先進12ヶ国会議で堂々と宣戦布告を述べた、シエリアは議場を足早に立ち去り、戦艦グレード・アトラスターの艦内の自室に居た。
「はぁ………」
会議場で凛とした雰囲気だったシエリアは、何処か疲れたような表情でため息を吐く。
「全く……日本とアメリカの実力がハッキリしていないのに、上の連中は何を急いでるんだ?」
アトラスターの艦内にある士官室で頭を抱えながら、ここまでの経緯を振り替える。
(パガンダやレイフォルの件以降、軍や政府内でイニシアティブを握った過激派の議員による、新世界での領土拡張政策…………特に国内の企業と強い繋がりのある議員達によって軍が私物化されている。目先の利益だけを求めていては、我が国はいつか手痛いしっぺ返しを食らう事になる。)
士官室の舷側窓から見える、日本の戦艦とアメリカの空母を見つめながら今後の事を考える。
(改めて皇帝陛下に、新世界への宣戦布告を取り下げてもらうように上申するか…………いや、あの過激派思想の議員や側近達の口車に踊らされている状態の皇帝陛下には何を言っても通じない………これでは皇帝陛下は欲望に染まっただけの議員達にとっての単なる傀儡ではないか!!)
シエリアも本来なら、新世界に対する宣戦布告を宣言する役割など引き受けるつもりは毛頭無いのであったが、他国との外交を一手に引き受ける外務担当の国家公務員である彼女は、国からの命令には従うしかない。
(日本とアメリカ………あのカイザル司令官ですら、危険と言う認識を持つ国家相手に勝てるのか?そもそもそんな見込みが何処にある?見込みなんてある筈はない!!)
グラ・バルカス国内において、日本とアメリカを驚異と認識している海軍と情報局、穏健派の議員達の主張は今の過激派思想の議員達には通用しなかった。
今回の件も過激派達が、日本がパーパルディアを打ち負かしたものの属国としなかったため、過激派の中では日本を『パーパルディアを属国にするだけの国力は無い』との致命的な決断を下した結果だった。
(早急すぎる結果で1番痛手を受けるのは皇帝陛下だ………何としてもそれは避けなければならない。そのためには今回の作戦で日本とアメリカを引きずり出して、我々を打ち負かしてもらわなければならない。そうなれば責任は過激派議員達に向けられる。)
そんな中、士官室の扉が開かれ、通信士官兵がやって来た
「シエリア殿、たった今、第1打撃郡がミリシアルの艦隊との戦闘に突入し、これを撃破したとの事です。」
興奮した様子で報告してくる通信士官からの報告に、シエリアは内心こう思った。
(始まってしまったか………もう後戻りはできない……)
複雑な感情が渦巻くなか、シエリアは凛とした表情で何も言わなかった。
続く