5ヶ年計画による軍備増強と技術力向上は着実に進められつつあった。陸軍では61式の改良やシャーマンの生産準備が進められていく中、陸軍の歩兵レベルでの技術力向上も進められていた。
アイディーン試験場の南エリアには、陸軍の歩兵が使用する銃火器のテストを行う射撃試験場がある。今この場所では、5ヶ年計画の成果の一部と陸軍第101試験・研究中隊が集まっていた。
「総員傾注!」
中隊指揮官の号令で、中隊全員が敬礼しながら前を向く。彼等の目の前に中隊の指揮を勤める『カール・ロバート』大尉と、マイラスがやって来る。
「えぇ、今回諸君達に来て貰ったのは他でもない。5ヶ年計画の事は諸君らも良く知っていると思う。その計画に於ける我が陸軍の歩兵に対する新技術を応用した歩兵新装備開発計画の成果が届いた。諸君らにはその成果を身を以て体験してもらいたい」
中隊長はマイラスに目配せする。
「では皆さん、今回私が室長を勤める先進技術実証室が開発した新装備をお見せしたいと思いますので、暫くお待ちください」
そう言うと側に置かれていた無線機の電源を入れて、マイクに向かって『入ってくれ』と話し掛ける。
すると、試験場入り口から10台程の大型トラックが入ってきた。トラックは試験中隊の目の前で停車し、マイラスの指揮下に居る研究員と作業員が荷台から次々と箱を下ろしていく。
箱の蓋が開けられると、最初に中から出さたのは緑・茶色・黒の3色を基調とした斑点模様で染められた服とズボンで、次に出されたのはムー陸軍で制式採用されているヘルメットとは形状も大きさも異なるヘルメット、最後はムーでも日本から入ってきた新ファッションで知られるようになってきたチョッキと呼ばれる上着だった。
「先ず最初にお見せするのは、この服です」
マイラスは折り畳まれていたその服とズボンを透明の袋から取り出しそれを広げ、試験中隊の全員に見せる。
「これは迷彩服と呼ばれる戦闘服で、この3色模様は我が国の山や森等の景色と同化させるための特殊な色です」
マイラスの説明通り、この服は現代の軍隊なら必ず使用している迷彩服だった。
先進技術実証室では、自衛隊と新アメリカ合衆国軍が使用している迷彩服の有用性に着目し、アメリカ軍が2000年代始め頃まで使用していた旧式のウッドランドパターン迷彩のBDU野戦服をモデルに、ムー国内の森林や草原等の様々な環境に存在する色を独自に研究し、僅か半年で作り上げたのである。
「続いてはこちらのヘルメットです」
続けて紹介されたのは彼等にとっては初めて見る形のヘルメットだった。
「これも日本と新アメリカ軍が使用している戦闘用ヘルメットを基に開発した試作品です。これはアラミド繊維と呼ばれる特殊な製法で作られた強化繊維を使った物で、従来の鉄製ヘルメットと比べ軽量に作られ、行軍、戦闘中に於ける歩兵への負担軽減と機動力向上を可能としています」
これも、日本と新アメリカ軍が使用しているフリッツタイプと呼ばれる戦闘用ヘルメットを基にして作られており、形状もアメリカ軍のPASGTヘルメットとほぼ同じで、使われている材質も日本とアメリカから輸入した技術を基に作られている。
「では次にこちらを紹介します」
そして次にマイラスが手にとったのは、最初に紹介した迷彩服と同じ迷彩が施されたチョッキだった。
「これは防弾チョッキと言い、言葉の通り敵の銃弾から自身の身体を防護するための装具です」
先の迷彩服とヘルメットと同じく、これも日本とアメリカが元居た世界で軍用として広く使用されていた、PASGTベストをコピーした物であり、中に仕込まれているプレートもアラミド繊維で作られている一般的な物である。
「このチョッキにはこのような板が仕込まれており、これも先ほどのヘルメットと同じアラミド繊維で作られた非常に頑丈な物となっています。至近距離で拳銃弾を防御できる性能を持っています。この防弾チョッキの利点は、鉄製の鎧と比べれば非常に軽量な事と、プレートの交換が簡単でプレートが被弾して破損しても直ぐに新しい物と交換する事により再使用可能と言う所です」
マイラスの説明に中隊の隊員達は今一ピンと来ないのか、表情は微妙な感じである。
「では論より証拠、実際にこれらを着用してみてください」
中隊の隊員達へ迷彩服、防弾チョッキ、ヘルメットの順に配られ、一緒に添付された説明書を読みながら中隊の隊員達はそれらを着込んでいく。
「おぉ!」
「本当に軽いや!」
「この防弾チョッキ叩いてみろよ!本当に固いぜ!」
「このヘルメットも、見た目より全然軽い。おまけに余裕もあるから被りやすいな」
隊員達はマイラスの説明が本当だった事に驚き、興奮する。
「では個人装具が行き渡った様なので。次に武器をご紹介しましょう」
続く
皆様からのご意見とご感想お待ちしております