中央山脈に設けられた防衛戦線では、南軍の侵攻に備えて準備が整っていた。既に夕方から夜に掛けて暗くなる時間のため夕日は西の空に沈み、空は薄暗くなっている。
「さて、準備は整った。後は敵の出方次第か」
山頂から敵軍の侵攻を監視していた警備隊は臨戦態勢を維持していた。既にク・ボタから第3師団の本隊が向かってきている。本隊が到着すれば此処はクワトイネに於ける大防衛線になりえる。
クワトイネがクイラとロウリア民国と共同で出した援軍要請で、国連軍が編成されクワトイネとロウリア民国へ到着するのは準備や調整に掛かる時間から考えると、グラ・バルカスとの戦争による臨戦態勢を整えている日本とアメリカが先に到着するのが容易に予想でき、他の国は海上輸送能力から考えて恐らく1週間と少しは掛かると予想される。
ロデニウス大陸に於ける農業や資源を重要視している日本とアメリカは邦人保護を名目に援軍要請に真っ先に応えている。グラ・バルカスとの戦争中のため出せる戦力は限りがあるものの、新生アメリカ合衆国軍と合わせればロウリア人民軍相手には非常に有効打になる。先のロデニウス戦争でロウリアには日本の自衛隊に対する恐怖心があると考えれば、心理的にもかなりアドバンテージが得られる。
クワトイネ軍は国連軍到着まで戦線を支えなければならないため、最前線に立つ第3師団の兵士達の士気は非常に高い。
「旅団長!」
モーチの元に伝令兵がやって来た。
「深部偵察隊からの報告あり。後退していた南軍が再び行動を起こしたとの事です」
「来たか。総員戦闘配置!」
薄暗い中、第1機動旅団の兵士達はライフル、機関銃、迫撃砲、榴弾砲に弾薬を装填していき、攻撃態勢に入る。
「旅団長、各部隊攻撃態勢に入りました」
「現状で待機」
薄暗い中、肉眼で敵を視認するのは難しいため第1機動旅団の兵士達は配備されたばかりの夜間暗視装置を起動させる。クワトイネの技術では暗視装置は製造できないため、日本とアメリカから輸入しているのだが技術流出防止法に引っ掛かる事から輸入されていたのは第1世代と呼ばれる一番初期の大型の物で、主に地面に設置して使う監視用の物である。
専門の訓練を受けた監視兵は暗視装置をバッテリーと接続させ電源を入れると、箱型の装置に3脚を取り付けて地面に据え、パッシブモードとアクティブモードにしてから敵が向かってくる方向に向けるとレンズを覗き込む。赤外線照射式アクティブモードと、相手が放つ熱を捉えるパッシブモードを併用しながら敵を捜索する。
「見えた」
ふと、監視兵が麓の奥にある森から多数の熱源をパッシブモードで捕捉した。
「連中、こっちが気付いてないと思ってやがる。身を隠すような素振りが見えないな」
「まぁ、あちらさんは暗視装置なんて知りもしないだろうさ。旅団長に報告」
監視兵達は直ぐ様モーチに報告する。
「流石は暗視装置サマサマだな。これなら夜襲に怯える心配は無いな。榴弾砲は敵が射程距離に入り次第、砲撃を開始せよ」
モーチの指示で、後方に控えていたM101 105ミリ榴弾砲を装備した榴弾砲部隊が砲身を上に向け観測部隊からの情報を基に射角を合わせ、装填手達も次弾と装薬を抱えながら発射後の次弾装填に合わせる。
「各砲射撃用意!」
砲撃指揮官の声で、砲のトリガーを握る砲撃手の指に力が入っていく。
「砲撃開始!」
指揮官が手を振り降ろした瞬間、十数門の榴弾砲がドンッ!と火を吹いた。
続く
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