中央山脈へ向けて進撃しているロウリア人民軍クワトイネ侵攻部隊の前衛を勤めるおよそ10000の兵力を持つ前衛部隊は防御力に特化した重装歩兵を先頭に鏃のような隊列を組み、出せる限りの速度で前進していた。
「見えたぞ!中央山脈だ!」
彼等の視線の先には勾配が急の中央山脈が見える。彼等の目的は後方の本隊が橋頭堡と指定した中央山脈を確保する事である。
「よし!このまま一直線で進め!」
前衛部隊を率いる人民軍の将校らしき男が叫ぶ。
ウォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!
全員が雄叫びをあげながら中央山脈目掛けて突撃を開始した。皆、回りには目も向けずただ中央山脈を見続ける。
その時、罠が発動した。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
斜面を上ろうとした時、突然地面が沈み混んだ。その瞬間地面に大穴が開き、その場にいた重歩兵は穴へと落ちていった。
「なんだ!?」
突然地面に横に広がるように空いた幅の広い穴に落ち込んだ重歩兵達。誰かが穴に近づき下を見る。
「うわぁ!」
穴の中には多数の槍や剣が突き立てられ、重歩兵はそれらに体を無惨にも貫かれて、血を流していた。
「罠だ!気を付けろ!」
冷静な指揮官が注意を促す。
「渡り梯子を用意だ!」
こうなる事を予想していた前衛部隊は予め長い渡り梯子を用意しており、奥の地面まで届く長い梯子を敷いた。
「渡れ!」
梯子の上を慎重に渡る南軍。
頑丈に作られているため、一気に多くの兵士が渡る事が出来た。
「罠に注意しつつ、上がれ!」
地面に罠が仕掛けられていないか今度は慎重に進む。
「それにしてもやけに鼻にくる臭いがしないか?」
地面は何故かやたら湿っている。しかも何処からか強烈な異臭が漂っており、彼等はその匂いの正体が分からなかった。
うっかり地面を触ってしまった兵士は急いで手を布で拭くが、匂いがキツイのか中々綺麗に取れなかった。
「うぇ…気分が悪い……」
「おぇぇ………」
中には、その臭いに耐えられなかったのか体調不良を訴える者も出始める。
「結構効いてるみたいですね」
その様子を山頂から見ていたサイトモ達は、ガスマスクを付けながら仕掛けた罠の効果を確認していた。
「まさかガソリンをこんな事に……でも本当に大丈夫なんでしょうか?」
「何が?」
「用意したガソリンってクイラのパイプラインから……」
「クイラには有り余る程の石油が眠ってるんだ。少しくらいちょろまかしてもばれやしないさ。それにあれは油だ。燃やしてしまえば殆ど残らない」
「山火事にならないでしょうか?」
「むしろ好都合だ。山火事になれば敵はそうそう前には進めないから時間稼ぎにはなる」
黒い笑みを浮かべながらサイトモは次の指示を出す。
「次の指示だ。奴等をバーベキューにしてやれ」
その合図と共に、山頂の警備隊員は用意されていた樽の蓋から伸びる導火線に火をつけると、樽を次々と山頂から落とした。
斜面を転がる樽はガソリンが撒かれた地点へと近づいていく。
「何だあれは!全員ここから離れろ!」
転がってくる樽に危機感を覚えた南軍兵士達は慌ててその場から逃げ出す。
樽が彼等の目の前に迫った瞬間、樽は突然爆発を起こした。爆発で発生した火は気化していたガソリンに引火して大爆発を起こし、辺り一帯を一瞬のうちに高熱の炎が包み込む。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!火がぁぁ火がぁぁ!」
「誰か消してくれ早く!」
「アチイぃぃぃ!!」
轟々と燃え上がる炎はガソリンまみれになっていた南軍兵の体を焼き、辺りの酸素を奪い尽くして窒息させる。さらにはどす黒い煙が風に乗って前衛部隊にも流れる。
「ゲホッ!ゲホッ!」
「クソ!何も見えん!」
「下がれ!これでは何も出来んぞ!」
前衛部隊はガソリンが燃える煙にやられ、後退していった。
「成功だ!」
「やったぞぉぉぉぉぉぉ!」
警備隊は後退していく南軍を見て歓喜する。
「これで時間に余裕が出来たな」
「えぇ。これで次に備えられますね」
未だに燃え続ける炎と黒い煙を見ながらサイトモの表情は少し強張っていた。
続く
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