日本国召喚×不沈戦艦紀伊   作:明日をユメミル

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※8/10 加筆修正


第2話

ムー国の首都オタハイトには官民の行政機関が設置されており、その中にある空軍を統括する統括空軍本部があ置されたレンガ造りの庁舎がある。

厳格な面持ちの空軍本部庁舎の廊下を複数の人間が歩いていた。技術者を示す白衣を着用したマイラスと先進技術立証室の面々に加えて、空軍司令官と数名の空軍職員、日本大使館駐在の防衛駐在官が大理石が敷かれた廊下をある場所へと向かっていた。

 

 

「こちらです」

 

 

彼らは空軍本部庁舎の地下へと続く階段が設置された扉の前で止まった。

扉にはムー語で『関係者以外立ち入り禁止』と書かれたステッカーが貼られいる。

此処は地下倉庫への入り口であり、最近になって地下倉庫内の壁面や床面に亀裂が多数発見された事で、立ち入り禁止となっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、これは表向きの話であり、この扉の先の地下室には大きな秘密が隠されていた。

 

 

 

「どうぞ」

 

 

 

鍵が解錠され扉が開かれると、地下へと続く階段が目に入る。

彼らは鉄筋コンクリート製の頑丈な壁と階段で作られた真新しい階段を降りていき、やがて階段を降りきると、再び扉の前にたどり着いた。

 

 

 

「こちらが鍵となります」

 

 

 

空軍職員が首から提げられた一枚のカードを扉に設置されたキーパッドにスキャンさせ指紋認証と網膜認証を行うとロックが解除、扉が開かれると再び下へ降りる階段があり更に降りていく。

 

 

 

「長いな」

 

「警備上必要な物ですので」

 

 

 

階段を降りきると、やっと目的地の扉の前にやって来た。

 

 

 

「此処が?」

 

「はい。日本国と我が国の同盟の証です」

 

 

扉の真横に設置されている、キーパッドに再びカードを読み込ませ、再度指紋認証、網膜認証を経て最後に暗証番号を入力すると閉じられていた重厚な扉が左右にスライドするように開かれた。

 

 

「ほぉ……これが」

 

 

扉の向こうには、地下室とは思えない程に広い空間があり、空間の正面と壁面には大型液晶モニターにデジタル表示パネル、レーダースコープ、通信機器が設置されており、それらを運用する運用要員達が座っていた。

ムーの人間にとっては見たことも無いその空間こそ、日本とムーの繋がりを強くする物である、

 

 

 

「これが貴国で今後運用予定の防空システム、『MADGE』を統括する防空作戦指揮所となります」

 

 

これはムーの防空態勢や空軍力を飛躍的に向上させ、日本がムーをグラ・バルカス帝国からの防護壁とする戦略を示す最たる物で、初の本格的な技術支援の元に開発されたムー全土規模にもなる初の自動警戒監視組織『MADGE』システムだ。

この空間はムーの防空を一手に担うMADGEシステムを管制する防空作戦指揮所(ADCOC)で、ムーでは初となる近代的な軍事作戦指揮所でもある。

 

 

 

「凄い。まるでおとぎ話に出てくる船のブリッジのようだ」

 

「しかしこれ程の技術をよく導入に漕ぎ着けましたな」

 

 

「我が国の戦略の一環ですよ」

 

 

 

このMADGEシステムは、グラ・バルカス帝国の航空戦力研究で人工衛星やフォーク海峡戦で捕虜となった帝国兵からの聞き取りにより帝国の航空戦力や戦術が判明、現状のムーの航空戦力では到底対抗出来ないのと、ムーをグラ・バルカス帝国の防護壁とする戦略の一環として急遽開発されたもので、その性能は航空自衛隊でかつて運用されていたBADGEシステムをムー向けに最適化し、陸海空自衛隊や新生合衆国とデータリンクに対応し、地球世界の近代戦に対応できる性能を持っている。

 

無論、MADGEシステムを担うレーダーサイトはムー国内に既に複数設置されており、それらを運用する要員の基礎訓練は終了し既に各レーダーサイトと東西南北各方面の作戦指揮所(SOC)に配属されている。

数日前に極秘で行われた稼働テストで各SOCとの連接やリアルタイムでの情報共有能力に問題ないとの結果を残している。

 

 

 

「此処に居ればムーの空の全てを見渡している様だ」

 

「はい。我が国でこのような物を運用できる日が来るとは……いやはや、感極まりますな」

 

 

 

ムーの視点から見ればとんでもないくらいに魅力的な物で、何百億と言う金を払って導入に漕ぎ着けた代物である。

しかし、その高性能が故にブラックボックスとなっている部分も多く、ムー側が触れる事が出来ない箇所も多々あるため、MADGEの運用に関してムーと日本との間で以下の綿密な取り決めが行われた。

 

 

 

1.ムーはMADGEシステムの運用のみ行う事

 

2.システムのメンテナンスと教育は日本が全面的に担う事

 

3.ムー本土内に設置されているMADGEと連接した各レーダーサイトにはムー側からは技術者や日本側が認めた人間以外は置かない事

 

4.システム上に不備が発見された場合には直ちに大使館を通じて日本国政府並びに防衛装備庁に報告し、決してシステムの中核には触れない事

 

5.MADGEの運用要員はムーと日本政府がのみ認めた人物のみ行う事

 

6.MADGE運用要員は職務上知り得た事を外部に絶対漏らさない事。それを破った場合はムー国の司法により厳重な処罰が下される

 

7.MADGEシステム並びに各レーダーサイトの設置場所は完全に極秘とし、部外者が機密に触れる事はこれを絶対に認めない

 

8.各レーダーサイトの警備は特別に訓練を受けたムー空軍の警備要員でのみ行われ、それ以外の兵士並びに民間の警備会社ならびに民間組織への警備代行は絶対に行わない事

 

9.各レーダーサイトへの食料や飲料水、日用品等の物資は必ず厳格な品質並びに防疫検査に合格した物のみを使用し、レーダーサイトへの輸送は両国政府から認証を受けた代表者立ち合いの下行う事

 

 

 

以上の取り決めにより、晴れてムーでのMADGEの運用が決定されたのであった。

 

 

 

「これに使われているコンピューターは、一世代前の代物ですがグラ・バルカス帝国相手になら充分な性能を発揮できると試算します。数日前の稼働テストの結果から明後日のシステム運用開始に支障はありません」

 

 

 

防衛駐在官がそう説明し、マイラスらは日本の技術力の高さに改めて感心する。

 

 

 

「しかし目が優秀でも、実際に防空を担うのは航空機や防空火器だ。それの性能はどうなのだ?」

 

「はい。それでは例の試作機の組み立てが終わりましたのでお見せしましょう」

 

 

 

 

彼らははADCOCから退出し空軍庁舎を後にすると、今度はオタハイト郊外にあるオタハイト空軍基地へと移動した。

 

 

 

「おぉ」

 

 

基地のゲートを通って、基地内にある一角に移動すると、そこには航空機を格納する半月型のハンガーがあり、シャッターが開かれた格納庫内に2機の航空機の姿があった。

 

 

 

「これが貴国からの要請で開発された試作機です」

 

 

 

目の前には、かつて日本が技術開発に成功しながらも実戦配備が叶わなかった幻の海軍局地高高度迎撃戦闘機『震電』に似た航空機と、もう片方は大戦後に開発された初期のジェット戦闘機『F86セイバー』に似た航空機だった。

 

 

 

「凄い……2年でもう試作機完成に漕ぎ着けたとは」

 

 

 

この2機の試作機は、今から2年前に日本の兵器について纏められたミリタリー雑誌を手に入れたマイラスが雑誌内に掲載されていた『震電』と陸軍4式戦闘機『疾風』に目を付け、自国の航空機技術の向上を目指して上層部に開発と導入を進言していたものであった。

レイフォルでのグラ・バルカス帝国の航空機に関する情報からムー空軍上層部もグラ・バルカスとの戦争に突入した際にこの2機種が本土防空に最適であると判断し、試作機開発を提案、マリン以来の国家プロジェクトとして日本との共同開発となった。

 

 

 

「本来なら震電と共に、疾風も開発する予定でしたが、疾風はコンピューターでの設計シミュレーションの段階で貴国が求める性能を引き出すためのエンジンが我が国内には無く、1から開発となると更に数年掛かりますから、疾風開発は残念ながら断念する結果に至りました。代替案として震電にも追従可能で尚且つ我が国でも運用経験があるF86セイバーを基にした試作機を開発しました」

 

 

 

普通なら数年掛かる航空機開発をプロジェクト開始から僅か2年で2機種の試作機の製作に漕ぎ着けたのは、現存する実機やオリジナルの設計図を基にして設計変更や独自のアレンジを加えるのみに留まった事が非常に大きく、開発期間を大幅に短縮できたのである。

 

しかし技官の説明にある通り既に日本ではレシプロエンジンの戦闘機の運用はとっくの昔に終了しており疾風の実機も片手で数える程度しか残っていなかった事と、軍用機用のレシプロエンジンの製造設備が無い事、何よりもムーが実戦配備をかなり急いでいた事から、疾風の開発は時間とコストの面から中止されてしまった。

 

 

しかしその代替案として震電とエンジンを共有する純粋なジェット戦闘機の開発にシフトされ、航空自衛隊で長期間の運用実績を持つアメリカ製『F-86セイバー』の設計を元にした試作機の開発がスタートし、完成した震電型試作機には『X-1』、F-86型試作機には『X-2』との呼称が与えられ、今回のムーへの自衛隊派遣に合わせて貨物船によりムー国内に運ばれたのである。

 

 

 

 

「まさか2機ともジェット戦闘機となるとは……願ってもないことですが」

 

 

 

マイラスはX-1のジェットエンジンに目を向ける。

 

 

「よく、震電に合うジェットエンジンがありましたな?確か貴国内で運用している航空機用ジェットエンジンに、震電に合うエンジンが無かったと聞いていましたが?」

 

「えぇ。自衛隊機に拘らず民間が運用している旅客機のエンジンも探してはみたのですが、やはり震電に搭載するには何れも大き過ぎたり、小さすぎたり、サイズが合うヤツがあっても出力不足だったりしたので、取りあえず代用としてT-4練習機の開発過程で製造されたXF3-400試作エンジンを改良した物を搭載しています」

 

「航続距離の程は?」

 

「X-1は本来の震電のコンセプト通り高高度を飛行する爆撃機を迎撃するためのインターセプター徹した高速戦闘機ですので航続距離は短いですが、先ほどご覧になられたADCOCと上手く組み合わせる事が出来れば充分補えます」

 

「成る程………次に、このX2と言う機体はどのようになってるのですか?」

 

 

防衛装備庁の技官はX2の説明に入る。

 

 

「X2は、元々航空自衛隊が創設された当時に保有していたF86セイバーと呼ばれる機体を基にしています。当時のジェット戦闘機はまだ実戦配備が始まって間もない黎明期の物で、戦闘能力は今のジェット機とは比べ物になりませんが、セイバーは当時としては非常に優秀な設計だったので今回の疾風の代替機ベースとして選択しました」

 

「オリジナルとの違いは?」

 

「基本設計はオリジナルを踏襲しつつ、コックピットの手直し、機首の12・7㎜機銃6丁を震電と弾薬と武装共用のため同じ種の30㎜機銃2丁に換装、火器管制装置と連動した測距と照準用小型レーダーの搭載、エンジンも整備性と燃料共用化のため震電のXF3-400エンジンを搭載しています」

 

「その他には?」

 

「武装は主翼下のハードポイントを1箇所ずつ追加しています。オプションとして対地・対空両用のロケット弾が装填されたロケットポッド最大で6基、220キロ爆弾なら6発、航続距離延長用のドロップタンクなら2基搭載可能です」

 

 

「うむ!パーフェクトだ!」

 

 

ムーの主力であるマリンを遥かに上回る搭載量と航続距離、速度、固定火力にマイラスは身体から何かが沸き立つ様な感覚になり、空軍司令官はX-1とX-2のボディを撫でる。

 

 

 

「両機は現在テスト用の8機が運び込まれ、すべて当基地にあり、専属パイロットによる訓練は順調に進んでいます」

 

「後は我々がこれらを国産できるようになるまでが目標ですね。時間は掛かりそうですが、モノに出来れば我が国の航空産業は大いに発展できるでしょう」

 

 

 

ムーは日本の全面的な技術支援の基に、守りに於いては着実に進化しつつあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、それから1週間後

 

 

グラ・バルカス帝国、帝都ラグナの外れにある寂れた軍港に停泊している、帝国海軍第52地方隊『イシュタム』に所属するオリオン級巡洋戦艦『メイサ』の艦内では、将校クラスの面々が集まって会議を行っていた。

 

 

「いよいよですな少将」

 

 

『メイサ』の艦長である『オスニエル』大佐は、側にいたイシュタム司令官『メイナード』に話し掛ける。

 

 

「あぁ……散々冷飯を食わされてきた我々の存在を改めて知らしめる時がやって来た。今回のマイカル攻撃で我々がムーの息の根を止めてやる!」

 

「楽しみですなぁ……本当なら首都のオタハイトを叩きたかったのですが、例の巨大戦艦が相手では仕方ありません。奴には真正面で挑んでも到底勝ち目はありませんかは、其処は"彼ら"に任せて手薄なマイカルを蹂躙してやりましょう!」

 

 

何やら不穏な空気が流れるイシュタム艦隊は大雨の中、誰からも見送られる事なく、意気揚々とラグナの港から出港していった。

 

 

 

 

 

 

同時刻、帝国陸軍特別爆撃連隊基地では作戦に参加する超重爆『グティ・マウン』100機が強力なエンジン音を響かせたながら次々と基地から飛び立っていく。

アメリカのB36大型爆撃機並の性能を持つグティ・マウンは、基地から飛び上がると高度10000まで上昇してから編隊を組み、ムー大陸方向へ進路を向けた。

 

 

「全機に告ぐっ!遂に我々特別爆撃連隊の出番がやって来た!『タダ飯喰らい』『給料泥棒』『温室育ちの腑抜け共』……そんな陰口は今回限りでチャラにしてや廊じゃないか!これより我々はムーと日本の巨大戦艦の息の根を止めるための先鋒となるのである」

 

 

編隊指揮官『ベティッツ』中佐は無線機で隊の全乗全員に向けて士気を上げるための呼び掛けを行う。

 

 

「これより我々は目標到達まで無線封鎖を実施。今後は発光信号で各機間の連絡を行い、無線機の使用を禁止する。以上っ!」

 

 

 

無線が切られ、静粛を保った爆撃隊は目標目指し飛び去っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




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