日本国召喚×不沈戦艦紀伊   作:明日をユメミル

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閑話休題:5-6

様々な試験を順調にこなしていくヴィットマン達と61式改は、この日の最後のテストである攻撃試験に入ろうとしていた。

既に午後4時を過ぎて、夕陽が傾きつつある試験場の一角にある射撃場では、攻撃試験のための準備が進められていた。

 

 

「相変わらず遠いな」

 

 

射撃場の射撃地点で待機していた61式改のキューポラから身を乗り出しているヴィットマンは双眼鏡で、1キロ以上先にある標的を見てそう呟く。

 

 

「カリウス、砲撃準備は?」

 

「いつでも。お望みの場所に当てて見せますよ」

 

 

ヴィットマンの問いに、カリウスは照準器を覗きながら答える。

 

 

「ヴォル、そっちは?」

 

「こちらは何時でも」

 

 

ヴォルは弾薬庫から何時でも砲弾が取り出せる様に構えている。

 

 

「よし。こちらヴィットマン、準備完了」

 

 

ヴィットマンは無線でマイラス達に連絡を入れる。

 

 

『了解。では標的を出します。それに向けて射撃してください』

 

「了解。装填手、徹甲弾装填」

 

「徹甲装填、了解」

 

 

ヴォルは弾薬庫から徹甲弾を取り出し、砲尾にあるレバーを下げて砲栓を開けると、そこに徹甲弾をセットすると右手をグーにして、そこから一気に砲弾を押し込み装填する。

 

 

「装填完了」

 

「了解。目標確認する」

 

 

ヴィットマンは前方にある射撃目標を探す。

すると、倒されていた標的が起き上がり姿を表した。

 

 

「前方11時方向に目標視認」

 

「了解」

 

 

カリウスは照準器を覗きながら、足元にある砲塔旋回用のフットペダルを踏み込みながら、指示された目標に砲塔を向ける。

 

 

「目標確認!」

 

 

カリウスは照準器に写りこんだ標的に中心の十字線に目標を合わせる。

 

 

「照準よし!」

 

「撃て!」

 

 

合図と同時に引き金を引く。『バンッ!』と腹に響くような音と共に砲身の先端にあるT字のマズルブレーキの左右から発射煙が吹き出し、90㎜戦車砲から徹甲弾が放たれる。

車内では発射と同時に、砲身が後退し空薬莢が排出され、高熱の薬莢が床に転がる。

 

超音速で飛翔する徹甲弾は、1キロ以上先の標的の中心部を見事貫いた。

 

 

「やった!」

 

「よし!もう一度だ!」

 

 

続けて放たれた徹甲弾も、問題なく目標を撃ち抜いた。

 

 

 

 

 

遠くからその光景を見ていたマイラスとパットンは、61式改が発揮した性能に満足していた。

 

 

「やったな少佐、君達の努力は報われたな」

 

「いいえ将軍、本当に報われるのはこれからです。これらは飽くまでも性能テストですから、実戦でその能力が発揮されれば本当に報われる事になるのです」

 

「そうか。ならその報いに応えられる様、我々本職も努力せねばな。で、61式改の量産は可能かな?」

 

「今の所、我々が保有する61式は全て日本から有料で借りている中古車両なので、今の我々の技術力と工業力では量産は難しいかと。我が国だけでは量産に漕ぎ着けるまでにまだ5年から10年近くは掛かるかと」

 

「しかしそれでは敵との戦争が再開されるまでに数が揃えられないし、いざと言う時に間に合わないのではないのか?」

 

 

パットンの懸念にマイラスは少し声のボリュームを下げて、彼に耳打ちする。

 

 

「実は以前に日本から61式の貸与の話があった時に外務省と政府を通じて先進技術実証室に、61式とは別の戦車の設計図が届いていたのです」

 

「ほぅ……日本から直々とは。その戦車は相当凄い物なのか?」

 

「はい。こちらをご覧ください」

 

 

 

そう言うとマイラスは右手に持っていた鞄から、書類用A4サイズの封筒を取り出し、中身をパットンに渡す。

受け取ったパットンは中身である書類を広げる。

 

 

「…………………これは!?」

 

 

設計図には世界共通語と日本語の2ヶ国表記で『M4中戦車設計概要』と書かれていた。

ページを捲ると、第二次世界大戦で工業大国アメリカが主力戦車として総勢5万両を生産した傑作戦車『M4シャーマン』の設計図が描かれていた。

 

装甲と火力では当時のドイツ軍の戦車には敵わないものの、その信頼性と高い生産性からくる扱い易さと整備性の高さから、数で勝る連合軍の機甲戦力の中核を担ったシャーマンは当時の日本軍からもその性能から恐れられ、沖縄戦や旅順攻防戦で降伏したアメリカ軍から鹵獲した車両を用い、ソ連軍の侵攻を遅らせる事が出来た事からも、その能力の高さから戦後に発足された陸上自衛隊でも鹵獲品とアメリカから購入した車両を長らく使用している。

 

今回、日本が61式よりも旧式のシャーマンの設計図を送ったのも、ムーの工業力と技術力で生産と運用が可能で、グラ・バルカスの主力戦車とも正面から対抗できるその性能と、日本国内に教材として設計図や運用ノウハウが多数残されていたからである。

 

 

「お気に召しましたか?」

 

「凄い!このシャーマンの性能なら只でさえ数が少ない61式の穴埋めも容易だ!少佐、このシャーマンの配備と生産はいつ頃になる?」

 

「そうですね…………試作品も既に完成しテストも最終段階に入って、今は統括軍と財務省が採用に向けての調整に入ってますし、ガラッゾ・オートモービルやリグリエラ・ビサンズ等の国内の主要メーカーも制式採用を見越して今年の始めから内々で生産ラインを整えてますから…………恐らく半年後には」

 

 

 

日本との国交開設による日本企業の進出と技術提携による日本製品とムー製品の需要増加、第2文明圏と第3文明圏への製品輸出の対価である外貨獲得に加えて、グラ・バルカスとの戦争開始による軍事特需が重なり、日本と同様にムーは所謂『バブル景気』に沸いているため、国庫からは金が溢れている状態である。

 

それもあり既にムー政府と統括軍、財務省は5ヶ年計画の一貫としてシャーマンの導入に前向きであり、国内企業も政府と軍からの更なる需要拡大のためシャーマンの生産に向けて、日本の企業の協力により生産ラインの確保がほぼ完了している。

 

 

後は時間の問題である。

 

 

「素晴らしい!第2文明圏での優位を盤石な物に出来るのも夢ではないな」

 

「えぇ。ここで舵取りを誤らなければ、何れは……」

 

 

マイラスは水平線の向こうに沈んでいく夕陽を眺めながら、更なる技術向上を目標に精進しようと誓う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




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