「クソォォ!!」
アルーを占領した第4機甲師団の本部が置かれた市庁舎会議室で、ボーグの怒鳴り声が響き渡る。
それもその筈で、当初の目標であるアルー占領は成し遂げたものの、部隊は少なくない損害を負い、敵を取り逃がした挙げ句、果てにはアルー内に敵に関する情報や手掛かりは何も無し。
「戦車隊は4割の数の戦車を損失、敵に損害を与えられなかったどころか、全て取り逃がし、アルーは空っぽ……………今まで我々がこんな屈辱を受けた事があるか!?」
彼の怒り様に、参謀や他の幹部達は何も答えられない。
「閣下、少し落ち着きましょう。今後の士気にも大きく関わるかと…」
見かねた参謀長がボーグを何とか宥める。
ボーグも彼の言葉に、少し冷静さを取り戻し、椅子に腰掛ける。
「そうだな……君の言う通りだ。すまん…」
「いえ…………閣下、当初の予定通りにキールセキへ向かいますか?」
「そうしたいんだが、第1次攻撃隊は全機消息不明………部隊の損害の事もある。電離層による障害が何時まで続くか分からん以上は、迂闊に攻勢には出れん。1日はここで止まろう」
「分かりました。野営と言う形でよろしいですね?」
「あぁ」
ボーグは慎重な男である。
予想を越える反撃と敵の実力を目の当たりにした以上は、いたずらに軍を動かせない事は理解しているため、アルーに止まる判断を出す。
「副官、至急基地へ伝令を出してくれ。ガオグゲル閣下に援軍要請だ」
「了解。第11偵察団から1個分隊を出します」
ここへ来てボーグはバルクルス基地に居るガオグゲルに援軍要請を出すため、急遽、第11偵察団の偵察隊員4人を伝令兵に任命し、バルクルス基地へと向かわせた。
「動いたな」
だが、アルーより東にある小高い山の中腹に設けられた古い小屋からその様子を見ている影があった。
『バッドカルマからオメガへ、アルーより小規模の人出あり。敵の伝令兵らしい。1個分隊4名がバルクルス基地方面へ向かっている。始末しろ』
小屋の中から無線機とナイトビジョンを使って、左頬に傷があり、頭にはバンダナ、陸自の2型迷彩服を着こなした自衛官らしき男の姿があった。
「おい!」
「はい!」
小屋の外から同じ迷彩服2型を着た、ひ弱そうな青年が入ってきた。
「何処へ行ってた?」
「すみません。ちょっと小便に…」
バンダナをした男が、男を殴り倒す。
「お前は本当に役立たずだな!俺達がここに居る目的を忘れたか!外で見張りやってろ!」
もう一回殴られた男は、半泣きになり、殴られた場所を押さえながら外へ出ていく。
(チクショウ……)
その頃、アルーからバルクルス方面へ続く街道側にある叢の中では……
「バットカルマからだ。アルーから1個分隊がバイクで向かってきているらしい。伝令兵かもしれないから、始末しろとさ」
叢に隠れていた、3人の迷彩服姿の男のうちの一人である、黒いベレー帽を被った男が言う。
「なら、クレイモアを使うか?」
「爆音が響く。俺に良い考えがあるんだ」
ベレー帽を被った男が、懐から黒に塗られたピアノ線を取り出し、片方を側にあった木の幹に括りつけ、もう片方を道の反対側にある木に括りつける。
「子供の時によくやってた典型的なトラップさ」
「そんなんでバイクとか転ばせられるんですか?」
「ピアノ線はあんなに細いが強度があるし、簡単に切れる事は無い。敵がそれにかかって転んだ所を殺るぞ」
3人は、自衛隊制式ではないMP5SD6サブマシンガンを手に、伝令兵達を待ち伏せる。
「来た!」
西から、ライトを点灯したサイドカー2台がやって来た。
「よし……」
第11偵察団の偵察兵4名は何も知らずに全速力でサイドカーを走らせている。おまけに夜の暗闇で辺りの視界は悪い。
「来るぞ」
3人はMP5SD6を構える。
その直後、ピアノ線に先頭を走っていたサイドカーが引っ掛かった。全速力でピアノ線に引っ掛かったサイドカーは前のめりに倒れ乗っていた帝国兵は弾き飛ばされ、後ろから来たもう一台がひっくり返った先頭車に激突し停車した。
「撃て」
合図と共に3人が同時に引き金を引き、伝令兵4人にそれぞれ一発ずつ弾丸を撃ち込み、絶命させた。
「
「よし。ボディーカウントと武器、無線機、敵の情報関連の物を回収だ」
3人は叢から出ると、射殺した伝令兵の死亡を確認して武器や身分証、バイクに搭載されていた無線機やバッテリーを回収する。
「コイツ将校みたいだな……旧陸軍の将校服と似てるぞ」
「小松さん、コイツらの銃、旧軍の14年式拳銃と44式騎兵銃にソックリですよ!」
3人のうちの1人が嬉しそうに、伝令兵が持っていた武器を見せる。
「田中よぉ、お前って本当にそう言うの好きな……」
「て言うか奴さん、何でこうも旧軍に似てるんだろうな?」
ブーニーハットを被っていた1人がグラ・バルカス軍が旧軍に似ているのかと言う疑問を口にする。
「取りあえず死体は埋めておこう。後、バイクはちゃんと隠せよ。地面に落ちてる血も消すのを忘れるな」
3人はバイクを近くの叢の中に隠し、死体を埋めて、地面に落ちていた血痕も隠し、痕跡を消し去ると又その場から居なくなった。
結局この日、ボーグの援軍要請はバルクルス基地に届く事は無かった。
続く
久しぶりに押し入れからオメガJの単行本を見つけて来まして、急遽登場させました。
皆様からのご意見とご感想お待ちしております。