「これ、まだ残ってたんだな」
「今回の派遣のために倉庫からスクラップ前のやつを引っ張ってきたんだと」
山頂の第3師団榴弾砲部隊が展開している砲陣地では、陸上自衛隊クワトイネ派遣隊所属の特科隊所属の75式自走155ミリりゅう弾砲が発射準備に入っていた。
砲陣地より前の陣地ではクワトイネ派遣隊の主力である74式戦車が横一列に並び、油気圧サスペンションにより車体を前に傾斜させ、砲塔から伸びる砲身を下に向けて待機している。
これらのように陸上自衛隊クワトイネ派遣隊に配備されている主力車両が旧式兵器ばかりなのは、2年前のロデニウス大陸戦争後に陸上自衛隊第7師団撤収後にクワトイネ派遣隊がダイダル基地での平和維持活動を引き継ぐ直前に、グラ・バルカス戦で第7師団のムーに派遣される事となり、クワトイネ派遣隊向けの主力車両の数が足りなくなるという想定外の事態が発生した。
国防の観点からクワトイネ派遣隊へ新型車両の機材や人員が回せないため新たに予算が組まれたのだが、ロウリアでの情勢が悪化の一途を辿っていたためクワトイネ派遣隊による平和維持活動と邦人保護の必要性から、数が揃うまでの間の主力として、退役または書類上はスクラップだが予定の遅延により倉庫に保管されていたこれらの旧式装備が急遽整備されクワトイネ派遣隊へと配備されていたのである。
そのため、クワトイネ派遣隊の隊員の半分程はそれらの装備に馴染みがある40から50代の古株なベテラン隊員が地方から多数集められ、中には最後の任務として志願してきた退官前の隊員も何人か混ざっている。
「ギアは素早く入れろ!モタモタとギアチェンジしてたら敵に逃げられるぞ!」
「装填は素早く確実にやれ!装填モタモタしてたら腕と指が無くなっちまうぞ!」
「違う!そこはこうやって操作するんだ!」
ベテラン隊員にそうドヤされながら苦労している20代から30代前半くらいの若手隊員達は自動制御や自動装填式の装備に慣れてしまっているため、手動や半手動が殆どの旧式装備の扱いに四苦八苦していた。教本や基本教育での知識や多少扱った程度でしか経験の無い彼等にとっては扱いに苦労する事この上無かった。
「こっちの方はだいぶ進んでるな」
一方で、防空装備を扱う部隊では高機動車に搭載された93式近距離地対空誘導弾と81式短距離地対空誘導弾のその射撃管制装置が戦闘態勢に入っており、誘導弾を装備した車両のランチャーは上を向き、JTPS-P14対空レーダーが周辺を警戒、81式の射撃管制装置のレーダーにも電源が入れられている。
また、隊員も個人携帯式の91式携帯地対空誘導弾を用意して待機しており、ムーの防空部隊と合わせて敵ワイバーンへの備えは完璧に整っていた。
「空自からの報告は?」
「未だありません」
その頃、ダイダル基地の航空自衛隊クワトイネ分遣隊所属のF-4EJ改2機は南ロウリアの深部を飛行していた。
この2機の任務は南軍が保有しているとされているワイバーン等の航空戦力が配置されている場所の捜索と情報収集を行っており、この日2機は事前にクワトイネ側からもたされた情報を頼りに、確認と拠点の爆撃破壊のため深部にまで進出していた。
「今日で2日目か………いい加減見つけたいね」
指揮を勤める『神子田』2等空佐が操縦席で呟く。
「見つけてもいきなり仕掛けるなよ。お前、直ぐに突っ走るから」
後席に座る副操縦士の『久里浜』2等空佐が神子田に釘を刺す。
「しねぇよ、そんな事」
「どうだか………お前、あの人にそっくりだからな。敵ワイバーンとチキンレースすらやりかねない」
「神田教官ならしそうだけど、俺はしねぇよ?」
「本当か?お前、神田教官の再来って言われてるからな」
「そう言うお前も、栗原教官のコピーだなんて言われてるの知ってるんだろう?」
「まぁな」
そんな会話を交わしながらも、2人は下を見て怪しい影が無いか確認する。
「そろそろ情報にあった地点だ」
「今度こそ当たりかな?今までの情報はガセネタばかりだったからな」
「今回のは信用できるらしい。この辺りは敵の南部諸侯が使っていたワイバーンの飼育と修練が行われてた空域らしいからな。神子田、お前の目が頼りだからな。見逃すなよ」
「分かってるよ。人っ子1人見逃さねぇ自信しかねぇぜ」
神子田は操縦桿で重い機体を操縦しながら、下を必死に観察する。
「ん?」
「どうした?」
「今真下で何か動いたのが見えた」
「もしかしたら当たりかもしれん。高度をもう少し下げよう」
「了解。久里浜、誘導頼むぜ」
「任せろ。そのままライトターンヘディング、ナウ」
神子田は久里浜の指示に従い、機体を左へ旋回させながら高度を下げる。
「レーダーコンタクト!当たりだ、目標を発見した」
「了解。目視で確認する」
神子田はスロットルレバーを少し前に押してエンジン出力を上げて機体を加速させる。
「タリホー!確認した!」
自信の前方にある森の中に巧妙に隠された飛行場の上空を4騎のワイバーンが旋回しているのを確認した。
「どっちを先に片付ける?」
「先ずは飛んでる敵を先に落としてから、基地を叩こう」
「分かった。ホークウィンドウ02、良いか?」
『ホークウィンドウ02コピー。派手にやってやりましょう』
「よし!ホークウィンドウ01、エンゲージ!」
『ホークウィンドウ02、エンゲージ!』
2機のファントムはエンジン出力を一気に上げて、戦闘を開始した。
続く
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