日本国召喚×不沈戦艦紀伊   作:明日をユメミル

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第29話

ピョーヤンへ入る正門前では国連軍第2師団の地上部隊がエンジンを始動させ、戦闘態勢を維持したまま、その場から動く事なく待機していた。

 

 

「大佐、間も無く時間です」

 

「分かった。時間が過ぎても門が開かなかった場合は強行突入を開始だ」

 

 

指揮車型ストライカーCVの車内では、アーノルド達陸軍の幹部達が指揮を行っており、アーノルドは腕時計を見ていた。

 

 

「後1分か」

 

 

時計の針が8時59分を差す。

 

 

「大佐!」

 

 

そこへ、陸軍兵士がやって来た。

 

 

「門が開きます!」

 

 

アーノルドは急いでストライカーから降りる。目の前に聳え立つ正門の扉がゆっくりと開かれていた。

扉の向こうから出てきたのは、非武装の民間人達だった。

 

 

「遅くなってすまない!奴らは議事堂に立てこもっているようだ!」

 

 

扉を開けた民間人こと、ピョーヤンの住民達は国連軍に対してピョーヤン内の情報を渡す。

 

 

「分かった、協力感謝する。彼等を保護だ」

 

「イエッサー!」

 

 

アーノルドは部下に協力者を後方へ退避させるよう指示する。

 

 

「さて、これで民間人の心配なく戦えるな」

 

「えぇ。では……」

 

「あぁ……全部隊は現時刻を以て突入だ!」

 

 

 

8時を回ったと同時に第2師団はピョーヤン内へと突入した。

地上部隊はM2ブラッドレーを先頭に市街へと入り、誰一人居なくなった市内を全速力で駆け抜けていく。

 

 

「それにしても本当に静かですね」

 

「元々、ピョーヤンに市民はほんの僅かしか居なかったらしい。保護した民間人達は内務人民委員に弾圧されてたみたいだからな……その結果がこれだからな」

 

 

市内を走っていると大半の家屋は焼け落ちているか、ドアや窓が空いたままとなっている。

タスクフォース332によるナーフ拘束作戦後の市民による暴動と内務人民委員の鎮圧行動が切っ掛けで多くの市民がピョーヤンを脱出し国連軍に保護され、先程の正門を開けた民間人達も一度国連軍に保護された後、国連軍への協力を申し出た事により一度町へと戻り正門を開けて敵の情報を渡していたのである

 

 

「さて、そろそろだな」

 

 

無人機の偵察結果を元に作成されたピョーヤンの見取り図では、国連軍部隊は議事堂へと真っ直ぐ向かっており、間も無く官庁街へと入る頃である。

 

 

 

ドォォォォン!

 

ドォォォォン!

 

ドォォォォン!

 

 

その時、何処からか爆発音が聞こえてきた。

 

 

 

「いかん!総員警戒!」

 

 

 

アーノルドはその音が砲撃音だと知り、無線で全部隊に呼び掛けた。

 

 

 

ガァァァン!!!

 

 

直後、先頭を走っていたブラッドレーに何かが命中し爆発を起こした。

 

 

「1号車被弾!」

 

「被害は!?」

 

「確認します!」

 

 

確認しようと陸軍兵がストライカーの外に出た瞬間、パンと言う発砲音が複数響き渡る。

 

 

「Shit!」

 

 

外に出た陸軍兵は右足を負傷した。

しかし幸いにも、ストライカーを出た瞬間に撃たれたため、車内に居た別の兵士がボディーアーマーの背中にあるドラッグハンドルを掴んでその兵士を車内に引き摺って回収する。

 

 

「待ち伏せか!」

 

 

アーノルド達、陸軍兵達はイラクやアフガニスタンでの実戦経験から敵による待ち伏せだと瞬時に判断し、直ぐ様車両から降りると、車両を盾にして全周警戒を行い、車両の乗員もRWSを操作してカメラを使って辺りを見回す。

 

 

「大佐、周囲の建物に敵兵を確認!」

 

 

モニターに写し出されているRWSのカメラ映像を見ると、回りの建物の2階から南軍兵士が魔導銃を構えているのが見えた。

 

 

「応戦!」

 

 

直ぐ様、応戦が開始される。

建物の二階に向けて銃撃が開始される。しかし、木造である筈の建物の壁には小さな穴しか空かなかった。

 

 

「変だな……木造のはずなのに」

 

「連中、多分壁の裏側に防御用の何かを使ってるんですよ」

 

 

すると、銃撃で空いた壁の穴から砂と小石が落ちてくる。

 

 

「奴ら、壁の裏側に砂と小石が入った袋を積み上げてるんだ!」

 

「クソ!これじゃ弾の無駄だ!50口径だ!」

 

 

すると、ストライカーのRWSとハンヴィーのブローニングM2が射撃を開始し、ライフル銃とは比べ物にならない発砲音が響き渡り、敵が隠れている建物の壁を大きく破壊し、小石と砂が詰まった袋ごと敵兵を貫く。

航空機を撃墜するために開発されたブローニングM2の破壊力の前では砂と小石が詰まった即席の土嚢では全く役には立たなかった。

 

 

「1号車の被害は!?」

 

「確認中です」

 

 

最初に攻撃を受けたブラッドレーは左側の履帯が切れており、履帯を支える前輪も外れてしまっている。

 

 

ドォォォォン!!

 

ドォォォォン!!

 

 

しかしその直後、再び砲撃音が鳴り響くとブラッドレーの車体前面に2回程、何かが着弾して爆発した。

 

 

「不味い!このままじゃ…」

 

「大佐!1号車から応答あり!」

 

 

アーノルドは無線マイクを手に取ると擱坐した、ブラッドレーの乗員に呼び掛ける。

 

 

 

「大丈夫か?被害は?」

 

『自分を含め他の者に怪我はありません』

 

「分かった。お前を撃った敵は居るか?」

 

『前方に大砲が3門あります。結構大きいみたいですよ』

 

「大砲か………分かった!動けそうに無いのなら火器は生きてるか?応戦は出来そうか」

 

『FCSが故障してしまいましたが、何とか光学照準で使えます』

 

「分かった!敵の大砲を排除してくれ!」

 

『了解!』

 

 

無線を切った直後、ブラッドレーの砲塔左のTOWミサイルランチャーからTOWミサイルが発射され、前方でブラッドレーを狙っていた3門の魔導砲のうち1門に直撃し、大爆発と共に吹き飛んだ。残りの2門も誘爆と爆風で吹き飛ばされ完全に無力化された。

 

 

『敵の大砲を排除!』

 

「よくやった!こっちも建物の上の連中に狙われてるんだ!」

 

『了解!』

 

 

次にブラッドレーの砲塔が真後ろに向けて旋回し、建物の2階に機関砲が向けられると単発射撃で建物1つにつき、数発が撃ち込まれる。

すると、建物内に小さな爆発が起き、敵の悲鳴が聞こえてきた。

 

 

「Foooo!!」

 

「もっとク○共を吹っ飛ばしてくれぇ!!」

 

 

応戦していた陸軍兵も被弾したブラッドレーが無事だった事と、手間取っていた敵を無力化していくブラッドレーの姿に思わず声援を送る。

 

 

 

そして、僅か10分で敵は完全に無力化された。

 

 

「被害は!」

 

「数名が負傷、死者は居ません!」

 

「了解!負傷者とブラッドレーは後続の部隊に任せて、我々はこのまま前進だ!空中のヘリ部隊にもう少し我々との距離を詰めるように言ってくれ!」

 

「了解!」

 

 

敵を排除した地上部隊は負傷した兵士と損傷したブラッドレーを後続の部隊に任せて、官庁街へ向けて前進を開始し、上空のヘリも地上部隊との距離を詰めて、付近に魔導砲と敵兵が居ないかを警戒する。

 

 

『こちらスカイアイ、敵兵と砲兵器を発見した。これより攻撃する』

 

 

時折、上空のアパッチが敵に向けて機関砲とロケット弾を使って攻撃し、進路上にある砲撃で破壊された官庁街内の敵を排除していく。

ヘリからの支援を受けながら、地上は官庁街へと突入した。

 

 

「派手に吹っ飛んでるな……」

 

 

官庁街は砲撃で完全に廃墟と化しており、建物は崩落、未だ炎上している建物もあり、議事堂へと続く大通りには残骸もあるが、それらは全て、先頭のM9ACE装甲ブルドーザーが大型ドーザーブレードを使って残骸を押し退けて道を切り開いていく。

 

 

「見えた!」

 

 

暫く進んでいると、目の前に議事堂が見えてきた。

地上部隊の車両は議事堂前の広場で停車、乗っていた陸軍兵とフェン王国兵が広場に展開し、銃火器を議事堂に向けて何時でも攻撃できる態勢をとる。

 

 

「さて、分からず屋共の説得と行くか」

 

 

アーノルドはストライカーの中から外へ出る。そんな彼の後ろをヘルメットとボディーアーマーを着用した、ナーフが続く。

 

 

「あ……あ……………」

 

 

ナーフは拡声器を手に議事堂へ向けて呼び掛け始める。

 

 

『私だ!君たちは既に包囲されている!指導者として命令する!投降せよ!君たちの身柄は悪い様にはしないと国連軍が保証するとの事だ!君たちには本当に悪い事をしたと思う………もうこれ以上、私のワガママに付き合う必要はない!直ぐに投降してくれ!』

 

 

拡声器から響く声が議事堂全体に伝わる。しかし敵からの応答は無かった。

 

 

「聞こえないフリでもしてるのかな?」

 

「もう一度呼び掛けてみてくれ」

 

 

ナーフは再び拡声器で呼び掛けてみる。しかしそれでも応答は無かった。

 

 

「威嚇射撃!」

 

 

威嚇でストライカーMGSの戦車砲から空砲が放たれるが、それでも応答は無かった。

 

 

「大佐、突入しますか?」

 

「いや、下手に突入してもし自爆か何かされたら不味い…………」

 

 

 

暫く膠着状態が続く。

 

 

 

 

それから数時間後、議事堂の玄関の扉が開かれる。

 

 

 

扉の向こうから30名のメイドが現れた。

彼女達は怯えた表情で、両手をあげながらゆっくりと近付いてきた。

 

 

「止まれ!」

 

 

その声に体を震わせながら歩みを止めて、その場で力無く座り込む。

 

 

「何だ………逃げてきたのか?」

 

 

と、その瞬間、議事堂から爆発音が響く。

それと同時に、議事堂の建物は土煙をあげながら崩れていく。

 

 

「自爆か………」

 

 

アーノルドは議事堂が自爆したのを見て、敵が自決したと判断した。

 

 

 

 

 

 

この瞬間を以て、ロウリア人民共和国は崩壊し、戦争に終止符が打たれた。

 

 

 

 

 

 

 

続く




本話で、ロウリア戦争編は終了です。


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