着弾した時の圧力で爆発する仕掛けになっており、爆発した時の衝撃で箱の表面の鉄板が飛び出して敵弾の破壊力を阻害又は敵弾を破壊するという装甲防御方式です。掻い摘んで言えば、この金属の箱が敵弾を受け止めると同時に敵弾を吹き飛ばすのです」
先進技術立証室が爆発反応装甲を開発したのは、マイラスが日本から入手した軍事資料の中で発見した爆発反応装甲に関する資料と簡単な原理、その実用性からである。爆発反応装甲は地球世界でも大戦後の冷戦、取り分け国家間での衝突が頻発していた中東戦争に於いて、イスラエル軍が実用化した事によりその有用性が認められている。
実際にイスラエル軍は、アメリカから輸入した『M48/M60パットンシリーズ』を『マガフ』と言う名称を着け導入し中東戦争で実戦に使用している。
マイラスはそれらから、M60パットンに爆発反応装甲を車体や砲塔に多数取り付けた『マガフ6B』を参考に、防御力に不安がある61式に搭載するため、様々なデーターを出来る限り集め、短期間での開発に成功している。
「成る程、クッションのようなものか。効果の程は?」
「理論上は敵が使用する対戦車砲から放たれた砲弾をある程度は防ぐ事が出来ます」
「それは凄いな。コイツの火力は凄まじいから、そこに堅固な防御力が加わるとなれば頼もしいが、欠点はあるのだろう?」
「爆発力を利用した装甲故、戦車の周りに居る歩兵が死傷したり、高初速徹甲弾のような運動エネルギー弾頭に対する防御力が期待できないという欠点はあります」
「徹甲弾に対して有効でなければ導入する意味はあるのか?」
「爆発反応装甲は拡張性の高い技術ですし、現状のグラ・バルカス帝国の対戦車用火器程度なら充分に防御は可能です」
「では現状でも問題ないと言う訳か。で、これ以外にも改良はしてあるのか?」
「勿論です」
マイラスは設計図を広げ更に解説を進める。
「確かに61式の防御力は増しましたが、やはりそこで問題になってくるのが車体重量の増加によるエンジンのパワー不足と足周りです。これは61式改の参考としたマガフ6B同様、防御力を上げるとなれば必然的にこちらの改良も必要になってきます。そこでこの61式改にもマガフ同様に、エンジンの出力強化と足周りの強化を施しています。エンジンと足周りに関しては今の我々の技術力ではどうにもならないので、日本の企業に依頼し、強化を行いました」
そう言うとマイラスとパットンは61式改に目線を向ける。
「次なる改良点は、あの車長用キューポラです」
マイラスが指差したのは、61式の砲塔右に備えられた車長用キューポラだった。
「ん?オリジナルのより低い?」
「えぇ」
パットンの言う通り、61式改のキューポラはオリジナルのキューポラよりも低く扁平になっている。
「これもマガフシリーズの特徴です。この61式は背が高いですから、その上に更に背の高いキューポラから身を乗り出せば敵に狙い撃ちにされたり、被発見率も高くなる訳です。なら背の低いキューポラに付け替えれば良い訳ですよ。おまけに機銃も装填主ハッチに追加していますから対歩兵戦にも備えています。ですがこれ以外にも改良案があり最終的にはこのような性能になる予定です」
そう言ってマイラスは61式改の性能予定表をパットンに手渡し、受け取ったパットンは表に目を通す。
全長:8・9メートル
全幅:2・95メートル
全高:2・49メートル(機銃を含めた場合2・85メートル)
重量:40トン
懸架方式:トーションバー方式(三菱重工製)
速度:45キロ
行動距離:190キロ
主砲:61式52口径90㎜戦車砲(イレール社製新型砲に換装予定)
副武装:ガエタン12・7㎜重機関銃(ブローニングM2のライセンス)×1(車長用キューポラ上)・18型6・5㎜機関銃×2(装填手ハッチ・主砲同軸)・3連装発煙弾発射機×2
エンジン:空冷式V型12気筒ツインターボディーゼルエンジン 780馬力(三菱重工とリグリエラ:ビサンズ協同開発)
乗員数:4名(車長×1 砲手×1 装填手×1 操縦手×1)
オリジナルに比べてかなりの性能向上が見込まれている61式改の性能予定表に書かれていた内容にパットンの表情は明るくなった。
「凄い!これ程の強化なら、グラ・バルカスのシェイファーやハウンドなんか敵ではないな!」
「えぇ。この後、61式改の性能テストの予定ですが、間近で見学なされますか?」
「勿論だ!早くコイツの性能を見せてくれ!」
パットンは61式改が動いてる所を早く見てみたいという感情を抑えきれず興奮する。
続く
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