中央暦1642年
第1文明圏中央世界において、世界最強との異名を持つ『神聖ミリシアル帝国』。
毎年ここでは、各列強国の代表が集まる『先進11ヶ国会議』が行われており、今年もその日がやって来た。
だが今回は例年と少し違う事がある。
それは今年の会議に参加する先進国が『11ヶ国』ではなく『12ヶ国』と、1国多いのである。
会議が行われる会議場はミリシアルの港町『カルトアルパス』では、各国の使節や代表を乗せた船や護衛の軍艦が次々と入港していく。
「第1文明圏、トルキア王国軍が到着しました。戦列艦7、使節船1の8隻です!」
「了解。第1文明圏エリアへと誘導せよ。」
港湾管理局では、責任者の『ブロンズ』が到着した各国の船を指定のエリアへと誘導していく。
「続いて、アガルタ法国も到着。魔法船団6と民間船2。」
「了解。…………相変わらず代わり映えしないな。」
ブロンズは仕事柄、各国の軍艦については一通り知識に入っているが、毎年同じような船ばかり来るため、もう飽きがきていた。
「日本とアメリカ、グラ・バルカス帝国………どんな船で来るんだろうな?」
今回の会議で彼が楽しみにしているのは、今回からパーパルディアとレイフォルに代わって会議に参加する事となった日本とグラ・バルカス帝国が使っている軍艦であった。
彼の基には事前に、両国は巨大な戦艦を寄越してくると連絡があったため、船マニアの彼の興奮は最高潮に達していた。
「来ました!グラ・バルカス帝国到着!」
「おぉ………あれは………」
最初に到着したグラ・バルカス帝国は、大型の弩級戦艦1と巡洋艦2、駆逐艦3を引き連れてやって来た。
だが港の規模の関係から、戦艦だけが入港し護衛の艦は湾外で待機する事となった。
「次、日本国とアメリカが到着!日本は戦艦1、巡洋艦4です!アメリカは超大型空母1、巡洋艦2、駆逐艦2です!」
グラ・バルカス帝国より遅れて入港してきたのは日本の戦艦紀伊と護衛艦4隻と、アメリカの原子力空母ロナルド・レーガン、ミサイル巡洋艦アンティータム、チャンセラーズビル、ミサイル駆逐艦カーティス・ウィルバー、ミリアスの日米艦隊だった。
「おぉぉぉ!!!凄いぞあれは!!」
ブロンズは紀伊と、ロナルド・レーガンの偉容に興奮し圧倒される。
特に紀伊は巨大で、アガルタ法国の魔法船団やムー国の戦艦どころか、最初に現れたグラ・バルカス帝国の戦艦がまるで巡洋艦に見える程で、巨大な砲を積んでいる。
到着した各国の代表は帝国文化館に案内され、宛がわれた各々の席に着席し、会議の始まるまで待機する。
「もうすぐだな………国連総会の時よりも緊張してきたな。」
「そうですね。ここまで来るのに根回し無しの会議ですから、上手く行くかどうか不安ではありますが。」
日本から代表でやって来た近藤大使と、アメリカ代表のハリソン大使は前世界での国連総会以来の顔見知りであり、今回の先進国会議場でも互いに代表として出席できる事に嬉しさと緊張が入り交じっていた。
話をしていると、3人程が歩み寄ってくる。
3人は2人の前で立ち止まり、その中から民族衣装を纏った大柄の男が話し掛ける。
「日本国とアメリカの方…で間違いございませんかな?」
「はい。」
「お初にお目に掛かります。私は中央世界のアガルタ法国代表のマギと申します。」
「私は第1文明圏のトルキア王国の者です。こちらはアガルタ法国の代表です。」
第1文明圏に連なる2国の代表が挨拶にやって来て、近藤とハリソンは立ちあがり自己紹介をする。
「これはご丁寧に。私は日本国代表の近藤と申します。」
「私はアメリカ代表のハリソンと申します。」
「近藤殿とハリソン殿、お会いできて光栄であります。日本国とアメリカの戦闘術と技術力は、中央世界でも噂になっていますぞ。あの分からず屋のパーパルディアを叩きのめした勇敢な民族が住まう国だと。」
「いえ、我々は本来、国際法を戦争と言う手段で解決する事を良しとしていないですし、パーパルディア皇国とは話し合いでの解決を模索していましたが、結局はあのような結果となってしまいました。」
「なんと謙虚な………ですがこの世界では力こそが正義。誰も貴国を咎める者はおりません。」
「恐縮であります。」
「我々は、貴国とアメリカに対して非常に強い興味を持っている。機会があれば是非とも、貴国にお伺いしたいものです。」
「分かりました。会議が終了し本国に帰国次第、政府にお伝えします。」
「我が国も同じように、前向きに検討させて頂きます。」
近藤とハリソンが笑顔で答える。
『間もなく、先進11ヶ国会議が始まります。』
会館内に放送が流れ、代表達は席へと座る。
それから数分後、会議が始まった。
先ず最初に、今回から会議に参加する事となった日本国とアメリカ、グラ・バルカス帝国の紹介が行われた後に、エモール王国から重大な発表があるとの報告が入る。
「先日、我が国で行われた空間占いで、驚きの結果が出た。今から4年から15年の間に古の魔法帝国…ラヴァナール帝国が出現する!」
その言葉に会議場がざわつく。
かつてこの世界に伝説でしか残っていないラヴァナール帝国の出現は、この世界の国にとっては絶対に無視できない物である。
そんな中、突然グラ・バルカス帝国の使者が声を挙げながら笑う。
「これは失礼。いや、占い如きで大騒ぎするなど、この世界の文明のレベルの低さがよく分かってしまったので。」
グラ・バルカス帝国のシエリアと名乗った女性は、各国を明らかに馬鹿にするような言葉を淡々と並べる。勿論日本とアメリカを除く各国の代表からヤジが飛ぶが、それにも意に介さずシエリアはその場で宣言する。
「グラ・バルカス帝国、皇帝グラ・ルークスの名において宣言する。我らに従え!」
国際会議場で行われた、命令ともとれる従属宣言に議場は紛糾する。
「とんでもない事になったな……」
「あぁ………グラ・バルカス帝国……何故あそこまで自信があるんだ?」
完全に蚊帳の外だった近藤とハリソンが話し合う。
「確かあの国は、ムー国からの話だと我々と同じ転移国家で、列強の1つを滅ぼしたらしい。それも戦艦による艦砲射撃で……」
「艦砲射撃……確か衛星写真で、あの大和擬きの戦艦がやったんだってな?」
「あぁ。もしかしたら紀伊が今回の移動手段として選ばれたのは……グラ・バルカス帝国に対する威嚇も兼ねてるんだろう。」
その後、シエリアは議場を去り、港で待っていた戦艦に乗ってカルトアルパスからも去ってしまった。
続く