行進を開始した警視庁の新設部隊は国道沿いに集まっている大勢の市民の歓声を受けながら、順調に目的地へ向けて行進していく。
市民達の注意が観閲行進に向けられる中、周辺の警備を担当する第6~第9機動隊と警邏中の警官達はムー解放運動による破壊工作に備えていた。
「観閲式か~………俺も出たかったな」
周辺をパトロールしていたマイカル3丁目交番の『ラリー』巡査は自転車に跨がりながら、羨ましそうにパレードを見ていた。
「まぁ、俺みたいなヒラの警官には無理な話か」
ラリーは辺りを見回しながら、国道から徐々に町の奥へと入っていく。
「静かだな」
奥へ入ると宅地開発で日本式の最新住宅が立ち並ぶ閑静な住宅街へと入る。今回の観閲式に誰もいないのか、何処の家からも声や音は聞こえてこない。
「ん?」
少し進むと、路地裏に一台の日本製の軽トラが止まっていた。しかしその軽トラは荷台にブルーシートに覆われ、ナンバープレートが取り外されている。
不審に思ったラリーは自転車から降りて、片手にライトを持ちながら軽トラを調べる。
「タイヤはまだ新しい……ここに来てからそう時間は経ってないか」
軽トラのタイヤはまだ新しく、地面に残っているタイヤ痕も新しい事からまだ此処に停められてからそう時間は経っていないのが分かる。
念のため、荷台に何が積んであるのか確認するため、ブルーシートを剥がす。
「これは……」
荷台には水道管などに使われる灰色の太いパイプが鉄製の固定台により東に向けられており、その回りには明らかに砲弾の形をした塊が転がっている。
パイプの底には爆弾や花火の点火に使われる原始的な導火線が延びており、ラリーは直感的に危険物だと判断した。
「何で東を向いて………」
目の前のパイプが東を向いているのが気になり、懐から周辺地図を取り出し、現在位置から東へ向けて指をなぞる。すると、その先にとんでもない所へ行き着いた。
「おいおいおいおい………この先って王城前広場じゃないか!まさかこれは、ムー解放運動の連中が仕掛けたって言うのか!?だとしたら、直ぐに応援を」
ラリーは無線機で直ぐに応援を呼ぼうと、トランシーバーのスイッチを入れる。
「こちら3丁目地区警邏、当該地区の1136の路地裏にて不審車両を発見……」
その瞬間、ラリーの後頭部に強い衝撃が走った。
「グっ!」
ラリーは一瞬、頭全体に走った強烈な痛みにより意識が薄れていくのを感じる。地面に倒れると目の前に、2人の人間が現れる。
「やベェ、サツに見られたぜ。どうするよ?」
「無線は破壊しとけ。コイツは縛りあげて、そこに置いとけ。計画通りに行くぞ」
そんな会話が聞こえてくる。ラリーは目の前の二人が犯人であると悟ったが、最早意識は切れる寸前であり何もできない。
(コイツらが………犯人か…………)
その直後、ラリーは意識を失った。
続く
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