一ヶ月間の試験演習を終えた試験中隊の隊員達は、演習場の待機地点に集まっていた。皆、本当の戦争、それも激戦地から帰ってきた兵士の姿その者であった。
迷彩服とボディーアーマーは支給された時と比べて、土や泥で派手に汚れ黒ずんでしまっているが、破れや糸のほつれは殆ど見られず、破損は殆ど見られない。
だが、試作ライフルとトカレフは違っていた。
様々な環境を想定した場所で激しい戦闘演習に使われたせいか、ライフルは木の部分が傷だらけで、機関部にも僅かながら錆びも浮かんでいる。トカレフも外の塗装が剥がれて地金が見え隠れしており、銃口は発射炎と熱で黒い焦げが浮かんでいる。それ程までに性能テストが過酷を極めた事が伺える。
「ふむ……迷彩服とボディーアーマーは破損は殆ど見られず、性能に問題は無いが、ボディーアーマーを着ている状態だと動きが制限されるか……ライフルは広大な地域での野戦や地上戦では性能は発揮できるが密林や市街地での戦闘では取り回しが悪いか………拳銃も威力と作動性は問題ないがグリップが握り辛く構えにくい………まだまだ問題は多いな」
マイラスは中隊の隊員全員から試作品の使い勝手や使い心地の感想を全て聞いて回り、欠点やトラブルの内容についての報告書を書いている。試作品が予想していたよりトラブルや意外な欠点を抱えていたため、今後の改良に生かそうと報告書作成に必死に取り組む。
「やはり現場の声は頼りになるな。これなら幾分か改良のための必要事項が纏められそうだ」
元から研究熱心なマイラスは、自分の成果を国のために生かそうと必死になっている。それ程までに彼の熱意が凄まじいのが分かる。
「皆さん、ありがとうございました!あなた方のご協力のお陰で、何とか改良の余地がある事が分かりました。皆さんのご意見を今後の改良に生かし、より良い武器に仕上げていきますので……」
マイラスが皆に礼の言葉を述べていると、統括軍本部からの連絡係が慌てた様子でやって来た。
「統括軍本部より緊急連絡です!バルクルス方面のレイフォルとの国境地帯の敵地上部隊に動きがあり!全軍警戒せよとの事です!」
突然の報告に皆の表情が変わった。
「我々について本部からの指示は?」
「別命あるまで出撃準備を整えて待機せよとの事です」
待機せよとの言葉にマイラスと中隊長は互いに顔を合わせて、首を縦に振る。
「分かりました!中隊長」
マイラスの言葉に中隊長は全隊員に声を掛ける。
「そうだな………各隊の指揮官は隊員の体調と意思確認し報告せよ!」
中隊長の命令で、各小隊長が指揮下の隊員の体調と意思確認を行い、中隊長に報告する。
「各小隊、体調不良者無し!全員行けます!」
「よし!マイラス少佐、我が中隊は何時でも出撃可能です!」
「分かりました。私も同行します!」
「了解!では、直ぐに全隊員と装備を整えてバルクルス方面に向かいましょう!」
「ではこちらも、例のアレを用意させます!」
試験中隊は装備を整えて出撃準備に入り、マイラス達は試験場の一角に設けられた格納庫へと向かい"例のアレ"を取りに向かった。
そして1時間後、試験場前にあるバルクルス方面行きの貨物駅に装備を整えた試験中隊が兵員輸送用車両に乗り込み、先進技術実証室の研究員達は重重量用貨物車両に先月からアイディーン試験場でテストを繰り返していた61式改のプロトタイプ3両と、試験場に持ち込まれていたテスト用の60式装甲車やジープが積み込まれていた。
「まさかいきなり出撃とはな」
ヴィットマンは突然下された緊急招集と出撃命令に戸惑いを隠せないでいたが、自分達が乗り込む61式改の性能を生かす場に立ち会える事に興奮もしていた。
「戦車、積み込み完了しました」
「了解。じゃあ俺達も行くか」
61式改と車両を積み込み、ヴィットマン達も車両に乗り込む。
「中隊長、統括軍本部より出撃せよとの命令が来ました」
「了解。出してくれ」
彼等を乗せた貨物列車は煙を吐きながら、駅を出発しバルクルス方面へと走っていった。
続く
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