日本国召喚×不沈戦艦紀伊   作:明日をユメミル

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第7話

山頂のM101 105ミリ榴弾砲から放たれた十数発の榴弾は弾道飛行で飛翔し、闇夜に紛れて迫ってきていた南軍地上部隊へと降り注いだ。

 

 

「うわぁっ!何なんだ!」

 

 

空中で爆発した榴弾の爆発による衝撃で兵士達を吹き飛ばし、破片が鎧を貫き兵士の肉体に大きな傷をつける。

 

 

「足がぁぁぁぁ!」

 

「腕………腕がねぇぞ!」

 

「クソ!奴等に俺達は見えてない筈だろ!」

 

 

 

南軍兵士達は突然の攻撃でパニックになる。

そんな南軍に向けて再び、砲撃が加えられ、更に多くの兵士が死傷する。

 

 

 

 

「撃て!」

 

 

山頂の榴弾砲部隊は砲弾の装填と発射を繰り返しながら、砲撃を続ける。撃つ度に腹に響くような轟音と衝撃波が伝わり、砲撃手はそれに耐えながら訓練通りに砲撃を続ける。

放たれた砲弾の爆発は塹壕に居た兵士達からも見えており、爆発による光と衝撃波からその破壊力が肌で感じている。

 

 

「スゲェ………」

 

「連中が可哀想だな。こんな事しなければ死なずに済んだのにな」

 

 

クワトイネ兵も暗闇の向こうに見える爆発の光を見て、それに吹き飛ばされ戦死していく南軍兵士を哀れむ。

 

 

 

その一方で深部偵察部隊と監視兵は南軍兵士の被害状況を確認していく

 

 

 

「100……200………300……400……500………敵の被害は甚大、砲撃の効果あり」

 

 

監視兵達は魔導通信機を使い、情報を逐一報告する。

榴弾砲の効果は非常に高く、南軍兵士達は未知の攻撃を前にして何も出来なかった。

しかし榴弾砲は十数門しか無いのと、連続砲撃により砲身が加熱してしまった事もあり砲身冷却と砲弾の補充のため30分間続いた砲撃は停止された。

 

 

「さて次の段階に行こう」

 

 

モーチは次なる一手を打つ。

 

 

「迫撃砲の用意はどうだ?」

 

「何時でも」

 

「よろしい」

 

 

榴弾砲の穴埋めとして迫撃砲による砲撃の準備が行われる。公国軍に配備された迫撃砲は日本から提供された64式81ミリ迫撃砲のみであるが火力と射程距離は充分である。

 

 

「敵の動きはどうだ?」

 

「だいぶ混乱してるみたいですね。警戒して動こうとしません……………ん?」

 

 

暗視装置を使っていた監視兵が何かに気がつく。彼が見たのは衝撃的な光景だった。

 

 

「どうした?」

 

「旅団長、敵の指揮官らしき騎士が味方を切り殺してます」

 

「味方を?」

 

「えぇ。下っ端の兵を片っ端から……」

 

 

モーチは暗視装置を覗き込む。

確かに、南軍兵士がやけに高級そうな鎧で身を固めた騎士数人に首を刎ねられているのが見えた。

 

 

「あれが情報にあった南の督戦隊だな。確か名前は……」

 

「人民内務委員でしたっけ?」

 

「それだ。人民内務委員って大層な肩書きしてるが、実際は只の督戦隊だな。前のロウリア軍にあった督戦隊の集まりだからな」

 

 

モーチの言う旧ロウリア軍にも督戦隊が存在しており、ロウリア軍内ではその気になれば味方兵士や一般人すら殺しかねないその残虐性から『死神』と恐れられていた。2年前の戦争で督戦隊は解散させられたが、大半の督戦隊の兵士は南に逃れており、現在は『ロウリア人民共和国人民内務委員』とう肩書きで共和国内務委員会という組織の傘下で引き続き督戦隊として活動している。

しかしここ2年の間に人民内務委員に殺された人は数万に到達すると言われており、共和国内の不穏分子や他国のスパイと疑われた者をその家族や親類ごと処刑するなど、旧ロウリア軍時代よりも残虐性が増しており、例えるならかつての旧ソ連の内務人民委員部NKVD、ドイツの秘密警察ゲシュタポのような組織と思えば良い。

 

 

 

「反吐が出る………連中には常識なんて通用しないからあんな事が出来るんだろうな」

 

「愛国心もそこまで行くともう狂気ですね」

 

 

人民内務委員による南軍兵士の処刑は続き、彼等の気迫に押されたのか動きを止めていた南軍兵士達は立ち上がって、再び前進していく。

 

 

「敵、動き出しました」

 

「迷惑な連中だ。迫撃砲用意」

 

 

迫撃砲部隊が迫撃砲の砲口に砲弾をセットし半装填で待機する。

 

 

「射撃用意………撃て!」

 

 

その合図で砲弾を握っていた手が離され砲弾は砲内に落ちる。その直後、何処となく気が抜けるような音と共に砲弾が撃ち出された。

 

 

「弾着……今!」

 

 

放たれた81ミリの砲弾は地面へと落ち、爆発を起こした。榴弾砲よりは破壊力は落ちるが、亀甲隊形と言う兵士が1ヵ所に集まる集中隊形を組んでいた南軍兵士達が纏めて吹き飛ばされる。

 

 

「撃ち続けろ!」

 

 

迫撃砲部隊の兵士達は砲口から砲弾を次々と装填していき、次々と連続して撃ち出していく。榴弾砲と違い発射速度が速いため、榴弾砲よりも多くの砲弾が南軍兵士達に襲いかかる。

爆発する度に兵士が吹き飛び、衝撃で引き千切れた手足などが地面に散乱する。それでも南軍兵士達は人民内務委員が怖いのか、恐怖に怯えながらも果敢に突撃を仕掛けて来る。

 

 

「しぶといな。やっぱりあの督戦隊が急かしてるんだな。戻る事が出来ないから前に進むしかないんだな」

 

「どうします?」

 

「………………………榴弾砲部隊の状況は?」

 

「砲身の冷却と砲弾の補充は間も無く終わります」

 

「砲撃可能な砲は直ちに砲撃用意を急げ。観測班にあの死神共が籠っている位置を知らせるように指示を」

 

 

モーチは南軍の進撃を止めるため、後方から監視している人民内務委員達が居る場所を榴弾砲の砲撃で吹き飛ばし、彼等を後退させる作戦をとる。

観測班からの情報は直ちに榴弾砲部隊へと送られ、砲身の冷却が完了していた数門の砲に砲弾が装填される。

 

 

「砲撃準備完了!」

 

「一斉砲撃、撃て!」

 

 

モーチの合図で数門の榴弾砲が同時に火を吹いた。放たれた砲弾は進撃していた南軍兵士達の上空を通り過ぎ、後方の人民内務委員の待機所へと降り注ぐ。

直後、数発の砲弾が同時炸裂し兵士を監視していた人民内務委員を粉々に吹き飛ばし、その場から小さいキノコ雲が上がった。

 

 

「目標に命中!!敵督戦隊を殲滅確認!」

 

「初弾でよくやったな。榴弾砲部隊には戦争が終わったら日本の美味いビールでも奢ってやろう」

 

 

督戦隊を失った事により南軍兵士達は恐れる物は無くなったと、我先にと後退していき、南軍による夜襲は失敗に終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




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