日本国召喚×不沈戦艦紀伊   作:明日をユメミル

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第6話

「アルカイド提督との通信は繋がらないのか?」

 

 

グレード・アトラスターの艦橋で、カイザルは通信士に問う。

 

 

「はい。何度も呼び掛けていますが応答ありません。恐らくこの世界特有の電離層の問題かと……」

 

「またか………自然て奴は本当に気まぐれだな。偵察機を飛ばして確認しよう」

 

「了解。偵察機、発艦用意急げ!」

 

 

 

 

直ちに水上偵察機が飛び立ち、前衛艦隊の予想現在地へと向かう。

 

 

「もうそろそろ予定地点だが」

 

 

 

偵察機は前衛艦隊の予想展開位置にたどり着く。パイロットと後席の通信士の目に衝撃的な光景が映った。

 

 

 

「何なんだ……これは…」

 

 

 

そこには黒煙を上げて沈没寸前の艦の姿があり、海面にはオイルや残骸、海面上の脱出ボートから上空の偵察機に向かって手を振る友軍水兵の姿が見える。

 

 

 

「まさか…全滅したのか!?通信士、直ちに報告!」

 

「了解!」

 

 

 

通信士は急いでグレード・アトラスターに報告を入れた。

 

 

 

「こちら偵察1号っ!前衛艦隊の予想展開位置に到着するも友軍艦全艦は撃沈破!付近の海面には友軍生存者あり!現状から、前衛艦隊は全滅したと思われる!」

 

 

 

偵察機からの報告は、カイザル達に衝撃を与える。

 

 

 

「全滅!?1隻も残らずにか………」

 

「あのアルカイド中将が……」

 

 

 

艦隊内部に不穏な空気が流れる。

 

 

 

この時カイザルは迷っていた。

 

 

 

(敵がどんな方法を使ってきたのか分からない今、いたずらに突入すれば我々も同じ道を辿る事になるやも知れん。)

 

 

 

回りを見回すと、艦橋要員がカイザルに視線を集中させていた。

 

 

 

(どうする?突入するか?それとも待ち受けるか?)

 

 

 

即断即決が求められる現状でカイザルは艦隊を海峡には突入させず、海峡出口で待ち受ける事となった。

 

 

 

 

 

 

しかし、そんな彼等を見つめる目があった事には誰も気付いていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『紀伊』CIC

 

 

「パイオニア、目標地点に到達」

 

 

 

メインモニターにはRQ-2Jパイオニアからのカメラ映像がリアルタイムでグレード・アトラスター以下のヘルクレス級戦艦3隻、駆逐艦4、巡洋艦2を上空から映した映像が鮮明に写し出していた。

 

 

 

「艦長、目標は後15分程で本艦の主砲の最大射程距離に入ります。」

 

「よし!連中をあっと言わせる物を見せてやろう。主砲発射用意、例のアレを試すぞ!」

 

 

 

 

それを聞いた瞬間、砲雷科の面々が水を得た魚のように興奮しながら準備に入る。

 

 

 

 

「敵艦の位置は分かるか?」

 

「はい。GPSで丸裸です!」

 

 

 

各主砲塔では自動装填装置により弾薬庫から、通常の徹甲弾や榴弾とは違うある砲弾が揚弾され、僅かな量の発射装薬と共に装填される。

 

 

 

(試製艦砲用誘導射程延伸砲弾………GPS信号を受信しつつ、目標に向かう精密砲撃用兵器。途中まではGPS誘導の下、内蔵のブースターで目標に向かい、目標近くになると砲弾を覆ってる外殻がはずれ小型フィンが展開し慣性誘導にて目標にトップアタックで直撃する……もはやミサイルだな)

 

 

 

この砲弾は日本がアメリカと共同で開発していたGPS誘導式射程延伸砲弾であり、島嶼防衛任務で上陸作戦前に敵地上部隊を攻撃するため数が限られるトマホークミサイルを補完するため開発されていたのだ。本来は対地攻撃用の物なので艦船を攻撃すると言う想定されていない使用方法で命中精度に不安が残るがGPSによる誘導なので通常砲弾に比べれば格段の命中率は期待できる。

現在、紀伊と尾張の弾薬庫には試験用の先行型が50発ずつが搭載されていたのである。

 

 

 

「全主砲、GPS誘導弾装填完了!」

 

「GPS並びにドローンとのリンク確認!発射用意完了っ!」

 

「目標、敵戦艦!各目標に対して10発ずつ射撃。主砲攻撃始めっ!」

 

「撃ち方始めっ!」

 

 

 

合図と共に紀伊と尾張から初弾6発が発射された。

撃ち出された6発の砲弾は設計通り一定の高度に到達すると格納されていた補助翼が開き、内蔵ブースターが作動しGPS誘導で砲弾は目標に向けて飛翔する。

 

 

「全弾目標捕捉!」

 

 

目標に接近すると砲弾の弾頭部に装備されたセンサーが目標を捕捉、小型フィンによる精密誘導が開始される。

 

 

 

「目標マーク!」

 

 

 

弾頭部のカメラ映像にはグレード・アトラスターを守るように展開していたヘルクレス級戦艦のほぼ真上から一気に迫っていく様子が見える。

 

 

「弾着、今っ!」

 

 

カメラ映像が砂嵐に変わると同時に砲弾のシグナルが消失した。これは砲弾が命中した事を示している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何だっ!?」

 

 

 

突然3隻のヘラクレス級戦艦から派手な爆炎と水柱が上がりカイザルは驚きの声をあげた。

 

 

 

『ラス・アルゲティ、コルネフォロス、マシム被弾っ!』

 

「被弾?馬鹿なっ!3隻同時にか?敵艦はまだ射程距離の遥か外の筈だぞ!」

 

「遠距離からの砲撃など早々上手く行く筈がありません。付近に着弾観測をしている航空機か潜水艦が居る筈です。至急確認を取ってくれ。」

 

 

 

ラクスタルはソナールームに確認を取るが、周囲には潜水艦の反応は無いとの回答が来たため、外に居る見張りにも周辺空域の確認をとる。

 

 

 

「防空指揮所っ!付近に航空機は居ないか?」

 

 

『確認出来ません!』

 

 

 

ドローンが居るのは知るよしもなく、見張り員の目にはドローンも只の鳥にしか見えないため自分達が見張られている事には気が付いていない。

 

 

 

「潜水艦でも航空機でもない………なら敵はどうやって砲撃を………」

 

 

 

 

その直後、被弾していた3艦の周囲に再び爆発が発生した。

 

 

 

『ラス・アルゲティ、コルネフォロス、マシム再び被弾っ!』

 

 

 

グレード・アトラスターが完成するまで帝国最大の戦艦であったヘラクレス級戦艦が瞬く間に火と黒煙に包まれていき、残骸が派手に吹き飛ばされていく。追い討ちをかける様に次々と砲弾が降り注ぐその光景は戦意の無い相手に確実に止めを刺すための所謂オーバーキルと言う言葉をそのまま表しているかのようだ。

 

 

 

『ラス・アルゲティ応答なし!コルネフォロスとマシムは航行不能との通信あり!各艦に総員退艦命令が出されています!』

 

 

瞬く間に戦艦3隻は無力化され、グレード・アトラスーの全乗員が戦慄が走った。

 

 

 

「我々は何を敵に回したと言うのだ……」

 

 

 

カイザルは誰にも聞こえないように、呟く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




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