日本国召喚×不沈戦艦紀伊   作:明日をユメミル

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第25話

第2師団による長距離攻撃によりバイールの南軍は大混乱に陥っていた。

MLRSとHIMARSから撃ち出されるクラスター弾は、この世界の物量戦術に対抗して日本と新生合衆国ではミサイルや他の長距離攻撃用兵器と共に増産に入っており、第2師団には南軍全てを壊滅させられるだけの量が持ち込まれている。

 

しかし第2師団の砲兵部隊による攻撃はこれだけには留まらず、MLRSとHIMARSが攻撃を終えて再装填している間を自走砲と榴弾砲が砲撃を行い、南軍陣地を掻き回す。

南軍陣地内はクラスター爆弾と大口径榴弾による爆発で、人的、物的被害が凄まじく、負傷兵の手当てが追い付かず、指揮官も多数戦死か指揮不能となり組織立った行動が出来ておらず、部隊はどう行動をとっていいのか分からず足踏み状態だった。

 

 

「クソ!また爆発だ!」

 

「負傷兵を下げろ!」

 

「こっちに人を回してくれぇぇ!」

 

 

何とか負傷を免れた南軍兵は負傷者の手当てと隊の再編を行うが、雨のように続く砲撃を前にロクに動けておらず、特に強制徴兵でやって来た素人は何をしたら良いのか分からずその場で固まったり、塞ぎ込んだりしていた。

 

 

「うわぁぁぁ!目がぁぁ……目がぁぁぁ……」

 

「俺の……足………足は何処なんだぁぁ!」

 

「誰かぁ………俺の腕を………腕を探してくれ……」

 

 

 

重傷の負傷兵は想像を絶する傷とパニックから暴れ出したり、精神的に可笑しくなってしまう者も続出し始めている。

衛生兵達も必死で手当てを行うが傷が軽い者が優先して手当てされるため、重傷者はその間に出血多量によるショック死で息を引き取っていく。

 

 

 

「何なんだ!何なのだこのザマは!まだ敵も視認していないうちからこのザマは!」

 

 

人民内務委員も比較的安全な場所からその光景に怒り、回りに怒鳴り散らす。

 

 

「しかし閣下、これでは我々は手も足も」

 

「弱音は聞きたくない!早く敵を迎え撃つのだ!」

 

「その敵がまだ見えないので、迎え撃てないのです!」

 

「なら偵察を出せ!」

 

「斥候は出しました。ですがこちらかの呼び掛けに一切応答がなく、何十人という兵が姿を消しています」

 

 

南軍は攻撃直前に斥候は出していたが、上空の無人偵察機とヘリによりアッサリ発見され、第2師団に全て排除されていたため彼等には第2師団が展開している位置や兵力に関する情報が全くと言って良い程に不足しており、あるとすれば攻撃前にやって来たマイケル達海兵隊の偵察隊に関する物だけであった。

 

 

 

 

そんな中、第2師団は次の作戦に入ろうとしていた。

 

 

『各隊、前進開始!』

 

 

陸軍のストライカーとM2ブラッドレー、ハンヴィー、MRAP、LAV-25、M113、AAV7、装甲トラック等の装甲戦力が平野を全速力で突き進んでいた。

主力戦車を保有しない在日米軍を再編した新生合衆国陸軍の主力戦車の代わりを勤める戦車砲搭載型ストライカーMGSとM2ブラッドレーは持ち前の速度と機動力を生かし、敵陣を目指す。

 

 

「こちらアタッカー1、敵陣を視認!」

 

 

ストライカーMGSに搭載されている105ミリ砲が敵陣へ向けられ、キャニスター弾と成形炸薬弾が装填される。

 

 

「Fire!」

 

 

ドンとMGSから次々と砲弾が放たれ、陣地内に爆発と土煙が上がる。

それを合図にヘリ部隊も動き出し、地上部隊の航空支援のため攻撃を開始した。

 

 

「敵が来たぞぉぉ!」

 

「クソ!このタイミングで………生き残りに戦闘態勢を指示しろ!戦える者は武器を持って戦え!」

 

 

 

兵力の7割を喪失していた南軍はなけなしの戦力で第2師団を迎え撃つ。

 

 

 

「大佐!敵が動き出しました!」

 

「よし来た!」

 

 

敵陣へと向かっていた陸軍部隊を指揮する『アーノルド・ギャラウェイ』大佐は部下からの報告に、指揮車型ストライカーの車内にある無線機マイクを手に取る。

 

 

「アタッカーよりスカイナイト!出番です!」

 

『心得た!』

 

『我々の力、とくとご覧なされよ!』

 

 

ヘリ部隊の後方から、翼をはためかせるワイバーンと風竜が姿を表し、飛行中のヘリの真上を高速で通り過ぎると、敵陣へ向けて真っ直ぐ突撃を仕掛ける。

 

 

「良いか!日本国への恩を返す時が来たぞ!日本国の盟友に助力をする事で日本国への恩を示すのだ!」

 

「全員、何時も通りだ!我がガハラの風竜こそフィルアデス最強であると誇りを持ち、手加減はするな!」

 

 

 

フェンの竜騎士隊とガハラの風竜騎士隊は魔信でそう呼び掛ける。

そしてフェンの竜騎士隊が敵陣に向けてまっ逆さまに急降下を開始した。

 

 

「まだだ……まだ撃つな」

 

 

フェン竜騎士隊の隊長は迫る地面に物怖じする事なく冷静に敵を見据える。

 

 

「放てぇぇぇ!」

 

 

その瞬間、敵陣内に竜騎士隊のワイバーンによる火炎放射が放たれ、高温の炎が陣地内に広がった。

 

 

「ふんっ!」

 

 

急降下していたワイバーンはその場でホバリングに入り、水平飛行に入ると、地上へ向けて炎を放つ。

陣地内はたちまち炎に包まれ、黒煙が立ち上ぼり、南軍兵達は火に焼かれていく。

 

 

「ギャァァァァァ!」

 

「火がぁ!火がぁ!」

 

「誰か火を消してくれぇぇぇ!」

 

「グガァ…………息が………」

 

 

ワイバーンから放たれた炎は摂氏500度以上であり、そんな高温に晒された人間の皮膚など一瞬で焼け焦げ、酸素を奪っていく。

 

 

「こりゃスゲェ………ちょっとしたベトナム戦争みたいだ」

 

「お前見た事あるのかよ?」

 

「スクリーン越しにな」

 

 

敵陣地手前からその様子を見ていた米兵もその光景に映画でしか見た事がないベトナム戦争の光景を思い浮かべる。

 

 

「あれだけやられたら充分だろ。各隊、敵陣へ突入!」

 

 

ストライカーMGSの支援の元、装甲トラックが敵陣へ向けて突入した。

 

 

「よし!お客さん、着きましたぜ!」

 

 

停車した装甲トラックハッチが開かれると、そこから飛び出してきたのは米兵ではなく、鎧を身に纏い、日本刀に似た剣で武装したフェン王国兵だった。

 

 

「突撃ぃぃぃぃ!!!!」

 

「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」」」

 

 

王国兵は雄叫びをあげ剣を片手に敵陣へと入り込んだ。

接近戦に長けた王国兵は既に戦意を失っていた南軍兵をすれ違い様に切り捨て、敵陣奥深く進んでいく。

 

 

「フェンのサムライに負けるな!我々も行くぞ!」

 

 

彼らの後ろを、ストライカーとM113から降りてきた米陸軍の兵士が続き、王国兵の取り零しを始末または捕虜にしながら後を追う。

 

 

 

そして、敵の指揮所が置かれている南部諸侯の貴族が使っていた屋敷がある本陣へと迫り、屋敷の正門の手前で屋敷の屋根の上に潜んでいた南軍兵が姿を表し、彼等に向けて矢を放った。

 

 

「グアっ!」

 

「ouch!」

 

「shit!メディーック!」

 

 

矢を受けた王国兵と米兵を衛生兵が引き下げ手当てを行う。

王国兵と米兵はその場で地面に伏せる。

 

 

その時………

 

 

ドンドンドンドンドン!!!

 

 

重苦しい射撃音が響き屋根に居た南軍兵達が次々と吹き飛ばされていく。

 

 

「ようやく追い付いたな!」

 

 

後ろを振り返ると、M2ブラッドレーが屋根に向けて機関砲の砲身を向けており、砲口からは硝煙が出ていた。

 

 

「遅いぜ!」

 

「無茶言いなさんな!あんたらが早いんだよ!」

 

 

ブラッドレーの車長が砲塔の車長用キューポラから半身を乗り出して友軍兵にそう言った。

 

 

「屋敷に突入する!あの門をぶち破ってくれ!それと援護も頼む!」

 

「お安いご用さ!行くぞ!」

 

 

ブラッドレーその場から砲塔左横のミサイルランチャーからTOWミサイルを発射し、固く守られた正門扉を吹き飛ばした。

 

 

「Goodだ!そのまま進め!」

 

 

破壊された正門の残骸を踏み潰しながら、ブラッドレーは屋敷の敷地内に突入した。そして目の前に見える屋敷の玄関に向けて再びTOWを撃ち込み、大穴を開けた。

 

 

「ここからは我々の出番だ!行くぞ!」

 

「頑張ってくだされ!」

 

 

米兵達は王国兵にその場を任せると正門を越えて敷地内に入り、大穴が開いた玄関の左右に展開し壁を背にゆっくりと近づく。

ハンドサインを交わして屋敷内に手榴弾を放り込み、爆発と同時に突入する。

 

 

 

「Go!Go!Go!」

 

 

 

米兵達は日頃鍛えた対市街地戦闘訓練を存分に生かし、屋敷内に無事突入すると、一部屋ずつクリアリングしながら1階、2階を制圧していく。

屋敷内にも敵は居たが、実戦経験豊富でしっかりと訓練された米兵との練度との差で抵抗むなしく制圧されていき、抵抗の意思を見せなかった敵を取り押さえていく。

 

 

「よし、此処だな」

 

 

そして、最上階の一番奥にある部屋へとたどり着く。扉は厳重に閉められており、鍵が掛かっているが、これも米兵にとっては想定の範囲内でショットガンを持ったポイントマンが扉の蝶板を破壊し、支えを失った扉はあっさりと蹴破られる。

 

 

「スタングレネード!」

 

 

スタングレネードが放り込まれ、爆音が鳴り響く。

 

 

「行け!」

 

 

米兵は雪崩れ込むように部屋へと入る。そこには豪華な彫刻が施された鎧を着た1人の男とメイドらしき少女が1人居た。

 

 

「動くな、国連軍だ!武器を捨てて投降しろ!」

 

 

米兵は倒れ込んだ鎧の男とメイドの少女を拘束し取り押さえる。米兵の指揮官は身元確認のため懐から一枚の写真を取り出し、その写真と目の前の男と顔を確認する。

 

 

「間違いない、内務人民委員のカルロスだ。連れていけ!」

 

 

 

1時間後、バイール平野の敵は降伏した。

国連軍第2師団はバイール平野一帯の占領に成功し、第1師団が占領したバンガー要塞を含めて、国連軍は首都ピョーヤンの前と後ろを抑え、敵を追い詰めた。

 

 

作戦はいよいよ最終段階に入った。

 

 

 

 

 

 

続く




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