首都オタハイトの中央行政区域にはムーの各省庁が集まる官庁街がある。その官庁街の中に首都圏の治安と警察活動を行う警視庁の本庁舎がある。
レンガ造りのその庁舎は、日本の警視庁旧庁舎と似ておりその中には日本の警察と同様に様々な部署がある。
その中でも警視庁のイメージアップや犯罪防止のための啓発活動、関連イベント等を担当する広報科がある広報室では、ある事案について会議が行われていた。
「えぇ……毎年恒例の警視庁観閲式開催まで一週間を切った訳ですが、今年の観閲式は例年と違い日本とアメリカ、更にはミリシアルとエモールからの代表が出席するという、非常に大規模なものとなり。恐らく警視庁始まって以来の規模になるのは間違いありません」
広報科を纏める広報室長の言葉に会議に出席していた各部署の幹部達の表情は固かった。
「既に観閲式に向けての準備は各部署とも順調に進められてきたと思いますが、観閲式の開催にあたり懸念事項が出てきました。それに関して公安部から報告をお願いします」
室長に代わり、黒一色のスーツを着こなした幹部が立ち上がる。
「公安部のドロスです。今回の観閲式に関して、我々が掴んでいる情報から気になる点がでてきましたので報告させて頂きます。実はつい数日程前、例のグループが、観閲式の当日に重大な破壊工作が行うかもしれないと言う情報を掴んだのです」
ドロスからの報告に会議室はざわめく。
「しかし連中……ムー解放運動は最近動きが活発だとは聞いてはいるが、今の彼等は全盛期よりも規模が小さくなって、表だって活動できる程の規模では無くなってるのでは?」
「実はここ数年で、急速に勢力を拡大してる様で、情報では彼等は非合法で入手した銃火器や爆発物を多数抱え込んでいる様です」
「それらの銃火器は何処から流れたんだ?」
「今判明している時点で、彼等のシンパである民間の銃砲店や民間の工場で密造したものが中心の様です」
「密造品でも銃は銃だからな……無視は出来んな」
「えぇ、公安からは彼等の監視態勢を強化すると共に、観閲式の警備体制の強化又は見直しを提案します」
公安からの提案に皆、微妙な表情となる。
「観閲式まではもう一週間を切ってるんだ。不可能では無いが今さら警備態勢の変更となると、混乱を招く可能性もある」
「公安部からの報告を疑う訳ではないが、彼等が本当に観閲式に向けて動くと言う確実な保証はあるのか?動く保証が無いのにイタズラに警備態勢の見直しをしては式の進行に支障を招くぞ」
「ですが、事が起こってからでは遅いです。備える事に越した事はありません。警備部としては指揮下にある当日の式には参加しない機動隊を総動員して万が一に備えれるように何時でも待機できる態勢であります」
「我々交通部隊も周辺地域の幹線道路のパトロール強化を行い万が一に備えます」
「オタハイト全区域の派出所と交番にも担当区域のパトロール強化を通達し、最大限の努力を行います」
警備態勢の見直しについての会議はその日の夜遅くまで続き、話し合いの結果、警備態勢の強化と見直しが決定された。
続く
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