精密砲撃が止み、主力たるヘルクレス級3隻い、本命のグレード・アトラスターのみとなった主力戦艦部隊は、どこから飛んでくるか分からない砲撃に備えながら海峡入り口から海峡に入ろうとしていた。
「よろしいのですか?」
「あぁ……どっちにしろ向こうは俺達を逃がさんさ。例え日本が見逃してくれたとしても、他の国が必ず追撃してくる。護衛戦力を失い、航空機の援護も失った我々だけでは彼らを相手にするには荷が重すぎる。皇帝陛下からの直々の作戦故に安易に撤退できないとなると、ここは撤退の口実を作るために敵と戦って損害を負った方がいい」
カイザルの考えは多くの部下を抱える立場にある人間として、ラクスタルはカイザルの事を尊敬している。それを承知で彼は無礼を承知で自分の考えを話す。
「閣下、私の個人的な意見として申し上げます。奴らが如何なる方法を使ったのかは分かりませんが相手はこちらのアウトレンジからほぼ正確に砲弾を直撃させる技術を持っています。しかも相手はあの巨大戦艦が2隻、現状に於いて我々は不利な立場です………しかし閣下もお分かりの通り、もう後には引けないのは分かってるのは我々乗員一同理解しています。ここは我々を戦艦乗りとして、敵に一太刀できる場を設けるご許可を頂けないでしょうか?」
カイザルはラクスタルの言葉を聞いて、敵と刺し違えてでも戦う意思があると感じた。流石に帝国最強の戦艦を任されているだけあってその覚悟にカイザルは彼らの心情を理解した上で、大きな決断を下した。
「いいだろう。戦艦乗りが我々だけではない事を敵戦艦の者達にも示して見せろ」
「はい!ありがとうございます!」
礼を述べると、ラクスタルは帝国海軍の紋章が縫い付けられた制帽を被り直し、改めて帝国軍人としての顔付きで、真後ろに立っている航海長に命令を下す。
「航海長、針路速度このまま。海峡に突入する!」
「了解!」
グレード・アトラスターは必死の覚悟を抱きながら、向こうが待ち構えている海峡に突入する。
『こちらレーダー室っ!12時の方向に敵艦の反応を捉えました!』
「よし!総員戦闘配備っ!」
海峡とカルトアルパス港の中間に差し掛かり、レーダー員からの報告を受け、ラクスタルは戦闘配備を指示する。全乗員は今まで相手してきた敵の中で破格の能力を持つ紀伊・尾張を相手に戦える事に興奮と不安を交えつつ配置に就く。
「各部配置完了!」
「レーダー室、相手との距離を逐一報告せよ!射撃指揮所、主砲砲戦用意!」
『了解!』
全主砲塔と副砲塔内で弾薬庫から自動装填装置により、砲弾の装填作業が始まった。
各砲塔の真下にある弾薬庫からエレベーターを使って、重さ1トンの46センチ砲弾が揚げられ、砲尾からレールを使って薬室に込められると、今度は火薬庫から送られてきた発射薬が詰まった円筒形の袋を詰め込み、閉鎖機が閉じられる。
各砲塔員達は砲弾の装填後、各部に不備が無い事を確認し砲塔長が電話機を使って艦橋に報告を入れる。
『第1砲塔、用意よし!』
『第2砲塔、用意よし!』
『第3砲塔、用意よし!』
報告を受けた砲術長が最後にラクスタルに報告行う。
「射撃指揮所、目標は捉えているか?」
『はい!今、測距儀の最大望遠で見えました。測距開始します!』
艦橋上の射撃指揮装置が紀伊と尾張が居る方向に向けられ、砲術員が光学レンズが組み込まれた測距儀を使い相手との距離や速度から着弾予想地点を計算し、その位置に照準を合わせて各砲に伝達する。
測距報告を受けた全主砲塔が右に旋回、砲身が上下に動き、射角と仰角を調整して射撃準備が整った。
「各砲、射撃用意よし!」
「警報!」
ラクスタルの合図で、甲板に居た乗員は艦内に待避し、警報が鳴り響く。
「撃てっ!」
鳴り終わった瞬間、グレード・アトラスターの3基9門の46センチ砲が一斉に火を吹き、最初の一撃が紀伊と尾張に向かって放たれた。
砲撃の閃光は、紀伊と尾張からも確認できた。
『敵艦発砲っ!敵弾、到達まで30秒!』
「向こうが先に撃ったか!総員衝撃に備えっ!」
松田は初弾は命中しないと踏み、衝撃に備える。
その直後、紀伊前方の海面に9つの水柱が上がり、激しい衝撃が襲い掛かる。
「これが46cm砲の振動か……各部、被害報告!」
「各部、異常無し!」
「今度はこっちの番だ!これより敵艦に対して統制射撃で行う!取り舵一杯っ!」
2艦はほぼ同時に艦隊運動にて左に旋回、主砲の射撃準備に入り、尾張も紀伊からの統制射撃指示にて紀伊と同じ方角に砲塔を向ける。
「交互撃ち方、徹甲榴弾装填っ!」
各主砲塔に備えられた3本の砲身のうち、真ん中の砲身が仰角を取るため上を向く。
「射撃用意よしっ!」
「警報っ!撃ち方始めっ!」
警報が鳴り響くと、紀伊と尾張の51センチ砲9門が一斉に火を吹き、衝撃波と爆音を周辺に響き渡せた。
続く
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