日本国召喚×不沈戦艦紀伊   作:明日をユメミル

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閑話休題:5-14

バルクルス基地の北に設けられたムーの防衛陣地では、基地駐留部隊と試験中隊の兵士、そして両部隊が保有する61式戦車と60式装甲車、60式自走無反動砲が塹壕に身を隠しながら、北の地平線を睨む。

 

 

偽装網で巧妙に隠された各部隊は、敵が見えるのを今か今かと待ち受ける。

 

 

 

『こちら偵察1、敵地上部隊を視認!』

 

 

前線の偵察部隊から敵発見の通信が本部に入る。

 

 

「大将、偵察部隊が敵を発見しました!」

 

「よし!各隊に戦闘態勢に入るよう指示を出せ!」

 

 

本部からの指示が各部隊に伝達される。

 

 

『地面が3分に敵が7分!地面が3分に敵が7分!』

 

 

敵発見を意味する符号が伝えられ、各部隊は銃砲火器に実弾を装填する。

 

 

「来た!」

 

 

後方の基地駐留部隊所属の61式戦車の車長が車長席にあるステレオ式測距儀を使い、眩しい夕日に照らされた地平線の向こうから、大量の土煙が上がるのを確認した。

 

 

「全車、砲撃用意!」

 

 

全ての61式戦車が敵部隊に向けて照準を合わせる。

 

 

「俺達もやるぞ」

 

 

ヴィットマン達の61式改も、夜間用の暗視装置を使い敵に照準を合わせる。

 

 

「各隊、射撃用意!」

 

 

歩兵部隊と試験中隊は手にしていたライフルと機関銃を構える。

 

 

「まだだ……まだ撃つな」

 

 

各部隊は有効射程距離ギリギリまで敵を引き付けるため、引き金に指を掛けながら合図が来るのを待つ。

 

 

「照明弾、発射!」

 

 

本部からの指示で、迫撃砲部隊が照明弾を打ち上げる。

打ち上げられた照明弾が、空中で破裂し、化学反応により真っ白な光が辺りを照らし出す。

 

 

 

「見えた!射撃用意…………撃てぇ!」

 

 

 

合図と同時に最初の一撃を基地内で待機していた、野砲部隊の装備する日本から輸入した155㎜りゅう弾砲M1と105㎜りゅう弾砲M2A1が砲撃を開始した。

 

 

『弾着……………今っ!』

 

 

観測班からの無線報告と同時に、地平線に大量の爆炎が上がった。

 

 

『初弾、目標前方50に命中!』

 

 

初弾は敵部隊の前方50メートルの地点に着弾し、敵部隊の前進速度が落ちた。

 

 

『敵部隊、前進速度低下』

 

「了解!照準修正!」

 

 

野砲部隊は観測班からの報告を基に諸元修正を行い、再砲撃の準備を行う。

 

 

「各砲装填よし!」

 

「撃て!」

 

 

再び一斉砲撃が始まる。

 

 

『弾着……今!』

 

 

2斉射目は、敵部隊の直上から降り注ぎ、戦車や装甲車を横転させ、歩兵を吹き飛ばした。

 

 

『全弾、敵部隊に命中!敵被害甚大!』

 

「やったぞ!このまま、砲撃を続行!」

 

 

自信をつけた野砲部隊は、訓練通り砲弾を砲に素早く装填し、砲撃を続行する。

1分から2分おきに行われる砲撃に、敵部隊は大混乱に陥る。

グラ・バルカス帝国軍は、バルクルス基地には第4機甲師団や第3師団を壊滅させた日本の自衛隊はおらず、自分達よりも何世代前の砲火器を装備したムー軍しか居ないと言う情報と、レイフォリア防衛の兼ね合いから、当初投入予定だった陸軍1個師団の派遣を見送り、1個連隊が送り込まれた。

 

 

だがその判断がこの時点で間違いだった事は彼等には予想できなかった。

ムーに於けるグラ・バルカス帝国の情報網はカルトアルパスでの宣戦布告以降、ムーの諜報組織による取り締まりと防諜態勢の強化により急激に狭まっており、彼等はムーが日本から兵器を輸入しているとの情報を得ていたものの、その性能と数までは把握出来ていなかった。

 

 

その結果が、彼等の運命を大きく揺さぶっていた。

 

 

 

『こちら観測班、敵部隊被害甚大!前進完全停止を確認!』

 

「了解!これより攻勢に出る!戦車隊、攻撃開始!」

 

 

野砲部隊による砲撃が終わると同時に、掩体壕に隠れていた61式戦車がエンジンを始動させる。

 

 

『指揮車より全車、前進!前へ!』

 

 

指揮車両からの指示で、基地駐留部隊の61式戦車1個小隊6両が掩体壕から飛び出し、敵部隊に向けて突撃を開始した。

 

 

「小隊各車、砲撃用意!弾種榴弾!日頃の訓練の成果を見せてやれ!」

 

 

戦車第1小隊は全速力を以て、変則的に駆け回りながら敵部隊へ接近する。

第1小隊の後方を第2と第3小隊が続き、更にその後ろを試験中隊の61式改3両で編成された特任小隊が続く。

 

 

「敵戦車視認!各個に砲撃!」

 

 

各小隊の61式はその場で停止と同時に90㎜戦車砲から榴弾を撃ち出した。

放たれた十数発の90㎜弾はシェイファーとハウンドの各戦車や装甲車を破壊していき、逸れた砲弾は地面で破裂し歩兵を吹き飛ばす。

 

 

『クソ!舐めやがって!』

 

『撃て!撃ち返せ!』

 

 

お返しと言わんばかりに、シェイファーとハウンドが応戦するが、61式は砲撃した瞬間にその場から素早く移動し続けるため、中々思うように当てる事が出来ない。

 

 

「主砲、発射!」

 

 

後方に居た61式改も前進しながら、砲撃を行う。

 

 

「まるで的だな」

 

 

ヴィットマンが指揮する61式改1号車の砲手カリウスは、砲を当てようと動きを止めているシェイファーを天才的な腕を以て次々と仕留めていく。

 

 

「こっちは防御力に不安が無いし、他の連中のように動き回る必要が無いから楽だな」

 

 

バルクマンもアクセルを踏み続け、ギアを徐々に上げて加速させていく。

オリジナルの61式と違って防御力に不安が少ない61式改は他の61式を押し退けるように前進を続ける。

 

 

「前方敵中戦車、撃て!」

 

 

またもや1両のシェイファーを撃破する1号車。

 

 

「ん?」

 

 

ふと前を見ると、1両の61式が砲撃で履帯を破壊され擱坐しており、そこを5両のシェイファーとハウンドが取り囲んでいる。既にエンジンから煙が出ており、砲塔も旋回できなくなっているのか全く動いておらず、車長がキューポラから身を乗り出して重機関銃で応戦している有り様だった。

 

 

「不味い!前方の友軍車両を援護!カリウス、敵中戦車を優先に攻撃!」

 

「了解!」

 

 

ヴィットマンは動けなくなった61式の援護に回ように指示を出す。だがその間にシェイファーとハウンドからの砲撃により、穴だらけにされていく。

 

 

「撃て!」

 

 

放たれた砲弾が61式を砲撃しようとしていたハウンドを吹き飛ばす。

 

 

「次!」

 

 

続けて、左のハウンドを砲撃し撃破する。敵方も1号車の存在に気がついたのか、砲塔を向けてくる。

 

 

「遅い!」

 

 

カリウスはまた引き金を引き、また1両を破壊した。

 

 

「邪魔だ!どけ!」

 

 

バルクマンは目の前で慌てて逃げようとするシェイファーには構わず速度を落とさず、車体を進ませる。

 

 

「うおっ!」

 

 

乗員が逃げ出す暇もなく、1号車の車体はシェイファーを踏み潰すように乗り上げ、履帯が車体と砲塔の薄い装甲を削り、変形させ、爆発反応装甲により重量が増した1号車の車体により乗員ごと潰されてしまった。

シェイファーを始末した1号車は動けなくなった61式の側で停止し、ヴィットマンはキューポラから飛び出した。

 

 

「大丈夫か?」

 

 

擱坐した61式の砲塔によじ登り、キューポラから機銃を構えていた車長に呼び掛ける。

 

 

「あ………あぁ…………」

 

 

機銃の引き金を握ったままの、車長は体に銃弾を数発受けており、軍服から血が染み出していた。

 

 

「お……俺はいい………中の2人を……」

 

「分かった!」

 

 

ヴィットマンは車長をキューポラから引き出して、砲塔を降りて地面に寝かせてから、再び砲塔によじ登り中を見た。

 

 

 

「クソ!」

 

 

砲塔内では砲手が死んでるのか気絶しているのか頭から血を流して項垂れており、後の装填手は敵弾が着弾した時の衝撃で砲弾を落としたのか両足に砲弾がのし掛かり変な方向に曲がってしまっている。

 

 

 

「ヴォル、バルクマン!手伝ってくれ!」

 

 

 

ヴィットマンはヴォルとバルクマンを呼び出し、砲塔内に居た2人を引き摺り出す。

 

 

その時………

 

 

「前方敵戦車、歩兵接近!」

 

 

バルクマンの報告に前方を見ると、1両のシェイファーが全速力で向かってきている。その後ろを敵歩兵が向かってくる。

 

 

「やらせるか!」

 

 

ヴィットマンは擱坐した61式の車内から機銃弾が入った弾薬箱を取り出し、弾切れとなった重機関銃に再装填すると、シェイファーに向け蝶板型のトリガーを押し込み射撃を始める。

 

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

 

鑿岩機のような発射音と共に放たれる12・7㎜弾が、シェイファーの薄い前面装甲を貫通し、車内の乗員ごと死傷させる。やがてシェイファーは動かなくなった。

 

 

「邪魔だぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

シェイファーの後ろから出てきた歩兵に向けて銃口を向けて再び射撃を始める。

軽装甲車を撃破可能な威力を持つガエタン重機関銃の元になったブローニングM2の破壊力は、人体に命中すれば四肢は激しく破壊され、胴体を真っ二つにさせる程の威力がある。

 

 

 

「ギャァ!」

 

「う、腕がぁ!」

 

 

12・7㎜弾を受けた帝国兵は文字通りバラバラになり、手足が千切れ、体は激しく破壊され、内臓が飛び出したりして、その痛みに地面で叫び声をあげてのたうち回る。

 

 

 

「逃げろ!逃げるんだ!後退!後退!後退!」

 

 

 

帝国兵は脅威と感じたのか手にしていた武器を捨てて、慌てて逃げていくが、ヴィットマンは後退していく彼等にも重機関銃を撃ち込んでいく。

やがて弾切れとなり、ヴィットマンは引き金から手を退けた。

 

 

 

「やった……」

 

 

敵が居なくなったのを確認し、ヴィットマンは残されていた操縦手を助け出し、駆け付けた衛生兵と共に手当てを行う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




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