日本国召喚×不沈戦艦紀伊   作:明日をユメミル

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第18話

空洞山脈内を移動する第4機甲師団の最後尾を走行する、第4戦車連隊の2号戦車ハウンドⅡの車長『マルタ・ノッテボーン』軍曹は車内に居る部下と話をしていた。

 

 

「こうも見通しが悪いとライトだけって言うのも不安だな。操縦手、前の車輌のライトは見えてるか?」

 

『問題ありません。暗いお陰でよく見えます』

 

 

 

ハッチから身を乗り出していたマルタはハウンドⅡに装備されているライトや他の車両のライトの僅かな光を頼りに周囲を見回しながら操縦手に指示を送り続ける。

 

 

 

「これじゃ何処から撃たれるか分からんな。もしかしたらもうそこまで忍び寄ってきていたりしてな」

 

 

 

彼は、アルー侵攻で友軍の戦車が多数撃破されているのを目の当たりにしているため、全神経を尖らせて警戒する。

 

 

 

「ん?」

 

 

自車のエンジン音に混ざって『バン!』と言う音が聞こえた。

 

 

「うぉっ!な、何だ!?」

 

 

その直後、前方の先頭車両と後ろに居た殿役の車両が同時に爆発、炎上した。

 

 

「攻撃か!?」

 

 

マルタは攻撃を受けたと判断し、部隊間交信用無線の回線を開いた。

 

 

「こちら第4戦車連隊3号車!敵襲を受けた!」

 

『何!?本当か!』

 

「間違いありません!指示願います!」

 

『よし!全車戦闘用意!敵は後方と側面から仕掛けてきている!可能な限り敵の視界から逃れる様、極力戦闘は避け敵を振り切れ!』

 

 

 

戦闘指揮車からの指示で第4機甲師団は鞭を打たれたかのように移動速度を早め、一刻も早く空洞山脈を抜けようと出口方向へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こちら第1中隊、目標増速。出口へ向かっている」

 

『了解。中隊はそのまま、敵を出口に誘導せよ』

 

「了解。全車、敵のケツを引っ叩き続けろ!」

 

 

第4機甲師団の後方から奇襲を仕掛ける第1中隊の10式戦車は暗闇にも関わらずネットワークシステムを駆使した目標の振り分けによりオーバーキルを防ぎ、弾を無駄遣いする事なく次々と撃破していく。

 

 

『指揮車より中隊各車。前進』

 

 

敵を追い込むため中隊は敢えて目立つように車体前面のライトを点灯しゆっくりと前進を始める。

 

 

 

 

 

 

「敵車輌灯火確認!前進してくる!」

 

 

10式の車影は追い立てられていた第4機甲師団側からも見えており、各々の車輌が砲塔を左右後ろに向ける。

 

 

「クソ!見てろ!」

 

 

マルタは装填手に砲弾を装填させる。

 

 

『装填よし!』

 

「砲手、狙えるか?」

 

『明かりに向けて撃てば良いですか?』

 

「そうだ!撃て!」

 

『了解、撃ちます!』

 

 

砲手が引き金を引くとハウンドⅡの47ミリ砲から徹甲弾が放たれた。砲弾は1両の10式戦車の砲塔右側を掠めた。

 

 

「当たったのか?」

 

 

暗くてあまりよく見えなかったが、火花が散ったのが見えたので直撃したと確信したマルタだったが、狙った光源がブレた様子もなく、速度を保ったまま追いかけてきているのを見て撃破出来ていないと悟った。

 

 

「掠っただけか?次弾装填!」

 

 

装填手が次弾を装填し、砲手が照準器を覗き込む。

 

 

「撃ち方待て!砲塔旋回、機銃用意!」

 

 

マルタは砲塔を旋回させ、後部にある機銃を後ろに向ける。

 

 

「7号車!こちら3号車だ」

 

『どうした?』

 

「こっちが機銃の曳光弾で目標を指示する。そっちが撃ってくれ!」

 

『了解!』

 

 

マルタは敵側のライトの明かりだけではよく狙えないと判断。自車の機銃で曳火射撃を行い、その光で別の車輌に目標を指示して砲撃を行わせようと考えた。

 

 

「機銃撃て!」

 

『了解!』

 

 

砲手が機銃の引き金を引くと、銃身から通常弾と混じって曳光弾が放たれた。

 

 

「もう少し下を狙え」

 

 

曳光弾の光が追い上げてくる10式戦車のシルエットを照らした。

 

 

「敵は大物だな。7号車、見えるか?」

 

『見えてる!デカイぞ!』

 

「外すなよ!撃て!」

 

『撃て!』

 

 

7号車が10式に向けて砲撃する。47ミリ徹甲弾は10式に命中した。

 

 

 

『どうだ?』

 

 

マルタは目を凝らしながら目視確認を行う。

 

 

「クソ!外れたか!」

 

 

 

曳光弾の光のみのためマルタには砲弾は命中していないように見えたが、実際は10式の砲塔に砲弾は命中していた。しかし直撃したのが砲塔前面装甲のため砲塔に装着されているモジュール式複合装甲に弾かれており、表面の塗装を剥がした程度であった。

 

 

 

「この洞窟内で戦車戦は不利だ!全部隊増速!出口へ急げ!出口で山脈を抜けたら態勢を建て直し、今度は我々が敵を山脈内に閉じ込める!」

 

 

第4機甲師団は進撃速度を上げて空洞山脈出口へと向かっていく。

 

 

 

 

 

『中隊指揮車より師団本部。敵部隊出口に向けて増速』

 

「陸将、敵機甲師団は空洞山脈を出ます」

 

「特科、射撃開始」

 

 

 

キールセキ駐屯地に待機していた第7特科連隊の99式、FH-70が北の空に砲身を向け射撃態勢に入る。

 

 

 

 

 

 

 

「おい!早く空洞山脈を抜けられないのか!」

 

「間も無く出口に到達します!」

 

 

ボーグ達、第4機甲師団の幹部達は、後方と側面からの攻撃を前に、戦車・歩兵部隊に甚大な被害を出しながら、全速力で空洞山脈出口へ向けて進んでいた。

 

 

『こちら第2旅団!被害甚大、団は壊め……ガガ!』

 

『こちは第3旅団!隊の8割がやられた!誰か指揮を執ってくれ!』

 

 

前線指揮車内の無線機に各部隊からの被害報告が矢継ぎ早に飛び込み、ボーグ達は最早対応に手一杯な状態だった。

 

 

「被弾した車両は放棄!無事な兵は他の車両に乗り込め!指揮官戦死の隊は周辺の隊の指揮下に入るか、指揮を執れ!何としてもキールセキに行くぞ!」

 

 

 

その中でもボーグは平静を保ちつつ、指示を下す。

 

 

 

「閣下、出口を視認!」

 

「よし!敵の懐に入ったぞ!戦車隊を前衛に突撃!」

 

 

 

第4機甲師団は戦車隊を先頭にして、後方から歩兵を乗せた車両部隊が続く。

 

 

 

「よし、出たぞ!全車、キールセキに向けて行くぞ!」

 

 

 

先に洞窟を出た戦車隊は隊列を組み直し、横列体型でキールセキに向けて動き出した。

 

 

 

『弾着………今!』

 

 

その時、辺り一帯に猛烈な爆発と閃光が発生した。

戦車と装甲車は、多数の爆発に飲み込まれていく。

 

 

 

「初弾命中!同一諸元、効力射!」

 

 

遥か前方に設けられた観測所から、特科連隊の観測員達が連隊が居るキールセキへ向けて着弾修正と効果の確認を伝える。

 

 

 

『第2射撃て!』

 

 

 

FH-70、99式、M110から第2斉射が行われ、155㎜と203㎜榴弾が第4機甲師団に降り注ぐ。

爆発によって戦車と装甲車は木の葉のように舞い飛び、ひっくり返る。

 

 

「うぅ……」

 

 

運良く、攻撃範囲ギリギリ外側の山脈出口内側に居た前線指揮車に居たボーグは延々と続く砲撃に、耳を塞ぎ、蹲っていた。

 

 

「止まった……」

 

 

やがて爆音が鳴り止んだ。

ボーグは耳を塞いでいた両手を離し、被害確認のため前線指揮車から降り、出口から外へ出た。

 

 

「凄い土煙だ」

 

 

爆発により舞い上がった土が辺りを霧のように覆っている。風が吹いているため、直ぐに土煙は晴れた。

 

 

「これは!?」

 

 

彼の目の前の草原には、爆発によって破壊、又はひっくり返ってしまった友軍の戦車と装甲車、トラックがあった。

 

 

「誰か……誰か生存者は居ないのか!誰か!」

 

 

ボーグは腹の底から大声を出し、生存者が居ないか呼び掛けてみる。だがそれに答える声は無かった。

 

 

「閣下!被害報告纏まりました!」

 

「読む必要はない………」

 

 

 

今までの損害報告と目の前の現状を照らし合わせて自軍の戦力の大多数が失われたのは明白だった。

 

 

「参謀長、残存戦力は?」

 

「シェイファーとハウンドⅡが45両、装甲兵員車30両、戦闘可能な兵員は1500名です」

 

「だいぶやられたな………相手がムーとはいえ、この戦力でキールセキを攻め落とすのは無理だな」

 

「では閣下」

 

「あぁ。撤退しよう」

 

 

 

ボーグは基地まで撤退する決断を下した。命令を聞いた残存部隊は我先にと入り口へ戻ろうとする。

 

 

「ん?」

 

 

その時、進行方向から聞き覚えのある音が聞こえてきた。

 

 

「あれは!」

 

 

 

現れたのは、掃討任務を受けた第1対戦車ヘリコプター隊のコブラだった。

 

 

「対空戦闘!」

 

 

後退中だった隊は急いで砲や機関銃を上に向けるが、その前にコブラからハイドラ70ロケットが放たれ、車両は次々と撃破されていく。

 

 

 

「クソ!これでは戻る事も出来ん!」

 

 

 

淡々と破壊されていく自軍の戦力にボーグは最早どうしようもないと悟り、重大な決断を下した。

 

 

「降伏だ」

 

「え……降伏でありますか?」

 

「そうだ。もうこれ以上、意味の無い戦いをするのは命を無駄にする事に等しい」

 

 

 

ボーグの重苦しい言葉に皆、従うしかなかった。

事前に日本の情報を握っていたボーグは、車内にあった白いシーツを広げ、それを予備アンテナの棒に括りつけて、相手に見えるように大きく振りかざす。

 

 

その直後、コブラは攻撃を中止した。

 

 

第4機甲師団の生存者達は皆、手にしていた武器を一ヶ所に集め、整列すると、両手を上げ降伏の意思を示す。

その後、駆けつけた普通科連隊によりボーグ達は捕虜となり、第4機甲師団は壊滅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




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