榴弾砲の砲撃で大損害を受けた南軍クワトイネ侵攻部隊は、浮き足立っていた。
榴弾砲からの砲撃で歩兵の損害は酷く、概算で10000近い兵力が失われている。幸いにもまだこの部隊には20000近い兵力が残されているが、コブラの攻撃により貴重な攻城兵器は全て破壊され、重装歩兵も8割程を失い、正直言って優性どころか圧倒されている。
「良いか!この作戦は指導者様の絶対命令だ!諸君達は栄えある人民軍兵士としての誇りを持ち、必ず敵を殲滅してやるのだ!」
人民内務委員による言葉は、傷の手当てや負傷者にとっては耳にタコが出来るような感情と、不信感を抱かせる。しかし彼等に逆らえばどうなるかは皆が知っている事なので、誰も口には出さず、それぞれのやるべき事をやりながら聞き流す。
「えぇい!あのブンブンうるさいあのハエは何とかならんのか!」
上空を飛んでいるOH-1に人民内務委員は耳障りと言わんばかりに吠える。
「兎に角!今は進撃しかない!指揮官!」
委員は部隊の指揮官を呼ぶ。
「直ちに部隊を進撃させろ!今回の戦いは祖国の運命が掛かっていると思え!」
「ですが負傷者の手当てが」
「戦いの役に立たない無能など捨て置けばよい!」
「そんな無茶な…」
「貴様、私の命令が絶対であると忘れた訳ではあるまいな?」
指揮官は委員の言葉に、何も反論できなかった。
「分かりました」
指揮官は不本意ながら部隊に進撃を命令し、部隊は再び進撃を開始した。
「敵部隊、動き始めました」
OH-1からの報告に大河内は決断を下した。
「敵はいよいよここへ迫ってくる。我々は何としてでも敵を此処で食い止めなければならない」
「陸将、では……」
「あぁ。戦車隊、普通科は戦闘待機。敵が射程距離に入り次第攻撃開始。全火器使用自由」
大河内からの命令は戦車隊と普通科隊に直ちに伝えられ、普通科の隊員達は小銃と機関銃を塹壕や陣地内から麓に向けて構える。公国兵達もライフルを手に、自衛隊員達と共に構える。
それから数時間が経過した。
「敵を視認!」
遂に南軍が姿を表した。
土煙をあげながら向かってくる南軍は報告通り、10000を越えていた。重兵器を排除したとは言え、目視でも南軍の数に圧倒される。
「地面が3分に敵が7分!」
「各員、配置に付け!」
待機していた普通科隊員と公国兵は塹壕内を走り回り、各々の配置に就いた。配置に就くと同時に隊員と公国兵達は各々が持つ武器を用意し、射撃命令が下るのを待ち続ける。
「まだだ……まだ引き付けろ」
既に照準器は南軍兵を捉え、射程距離内に入っている。
「各隊射撃用意……」
全員が引き金に掛けている指に力を込める。
「撃てぇぇぇ!」
合図と同時に、山頂から戦車と小銃と機関銃の音が同時に響き渡った。
続く
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