「ハープーン、全弾命中っ!」
「「「「「うぉぉぉぉぉ!!」」」」」
CICに砲雷長の報告が響き、その場に居た乗員達が感嘆の声をあげる。そんな中でもミニラルは冷静な態度を貫いていた。
「目標の動きは?」
「速力低下、間も無く停止します」
「停止と言う事は機関をやられたか?もう片方は?」
「第1目標と同じです。敵艦隊はハープーン着弾直後より動きが活発になりつつあります」
「蜂の巣を突付いたような騒ぎとはこの事だな……恐らく向こうは大慌てだろう」
ミニラルの言う通りイシュタムは突然の対艦ミサイルの攻撃に晒され、空母シェアトが轟沈、シェダルが航行不能にされた事によりパニックに陥っていた。
オスニエルが乗り込むメイサには矢継ぎ早に報告が舞い込んでくる
「シェアト轟沈!!メイナード大佐、ネイト中佐両名とも消息不明!!」
「シェダルより報告。艦載機格納庫より火災が発生し消火不能並びに航行不能。浸水も発生し傾斜増大中、総員退艦を命じたとの事です!」
「クソっ!一度に2隻の空母が…」
メイサの艦橋からオスニエルは先程、2隻の空母に突入してきた正体不明の飛行物体が何だったのかを考える。
(あの飛翔体は寸分の狂いなく我が方の空母に致命傷を与えた……もしかしたら半年前のカルトアルパス戦で日本艦隊が使用したと言う誘導爆弾の攻撃だとしたら!?)
事前の情報で、マイカルには日本艦隊の艦船が2隻とラ・カサミ級戦艦が1隻しか居ないと報告を受けていた。旧式戦艦3隻相手なら押しきれると考えていたが、まさか相手が誘導弾を持っているのは寝耳に水だった。オスニエルは自分達が敵の術中に態々入っていた事に恐怖した。
(撤退するか?…いや、撤退すれば恐らく軍法会議ものだ……只でさえ我々は問題児の集まり、上からも疎まれている。ここは全滅覚悟でマイカルに向かうか……)
オスニエルは艦内放送マイクを手に取る。
「達する!艦長のオスニエルである!現在艦隊は司令ならびに副司令が敵の攻撃を受け戦死、艦隊指揮は先任であるこの私が執る!以後は私の指示に従うように!」
メイナードが戦死した事により、艦隊の指揮権はオスニエルに委ねられた。彼はミサイルの脅威を前にしてそのまま艦隊を目的地に向けて前進させた。
「敵空母2、完全に停止。1隻は沈没、もう1隻からは爆音と浸水音が聞こえます」
「先ずはムーが先手を取ったな」
イシュタムの遥か後方に居たせとしおは、戦果を確認していた。ソナーからは沈没していく艦の船体から漏れ出る空気が海中で気泡になって弾ける音と、航行不能となったシェダルから爆音と浸水音、金属の軋む音が聞こえてくる。
「これで敵は航空戦力が使えなくなった。向こうに残された選択肢は撤退か、作戦続行の2つしかない訳だが、どう出ると思う?」
「普通なら撤退以外は無いと思われますが……」
「普通ならな……だがここは異世界で向こうは我々と同じ別世界の住人だ。どんな思考を持っているか分からん以上はどう転ぶかな?」
場面はラ・カサミ改に戻る。
「艦長、2隻目の敵空母の反応消えました。敵空母全艦轟沈と判定します」
「うむ、重大脅威は始末した。後は残りの戦艦と巡洋艦、駆逐艦が問題だな。速力と機動力は同等だが、数の上では負けている。駆逐艦なら砲力を使えば何とかなるが、巡洋艦6隻となると厳しいな」
「艦長、残りのハープーンを使って敵重巡を先に片付けますか?」
「そうだな。ハープーン再攻撃!」
「了解っ!目標変更!敵巡洋艦4、ハープーン攻撃始めっ!」
「撃て!」
2基目の発射筒から残りのハープーン4発が撃ち出された。
こちらも敵巡洋艦6隻のうち4隻にハープーンが命中し、間も無く無力化された。
「敵巡洋艦4、行動停止っ!」
「残りの艦は?」
「増速しています!真っ直ぐ我が方に向かって接近中っ!」
「次の攻撃段階に入るっ!砲雷撃戦用意っ!最大戦速っ!」
敵巡洋艦の増速に合わせてラ・カサミ改も速度を上げる。
「敵艦視認!」
艦橋の見張り員が双眼鏡で敵巡洋艦が水平線上に現れたのを確認した。それと同時にラ・カサミの主砲の射程圏内にも入った。
「砲術長、主砲攻撃用意!目標は向かってくる巡洋艦の兵装のみ!」
「沈めないのですか?」
「後に敵戦艦とやり合うんだ、弾が勿体ない。兵装を使えなくして戦闘不能にすればそれでいい」
「了解!」
ラ・カサミ改には主砲と速射砲を管理する砲術員が1人ずつ配置され、合計で4人の砲術員が居る。4人とも砲の射撃能力については統括軍でも5本の指に入る程の実力を持っている。実際に半年間、海上自衛隊から受けた射撃訓練でも好成績を叩き出している猛者ばかりである。今回のように敵艦への直接砲撃なら彼等の出番であった。
「よし、主砲の射線を確保!敵艦の右へ回り込め!面舵一杯っ!最大戦速っ!」
ラ・カサミ改は射線確保のため面舵をとり、敵艦の右に回り込むと主砲を敵艦に向ける。
「敵巡洋艦に対し、90度の位置に達しました!主砲、速射砲射線確保っ!」
「砲術長、全目標一発ずつで仕留めろ。ここからは時間との勝負だ……敵に反撃の隙を与えるんじゃないぞ!」
「了解!全主砲射撃管制、手動にて行う!」
砲術員達は、コンソールのディスプレイに表示されるガンカメラからの映像を頼りに、ジョイスティックを使って砲を遠隔操作しながら敵巡洋艦の主砲塔と魚雷発射管に照準を合わせる。
「第1目標は敵艦主砲塔、第2目標は魚雷発射管っ!射撃用意よし!」
「撃てっ!」
主砲担当の砲術士2人が同時にトリガーを押し、2基の30センチ連装主砲が火を吹いた。
放たれた30センチ砲弾4発は敵巡洋艦の主砲塔に直撃した。
「第1射全弾命中っ!第2射照準よし!」
「続けて撃て!」
続いて第2射が放たれ魚雷発射管に直撃、格納されていた魚雷に誘爆し派手な爆発を起こし炎上する。
「第2射全弾命中っ!副砲群、制圧砲撃始めっ!」
左舷の舷側に装備された10式戦車の主砲を改造して作られた120ミリ副砲が連続砲撃を開始した。自動装填により高い連射速度を誇る副砲から次々と撃ち込まれるAPFSDS弾とHEAT弾による混合射撃は装甲の薄い敵巡洋艦を上部構造物を破壊していき、やがて敵巡洋艦の艦橋にも直撃弾があり完全に沈黙した。
「第1目標沈黙っ!第2目標、巡洋艦より砲撃っ!」
「回避っ!」
最初の敵巡洋艦を無力化すると直ぐに、もう一隻の巡洋艦が砲撃してくる。直ぐに回避行動を取った事が幸いし敵弾2発が直撃したが舷側装甲阻まれ、別の砲弾は海面に落下する。
「敵弾命中!」
「損害報告!」
機械室に報告を求めると、直ぐに損害無しとの連絡が入った。
「損害確認できず、戦闘続行可能!」
「主砲攻撃」
「了解!」
直ちに2隻目の敵艦へ向けて攻撃態勢に入る。
「照準よし!」
「撃てっ!」
第3射が放たれた。4発のうち3発が主砲塔、1発が敵艦の艦橋に命中した。
「第3射全弾命中!第4射用意よし!」
「撃てっ!」
第4射目で敵艦の主砲と魚雷発射管を破壊した。兵装破壊と同時に副砲による制圧射撃の後、2隻目の敵艦も沈黙する。
「敵艦沈黙を確認っ!炎上中!」
「後は戦艦1と駆逐艦が12か……」
ミニラルは未だに残っている戦艦メイサと駆逐艦12隻との戦闘を前に改めて気を引き締める。
続く
皆様からのご意見とご感想お待ちしております