先進国会議場はパニックと喧騒に包まれていた。
その原因は、西の海域で訓練中だったミリシアル海軍の第零式魔導艦隊が壊滅したとの報告であった。
ミリシアル側の発表により、攻撃を仕掛けてきたのはグラ・バルカス帝国艦隊である事も同時に伝えられ、各国は今後の対応として、議場をカルトアルパスから別の町にある議場へと移る事が決定され、各国の代表は移動を開始する。
それと同時に、カルトアルパス港に停泊してきた各国の艦隊は、代表達が移動を終えるまでの間、侵攻してくるグラ・バルカス帝国からの攻撃からカルトアルパスを守るため、出撃準備を整えていく。
無論、日本とアメリカも戦闘に成行きで参加する事となったため、停泊していた紀伊と護衛艦4隻、ロナルド・レーガンとミリアスを除くアメリカ艦隊も出撃した。
港に残ったロナルド・レーガンからはE2ホークアイと護衛のF/A-18E/Fスーパーホーネット2機が飛び立ち、昨夜から別の警戒機が探知したグラ・バルカス艦隊が居る南の方角へと飛び去っていく。
『紀伊』第1艦橋
「艦長、敵さんは何が目的なんでしょうかね?」
「恐らくは、ここに集まっている各国の艦隊とカルトアルパスを攻撃して、自分達の実力を見せつけるためのデモンストレーションをやらかす気だろう。」
副長の質問に松田は表情をしかめて答える。
「デモンストレーションとは………聞こえは良いですが、少し派手ですな。ですが敵さんは、なぜ2群に分かれたまま、動いていないんでしょう?」
「2群の艦隊のうち、1方は空母を引き連れた空母機動艦隊、もう一方はあの大和擬きの戦艦と多数の金剛擬きの巡洋戦艦と護衛艦を抱えた前時代的な戦艦部隊………これは俺の考えなんだが、敵は先ず空母機動艦隊から飛び立った航空部隊で我々に痛手を負わせてから、戦艦部隊による砲撃で葬る算段だろう。だがそうはさせんぞ!」
松田はここで敵艦隊を迎え撃ち、なるべく多くの損害を与えた後にグラ・バルカス帝国へ向けて警告を発する事を考え、鈍足で沖へと向かう世界連合艦隊を追い抜き、前衛に出る。
『こちらCIC!米軍の警戒機が敵の航空機編隊を探知!南西方向よりカルトアルパスへと接近中!機数、およそ150!』
海軍戦術統合情報システム『LINK16』により、E2が捉えたレーダー情報はリアルタイムで、日米の各艦に共有され、紀伊のCICにあるメインスクリーンにも表示される。
「来たか………」
「艦長、敵航空機群は各艦の攻撃可能圏内に入っています。今ならミサイルでのアウトレンジ攻撃が可能ですが。」
「いや、ミサイルが勿体無い。ここはミリシアルとムーに相手の数を減らしてもらおう。敵の数がある程度減ったらミサイル攻撃を仕掛ける。」
日米艦隊から直ぐ様、ムーとミリシアルに情報が伝えられ、各国からは戦闘機、竜が慌てて迎撃のため出撃していく。
「敵の航空機の速度を考えると、150機のうち護衛役の戦闘機が50機と少し、魚雷と爆弾を抱えた艦爆と艦攻が100機と言ったところだな。対してミリシアルの航空機は70機、ムーの部隊が30機、数の上ではどっこいだが…………」
戦場では、数もそうだが、質も物を言う。
いくら数が多くても、質で負けていればそれを覆される事はよくある。
ムーとミリシアルの練度がどれ程か不明だが、ここは見守るしかない。
「取り合えず、我々も備えるぞ。対空戦闘用意!」
『対空戦闘用意!』
紀伊以下の各艦は戦闘配備を行ない、ミサイル発射に備える。
『ミリシアル、ムーの戦闘機部隊、今接敵しました!』
両方の航空機部隊が接触し戦闘へと突入した。
IFFが装備されていないため、スクリーン上では大量の光点が雑多に交わっているようにしか見えない。
『あぁ………どうやらムーとミリシアルの航空隊は全滅したようです。』
「全滅か……敵の数は?」
『ムーの航空隊とエモール龍騎士団が善戦したようで、敵航空機は現在80機程です。』
「よし!ムーとエモールの犠牲を無駄にするな。各艦にミサイル攻撃を指示せよ!」
「了解!」
松田からの命令は直ちに各護衛艦に通達され、護衛艦みょうこう、チャンセラーズ・ビル、アンティータム、カーティス・ウィルバーからSM-2とSM-6ミサイルが同時に発射され、敵航空機群へと飛び去っていく。
「スタンバイ……マークインターセプト!」
数十秒後、SM-2とSM-6は全弾命中し、ほぼ同時にグラ・バルカス帝国の戦闘機と爆撃機、雷撃機を30機程を撃墜した。
『敵航空機群残存機、引き返していきます。』
「冷静な判断だな。敵航空隊の指揮官は引き際を心得ているようで助かった。」
敵攻撃隊はミサイル攻撃に驚いたのか、直ぐ様来た方角へと去っていく。
「敵艦隊の動きは?」
『敵空母機動部隊は後方に下がり、敵戦艦部隊は速力を上げてフォーク海峡入り口に到達します。』
「我々をこの海峡の中に閉じ込めておく気だな。よかろう!なら我々は全力でそれをこじ開けるまでだ!!この紀伊と米軍の力が合わされば不可能ではない!」
続く