日本国召喚×不沈戦艦紀伊   作:明日をユメミル

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第17話

第4機甲師団がアルーを占領してから1日が経過した。

 

 

「伝令兵はまだ戻って来ないのか?」

 

「はい。予定ではそろそろ戻ってきても可笑しくはないのですが………」

 

 

ボーグは、バルクルス基地に向かわせた伝令兵が未だに戻って来ない事を若干の苛立ちを覚えていた。

 

 

 

「もしや、敵の伏兵に襲われたのでは……」

 

「伏兵か………そう言えば、越境した時も敵の姿は無かったな。有り得ない話ではない」

 

「捜索隊を編成して、周辺に展開させますか?」

 

「いや、ここは敵の領域内だ。地の利では向こう側が有利なこの状況下では、却って危険だ。早急な援軍が望めない以上は、我々だけで何とかやるしかない」

 

「しかし制空権は未だに敵の手中です。制空権を確保しない事にはどうにもなりません」

 

「なら、敵機が飛べない夜間に進撃しよう。夜戦ならこちらが有利だ。夜間装備を整え今日の夜に動くぞ」

 

「了解!」

 

 

 

ボーグは航空機が飛べない夜間に、キールセキへ進撃する事を決め、第4機甲師団は夜戦に備えて休息に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、キールセキ駐屯地司令部

 

 

 

 

 

「陸将、敵は夜に動くようです」

 

「分かった。やはり盗聴器を残して正解だったな」

 

 

 

キールセキに設置された司令部で大内田達はその報告を受けとる。

大内田達がボーグの決断を知り得たのは、先日アルーを撤退する際に、敵が司令部として使用するであろう市庁舎や、講堂、学校施設などに盗聴器や隠しカメラを設置しており、それらを市ヶ谷駐屯地から出向してきた自衛隊指揮通信システム隊の盗聴係が24時間態勢で盗聴していたからである。

司令部の地下に作られた作戦室内に設置されているモニターにはボーグら帝国軍幹部達の様子や会話が隠しカメラにより捉えられており、盗聴係が会話の内容や敵の指揮官達の顔や名前、階級などを細かく記録していく。

 

 

 

 

「最初にアルーを敵に明け渡したと聞いた時には驚きましたが、それはこのためだったのですね」

 

 

 

大内田と共に司令部に詰めていたハッテン少将と、キールセキ駐屯地司令官の『マクゲイル・セネヴィル』大佐が驚きと関心の声をあげる。

 

 

 

「戦うだけが戦争ではありません。敵の情報を得るのも戦争の手段の1つです」

 

「うむ、大内田殿の言う通りだ。もし貴殿方の援軍が無ければ我々は酷い屈辱を受けてただろう」

 

 

 

マクゲイルは最初に抱いていた自衛隊に対する不信感を拭い、大内田達に対して期待を寄せている。

 

 

 

「ですがここからです。貴国の平和のための戦いは始まったばかり。敵を殲滅してでも戦いに勝たなければ」

 

 

 

平和を守るための存在である幹部自衛官から『殲滅』なんて言葉が出たら、驚くのは無理はない。しかし誰も彼に対して質問も疑問も抱かなかった。

 

 

 

「では我々も備えましょう」

 

 

大内田の命令により空洞山脈付近で待機している第7師団の各部隊は作戦に備える。

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてその日の深夜0時

 

 

 

アルー近辺を飛行している航空自衛隊の無人偵察機のカメラがキールセキ方面へと続く空洞山脈へ向けて動き出す帝国陸軍第4機甲師団を捉えた。

 

 

 

「陸将、敵機甲師団が動き出しました」

 

「来たか。待機中の各部隊に戦闘準備を下命!」

 

 

 

大内田は空洞山脈付近と山脈内に待機している戦車連隊、普通科連隊、特科連隊、対舟艇対戦車部隊、ヘリ部隊等の各部隊に戦闘態勢を下命した。

 

 

 

 

 

 

その頃、第4機甲師団は……

 

 

 

「今日は月が出てない……夜襲にはピッタリだな」

 

「全くです」

 

 

 

戦闘指揮車内から空を視ていたボーグの言葉に参謀長も同意する。地球のように、この世界にも新月と同じ現象が起き、夜が真っ暗な日がある。今回は偶然にもその日に当たってしまったがボーグ達にとっては好都合である。

 

 

「閣下、間も無く空洞山脈に到達します」

 

「よし。前衛の偵察隊には周辺の偵察を徹底するよう伝えろ」

 

「了解」

 

 

 

師団の前衛を勤める偵察部隊は、本隊に先行して空洞山脈内に突入する。

 

 

「スゲェ」

 

「幻想的だな」

 

 

山脈内はまるで白い軽石の柱が蜘蛛の巣状に張り巡らされ、自然が生み出す神秘すら感じられる。偵察隊はその内部構造に魅了されながらも、自身の仕事を忘れる事なく周辺の偵察に入る。

 

 

「これだと移動には難儀するな。殆ど網の目状じゃないか」

 

「道も広い所と狭い所が極端だ。天井が低い場所もある。真っ直ぐ通り抜けるのは難しいな。下手に動いたら崩れるかもしれん」

 

 

偵察隊は何とか戦車が通れそうな道を見つけ、マッピングを行うが、外の光が届かないのもありライトの光を頼りに師団本隊を山脈内へと無事に誘導、本隊の山脈内の移動を支援する。

 

 

 

 

 

『敵部隊視認』

 

 

しかし、石柱の陰に緑と茶色の2色迷彩塗装が施された第71戦車連隊第1中隊所属の10式戦車がエンジンを切り、息を殺すように潜んでいた。

 

 

『戦闘配置』

 

 

中隊を指揮する中隊長が乗り込む10式の砲塔上面にあるカメラが第4機甲師団の戦車と装甲車が放つ熱源を捉え、その映像を中隊全車にリアルタイムで送信する。

 

 

「本当に旧軍の戦車にソックリだな。中戦車の方は97式、軽戦車の方は95式か」

 

「ライフル弾を防ぐ程度の装甲しか無いらしいです。徹甲弾じゃ命中箇所の反対側も貫通してしまいますから、対榴を使いますか?」

 

「やってみよう。全車、これより『ジップロック作戦』を始めるぞ」

 

 

 

今回の任務で第1中隊は、空洞山脈内に侵入した第4機甲師団の退路を断つための袋とじ係を勤める事となっている。

中隊長の指示で、息を潜めていた第1中隊の10式戦車14両はエンジンを始動させ、第4機甲師団の退路を断つように展開し、背後から目標を捉える。

 

 

 

「中隊各車、目標敵戦車、装甲車!対榴撃てっ!」

 

 

 

中隊長の合図と共に14両の10式から同時に対戦車榴弾が放たれ、山脈内に砲撃音が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




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