昼食を挟んで午後に入り、試験場に今年から新たに設けられた戦車や車両用のテストコースに運び込まれた61式改。
マイラス以下の先進技術立証室陸戦兵器開発部門のメンバーと、パットン将軍が選抜した『ミハール・ヴィットマン』『エルトン・バルクマン』『オットー・カリウス』『バンター・ヴォル』の4人の戦車兵が61式改を前に集まり、マイラスとパットンから説明を受けていた。
「以上がこの戦車の概要です。何か質問はありますか?」
マイラスの問いにヴィットマンが手を挙げる。
「少佐、このような素晴らしい戦車の開発に携われる事を非常に光栄に思います。ですがその上で質問をしたいのですが、61式は性能面でもグラ・バルカスの戦車の性能を凌駕しているのに、この上改良が必要なのでしょうか?」
「確かに。61式は性能ではグラ・バルカスの戦車を凌駕していますが、軍曹もご存知の通り、やはり一番のネックは防御力なのです。私が室長を勤める先進技術立証室では、先のバルクルス戦で鹵獲したハウンド戦車の47㎜砲を使った防御力テストで、61式の前面と側面装甲と同じ鋼鈑に47㎜砲を実際に撃ち込んだら、驚くべき結果が判明しました」
マイラスは予め用意したテレビに日本製のビデオデッキを繋ぎ、1個のビデオテープを挿入し、映像を再生させる。
テレビに写し出された映像には、広大な射撃場に設置された1枚の鉄板に、鹵獲したハウンド中戦車の47㎜砲を様々な距離から撃ち込んだ場合の貫通力テストが記録されている。
先ず、61式の車体前面装甲と同じ厚さ、同じ角度で傾斜させた鉄板を500メートルから47㎜砲を撃ち込んだ映像が写り、ハウンドの47㎜砲から放たれた徹甲弾が鋼鈑をあっさり貫通してしまう光景が刻名に記録されていた。
「これは!?」
日本で61式の操縦と運用の訓練を受けたヴィットマン達は、性能面で格下である筈のハウンドの砲に装甲を貫かれる映像を見て驚く。
「続いてはこちらの映像です」
次に写し出されたのは、61式の側面と同じ厚さの鋼鈑の防御力の記録である。
今度は1500メートル離れた位置に居るハウンドが鋼鈑に向けて砲弾を撃ち込む映像で、放たれた徹甲弾はこれもあっさり貫通してしまった。
「お分かり頂けましたか?」
「はい。よく分かりました」
「61式は技術的には我々にとっては先進的なのですが、この戦車はそもそも開発当時の日本のインフラと技術力の兼ね合いから導き出された限界数値だったのです」
「では何故、自衛隊はこの戦車を改良しなかったのでしょうか?」
カリウスの問いにマイラスは手元の資料を見ながら答える。
「日本はかつての大戦争後からこの世界に転移してくるまで、全くと言って良い程実戦を経験する事が無かった事と、採用から13年後には新型戦車に取って変わられた事もあって、採用当時から殆ど変わっていないのです」
「成る程。実戦が無ければ改良のしようがありませんからな。分かりました、私からの質問は以上です」
ヴィットマンが質問を終えると、他に質問者も無かったため、早速テストに入った。
4人は61式改に乗り込み、手渡された資料を基に各部のチェックに入った。
「照準器異常無し、砲架異常無し、安全装置よし、旋回ペダル異常なし、砲発射ペダル異常なし」
「徹甲弾・榴弾全弾安全確認。弾薬庫内異常なし、無線機異常なし」
「ハンドル異常なし、アクセルペダル・ブレーキペダル異常なし」
砲手のカリウスが砲関連の安全と異常がないのを、装填手のヴォルが弾薬庫、操縦手のカリウスが操縦系統に異常が無いのを確認し、車長のヴィットマンに報告する。
「了解。操縦主、エンジン始動!」
「エンジン始動!」
操縦手のバルクマンが慣れた手付きで癖の強いクラッチペダルでギアを繋ぎ、エンジンボタンを押す。
すると、61式改の新型エンジンが動き出し、マフラーから黒い排煙を吐き出した。
「油温、水温異常なし。回転数良好、エンジン始動確認」
「了解。操縦手戦車前進、前へ!」
バルクマンがゆっくりとギアを前進一速に入れてアクセルを踏み込むと、61式改の重苦しい車体が動き出した。
続く
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