ロウリア王国との緒戦となったロデニウス沖海戦で、大勝利を納めた日本とクワ・トイネ公国。
その海戦の報告は、ロウリア王国国王である『ハーク・ロウリア34世』の耳にも入った。
「艦隊1400隻……ワイバーン350騎…………」
ハークは上がってきた報告書を自室で何度も読み返し、怒りとも恐れともとれない感情に震えていた。
報告には例の日本国を名乗る海軍の超巨大艦1隻が、自慢の艦隊4000隻のうち1400隻を海の藻屑へと変えて、300騎のワイバーンを全滅に追い込んだとあり、最初は何の冗談かと思ったが、現実に出撃した艦隊は1隻たりとも戻ってはきておらず事実は現実味を帯始めていた。
「我々は何と戦っているんだ?」
得体の知れない恐怖が彼の心を支配し、その日は一睡も出来なかった。
一方で、海戦での大敗北の報はハークの判断により、軍の士気低下の恐れがあるとして、クワ・トイネ公国侵攻軍へは一部の高級幹部を除いて、徹底的に隠蔽された。
「……………」
ロウリア王国東部諸侯団クワ・トイネ先遣隊本部では、極秘分として上がってきた報告に重苦しい空気に包まれていた。
「4000隻の戦力を持った艦隊が壊滅にワイバーン350騎が未帰還………こりゃ上も隠したがる訳だな」
東部諸侯団を率いる『ジューンフィルア』侯爵はそう呟く。
「魔導師ワッシュナーよ、日本国について、どう思う?意見を聞かせてくれないか?」
側に居た魔導師『ワッシュナー』が答える。
「そうですね………帰還した騎士団の生存者からの報告と、魔力探知に反応が無かった事から、相手は高威力の魔法を使った可能性は低いと思われます」
「では、艦隊壊滅と騎士団350騎未帰還はどう説明する?」
「帰還した生存者の中に絵の心得がある者が居て、その者が書いた敵の巨大艦の絵があります」
ワッシュナーはそう言って紀伊が書かれた絵を机の上に出した。ジューンフィルア以下の幹部達は紀伊のスケッチを食い入るように見つめ、ある事に気がつく。
「まさか、この船についているこれは……」
「はい。恐らくこれらは魔導砲の類いかと思われます。巨大な物と小型の物に大きく分けられており、騎士団はこの巨大な砲による砲撃の直後に鎧を溶かす程の高熱の火に焼かれたそうです」
紀伊のスケッチには巨大な3連装主砲塔、副砲塔、速射砲、CIWSが細かく描かれており、あの状況の中でも此を書いた者の高い観察力が見て取れる。
ジューンフィルア達の脳裏は、これらのスケッチや生存者からの報告が、嘘偽り無い現実だという事に取って変わった。
「いかが致しますか?」
「まだ我々には地上戦力がある。それにこの作戦はあのアデム副将からの指示だからな………クワ・トイネのワイバーンの攻撃はあるだろうが、当初の指令通りに、ホーク騎士団による威力偵察を出そう。偵察後は城塞都市エジェイ西3キロ地点に移動するぞ」
「は」
ジューンフィルアは、ギムの町で虐殺をやらかしたアデムの残虐な性格を知っているため、触らぬ神に祟りなしと考え、予定通りにホーク騎士団による威力偵察を指示した。
続く