「迎撃に上がった連中はどうだ?」
紀伊のCICで、松田は迎撃に上がったムー、ミリシアル、エモールの戦闘状況について確認する。
「こっちも覚悟しとかなきゃならんかな?」
新鋭艦まやからのデータリンクにより、紀伊と尾張を含めた全護衛艦にもたらされるリアルタイム情報は、紀伊のCICに備えられたメインモニターにもリアルタイムで表示されている。
メインディスプレイには双方の航空戦力を表した光点が映し出され、それが秒単位で次々と消滅していく。双方ともIFFを持っていないため、どれが敵か味方かの判別がつかないのがもどかしくある。
「向こうの空母が旧海軍の翔鶴型と同性能なら、1隻あたりの最大搭載数は72機。2隻で合計144機で、予備の機体を残してるとしてこっちに向かってくるのは120機前後か………敵機の数は?」
「144機でした。普通なら攻撃隊は2つか3つに分けて攻撃してくるのが普通なのに、何故一度纏まってに攻撃を?」
「相手は俺たちが知っている戦術と同じ方法で向かってくるとは限らない。相手の意図が読めないが、恐らく奴らの狙いは本艦と尾張だろう。向こうがどれだけの情報を持っているかは知らんが大和擬きのような代物を持つような連中なら、相手が自分達に対抗できる力を持ってるなら重大な脅威と捉え全力で潰しに掛かる。俺がグラ・バルカスの立場ならそう考えるがな」
「じゃあ上が大使の護衛に本艦と尾張に新鋭艦を着けたのもこれを見越しての事だったのでしょうか?」
「前からあの国に関する情報は得ていただろうし、向こうが港から出た時点で我々の派遣は決まっていたんだろうな」
松田らの言う通り対空、対潜、対水上戦闘に秀でた個々の能力を持つ新鋭艦揃いのこの護衛艦隊は、現状でグラ・バルカス帝国軍に対抗できる現状唯一の戦力であり、帝国が脅威として見ない方が可笑しな話であった。
事実、レーダーで捕捉されている敵航空機のらしきは真っ直ぐ艦隊に向かってきている。
「艦隊全艦対空戦闘用意」
全艦は直ちに対空戦闘態勢に入り、紀伊と尾張を中心に輪形陣を組む。
「敵航空機群、数128!」
「各艦にミサイル攻撃を発令!」
『まや』CIC
「艦長!旗艦よりミサイル攻撃発令出ました!」
「よし!対空戦闘用意!」
「了解。対空戦闘配置につけます」
攻撃指揮官が対空戦闘配置を示すベルのスイッチを押すと、艦内にベルが鳴り響き、各区画の乗員が飛び出すように通路を駆け抜けていき、隔壁閉鎖、配置が行われる。
「各部対空戦闘用意よし」
「EA攻撃始め!」
各護衛艦の電子戦装置から強力な妨害電波が敵に向けて放たれる。これで向こうは通信不能となったが、その間に攻撃準備を行う。
「目標群α、b、cの目標、艦隊に近づく」
「了解」
まやのSPYレーダーは艦隊に接近してくる128機の帝国軍機を捕捉、距離、速度を正確に捉えている。
「艦橋、第3戦速。面舵40度ヨーソロー」
攻撃指揮官の指示により艦橋の航海員達は舵を指示され方向へ操作し艦を動かす。
まやは敵が向かってくる方向へ向け転舵し、他艦も行動を開始し、全艦艦隊行動を開始した。
「目標群α、有効射程距離内に入る」
「艦長、攻撃します」
「了解」
「対空戦闘、近づく目標。SM-2攻撃はじめ」
攻撃指揮官の指示でミサイル発射担当員が発射警報を鳴らす。
「発射用意、発射!」
発射ボタンを押すと、前甲板VLSからSM-2が発射された。発射炎と共にSM-2が8発が撃ち上がり、SPYレーダーによる中間誘導により敵攻撃隊の方向へと誘導されるように飛翔を開始した。
「クソッ!何でこんな時に無線が故障するんだよ!」
グラ・バルカス帝国海軍の攻撃隊指揮官機を努める艦上攻撃機『シリウス』の後部座席に座っている通信手が無線機を叩く。
「大尉、無線使用不能!」
「肝心な時にコレか。ツイてないな」
指揮官の大尉は無線が使えない状況に愚痴を溢す。
「しょうがない。少し手間だが発光信号を使え。こちらの無線の状況を報せよ」
「了解」
無線手は発光器を使って自機の無線故障を知らせる信号を送る。その信号に他のシリウスからも次々と返答がやって来た。
「なんだって!?」
「どうしたんだ?」
「大尉、他の機も無線不調を訴えています!」
「どうなってるんだ?」
護衛艦隊からの電子妨害は有効に作用しており、攻撃隊のは耳を塞がれたような状況に陥る。
「仕方無い。各機は連携を密に、発光信号と手信号を活用し攻撃に向かう」
「了解。他の機に伝えます」
通信手が発光信号を行おうとした時、大尉は前方から何かが向かってくるのが見えた。
「何だ?」
向かってきたのは8つの光点で、それは真っ直ぐこちらを捉えて迫ってきた。
「敵か!?回避する!!」
回避しようとした時、発光体は信じられない速度で目の前まで迫ると、突然爆発を起こした。
「爆発………」
直後、彼の意識は途絶えた。
指揮官機のシリウスは機体に大量の穴を穿ち、炎上しながら落下していった。
超音速の目標を迎撃可能なSM-2は敵攻撃隊のシリウスに
『うわぁ!燃料タンクをやられた!!』
『エンジンが!エンジンが燃える!』
『機体制御出来ない!助けてくれぇ!!』
いきなりの攻撃に敵航空隊は大混乱となり、無線交信からも機体が破損したり、破片で負傷してパニックになる搭乗員の断末魔が入り乱れる。
「何が起きてるんだ!何が!」
「敵の攻撃だ!落ち着け!隊形を乱すな!」
冷静な副官が発光信号や手信号を使って必死に指示を飛ばす。しかしその間にもSM-2の攻撃は続き、シリウスとリゲルはその機数を次々と減らされていく。
「止んだのか?」
やがてSM-2による攻撃が終了する。
「クソ!良い様にされてたまるか!」
指揮を引き継いだ副官が発光信号と手信号を使って指示を飛ばす。
SM-2による対空攻撃が終了した隙を狙い攻撃隊は高度を下げて敵に少しでも接近しようとする。
『まや』CIC
「目標群α全機撃墜。目標群b、c、更に接近!」
「流石に全機撃墜は無理か」
SM-2の攻撃を潜り抜けた敵機が艦隊の防空圏内に入ってくる。
「シースパロー攻撃はじめ!」
目標群b、cに設定されていた艦爆隊に向けて、あきづき型4隻による艦隊防空攻撃が始まった。VLSから放たれる多数のESSM
「何が!?」
彼らが操る機体の真横を細長い何かが通り過ぎ、後ろに居た味方機に迫っていく。
それを察知した味方機は回避しようとするが、それは意思があるかのように急激に軌道を変えて喰らいついてくる。
「振り切れぇぇ!!!」
だがその叫びも空しく、それは機体を直撃し爆発していく。あきづき型4隻による迎撃を前に、攻撃隊は艦隊に近づけない。
「クソっ!何機生き残れるんだ!」
副指揮官は操縦桿とスロットルレバーを操作しながらもミサイルの標的になっていない事を祈りつつ、距離を詰めていく。
しかしその間にもESSM攻撃は続き、味方機は次々と消えていくが今は誰もが自分以外を気遣う余裕はない。ただ目標へ近付く事に全神経を使う。
「よし!此処からだ!」
そんな中でも、運良くミサイル攻撃を潜り抜け攻撃隊は遂に紀伊と尾張を攻撃圏内へと捉えた。
「何だありゃ!?デカイぞ!」
護衛艦に囲まれるように輪形陣の真ん中を航行する紀伊と尾張が彼等の目に飛び込んでくる。しかし、攻撃隊は2艦の艦容に恐れおののく。
「雷撃手、あの戦艦だけを狙えるか!?」
「デカイ的です!絶対に当てて見せます!」
攻撃隊は当初の予定通りに、紀伊と尾張に向けて隊を2手に分け急降下と水平方向からの接近を開始した。
続く
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