敵の攻撃を何とか凌いだ国境警備隊。クイラからクワトイネ本国に繋がっているパイプラインから失敬したガソリンを活用した周到なトラップが功を奏し、南軍は一時撤退し、時間的余裕が出来た。
当初の予定通り第1機動旅団は国境警備隊との合流を果たし、敵が来ない今のうちに戦闘態勢を整えていた。
「しかし派手にやりましたな」
モーチはガソリン攻撃で真っ黒になった斜面麓の地面と、まだ燃え続けている枯れ木や草から出ている煙と火を見ながらサイトモにそう言った。
「臨機応変。使えるものは何でも使うのが戦場でしょ?現に時間稼ぎも出来て準備にも余裕がある。言う事無しじゃないですか」
「確かに」
回りを見ると第1機動旅団の工兵部隊は国境警備隊と共に、本格的な防衛陣地を構築と強化を行っていた。塹壕の数を増やし機銃や歩兵の増備、有刺鉄線の設置、新たなトラップの敷設、監視装置の設置が行われていた。無論、数で勝る敵への対処のため国産の迫撃砲やこれまた日本から供与された旧式の榴弾砲用の陣地も構築され、攻守ともに着実に強化されていく。
「敵は次に何時来るでしょうか?」
「第1次攻撃が失敗しましたから、次は夜襲でしょう。どう動くかは偵察隊からの報告待ちだ」
モーチは此処に到着したと同時に偵察部隊を編成し、深部偵察を行わせ敵の動きを逐一報告するように命令している。
「そう言えば、上はどんな感じですか?」
「師団本部か?」
「いえ、政府の事です」
「師団長の話だと、政府は緊急対策会議で日本へ援軍要請を決定したそうだ」
「援軍ですか?」
「あぁ。しかも日本だけじゃない。今日にもクイラと共同声明を出して、アルタラス、フェン、シオス、カルアミーク、トーパ、ガハラへも要請をするようだ」
「第3文明圏の有力国勢揃いですな。パーパルディアには要請を出していない様ですが」
「あの国はまだ日本との戦争の尾を引いてるし、壊滅した軍の建て直しが進んでいないから政府は援軍要請を出さないみたいだ」
「成る程。もしそれらの国家が集まれば史上希に見る、連合軍が出来ますな。さながら第3文明圏国家連合軍………国連軍とも言うべきなのか?」
その日の正午前……
マイハークにある魔導通信送信所からクワトイネ各地にある魔導通信中継局を通じて、各家庭内に設置されている魔導音声告知機に政府からの重要報告放送が告知され、国民は何事かと告知機の前に集まる。
『間も無く12時00分をお伝えします』
告知機から時報が流れ、カウントダウンを知らせる電子音が鳴り、12時を指した瞬間『ピーン』と鳴り響く。それと同時に政府からの緊急声明発表を知らせるオルゴール曲が鳴る。
『こちらは政府広報です。これより首相閣下ならびにクイラ王国国王陛下による共同声明を発表致します』
政府広報室による公式放送が始まる。キャスターの声から一呼吸置いて、スピーカーからカナタの声が聞こえてきた。
『国民の皆様、クワトイネ公国首相カナタです。国民の皆様に置かれましては本日の臨時ニュースでもご存知の通り、我が国とクイラ王国とロウリア民国の3国は、ロウリアの南半分を支配下に置くロウリア人民共和国による宣戦布告無しの一方的な侵略行為を受け戦闘状態に突入しました。ロデニウス大陸全体の恒久平和を願う我が国はクイラ王国とロウリア民国と共にロウリア人民共和国軍の侵略行為を絶対に許容する訳には参りません。そこで我が国を含めた3国は共同で日本、フェン、アルタラス、シオス、ガハラ、カルアミーク、トーパを含めた第3文明圏国家へ援軍要請を行う事を決定いたしました』
カナタの言葉に国民は驚いた。
『つきまして国民の皆様には、デマ情報に惑わされず落ち着いた冷静な行動をお願いすると共に、各自治体の指示に従って行動していただくようお願いします』
この瞬間、クワトイネ国民は戦争が自分の間近に近づいている事を改めて認識し行動を開始した。
各自治体からの指示が来るのを待ったり、中には遠方の親戚や友人を頼り避難したりする等様々な行動をとった。
続く
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