日本国召喚×不沈戦艦紀伊   作:明日をユメミル

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第13話

陸上自衛隊のヘリ部隊より先に先行するムーのマリン部隊は、周辺空域確保のため戦闘隊形を組んでいた。

只、マリンと言ってもこの部隊が使用しているマリンは従来のノーマルのマリンとは違っていた。

空冷星形エンジンが納められたエンジンカウルがオリジナルよりも尖っているかのように伸び、前から見れば空冷エンジンよりも幅が細くなり、数本の排気管が突き出している。更には高速回転するプロペラの枚数が1枚増えて4枚プロペラとなっている等、僅かに形状が変わっている。

 

 

「しかし、マリンも随分変わったな」

 

 

マリン部隊を率いるムー統括軍所属の『マーレン』中佐は、今まで乗っていたマリンからの変わり様に驚いていた。

それもその筈で、彼が率いるマリン部隊が装備するマリンは、五ヵ年計画で計画されている次期主力戦闘機開発までの繋ぎとして、日本から輸入して得た技術で大幅な改良が施されたマリンの大規模強化改良型『マリン改』だった。

 

オリジナルのマリンとの違いはかなりあるが、その特徴は何と言ってもエンジンである。

マリンのエンジンは従来の500馬力空冷星形エンジンから、1100馬力を誇る新型の液冷エンジンに換装されていた。

 

この液冷エンジンと、それを納めるために専用設計された空気抵抗の少ないエンジンカウル、そして高出力のエンジンのパワーを受け止めるためにフレームから強化された胴体と主翼の恩恵もあり、マリン改は最高速度500キロ台を叩き出せる高速機に生まれ変わった。

 

他にも固定武装を8ミリ機銃から、より大口径で高初速を誇る12・7ミリ重機関銃への換装、限定的な防弾装甲の追加なども行われており、従来のマリンを高機動で軽快な軽戦闘機とするなら、マリン改は速度と加速力と火力を重視した重戦闘機と言える。

 

 

 

 

「敵の航空戦力は無いとの事だが油断するな」

 

 

 

マーレンは無線機で部下達に改めて釘を刺す。

 

 

 

「ん?」

 

 

 

敵の勢力圏に入ったと同時に、前方から2つの影が見える。目の良いマーレンには影の正体が敵のワイバーンだった事が直ぐに分かった。

 

 

 

「連中、貴重な航空戦力を投入してきていると言う事は、相当追い詰められているみたいだ。全機散開!」

 

 

マーレンの合図でマリン改の飛行編隊はその場で散開した。

マーレンはスロットルレバーをゆっくり前に押し出し、エンジン出力を上げる。

 

 

「お~、メーターがダンスしてらぁ」

 

 

エンジン出力と速度が上がり、計器類が派手に回りはじめる。マリン改は加速していき、向かってくる敵騎に向かって突き進む。マーレンは光学照準器で左右のうちの左のワイバーンに合わせる。

 

 

「喰らえ!」

 

 

スロットルレバー備えられたトリガーを引くと、削岩機のような発射音と共に、2基の12・7ミリ重機関銃が火を吹いた。放たれた徹甲弾と榴弾は、向かってきた1騎のワイバーンに着弾した。

マーレンはスロットルを一気に前に倒すと同時に操縦桿を左へ倒し、その場から離脱する。

 

 

「これが一撃離脱だ!」

 

 

重戦闘機のマリン改は格闘戦に不向きなため、持ち前の大火力を相手に打ち込んでから、速度を一気に上げて方向転換し離脱する、独自の一撃離脱戦法が考案されており、マーレンは南軍のワイバーン相手にそれを見舞ったのである。

 

 

「どうだ!?」

 

 

バックミラーをずらし、後ろの様子を見る。

そこには、地面に向かって真っ逆さまに落ちていくワイバーンの姿が見えた。

 

 

「成功だな………ワイバーンに通用する事は分かったが、アンタレス相手に通用するのか?」

 

 

マーレンは情報部が国境地帯で偶然鹵獲した、墜落していたほぼ無傷のアンタレスを見せられた時にマリンでは勝てないと確信していた。性能面でも火力も速度も防弾能力もマリンとは格が違い過ぎており、勝負にもならないと思っていた矢先、このマリン改に乗り込む機会を得たのである。しかしこれでも彼はアンタレスに対して勝てるのかどうか疑問を抱いており、アンタレスやマリンよりも格下のワイバーン相手では性能が確かめられないと肩を落とす。

 

 

「他の連中はどうだ?」

 

 

速度を落として、水平飛行に戻すと辺りを見回す。

 

 

「お?もう終わったみたいだな」

 

 

もう1騎のワイバーンも部下のマリン改により既に撃墜されており、周辺に自分達や後方のヘリ部隊以外に空を飛ぶ者は居なかった。マーレンは無線機のマイクを手に取り、ヘリ部隊に通信を送る。

 

 

「こちら制空隊、敵航空戦力は排除した。貴隊は敵へ攻撃を開始されたし」

 

『了解。貴隊の奮闘に感謝する』

 

 

マーレンは無線機の周波数を切り替えて、部下達に指示を送る。

 

 

「後は自衛隊の仕事だ。我々は邪魔にならないよう上昇し警戒に当たるぞ」

 

 

無線機を切り操縦桿を手前に引いて機体を上昇させ、ヘリ部隊の援護に回った。

 

 

 

 

 

 

 

「全機、攻撃態勢!」

 

 

マリン部隊が確保した空域に到達した第5対戦車ヘリコプター隊は、超低空でホバリングを始める。

 

 

「目標視認!」

 

 

AH-1Sコブラの前席に座る射撃主が照準器を覗き込み、ハイドラ70ロケットとバルカン砲の安全装置を解除し、地上を進んでくる南軍の攻城兵器と重装歩兵、バリスタ等の対空兵器に照準を合わせる。

 

 

『攻撃準備よし』

 

「全機、攻撃開始!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




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