「まだ無線の不調は続いてるのか?」
バルクルス基地にある司令室で、ガオグゲルが通信参謀に無線の状態を聞く。
通信参謀は深刻そうな表情で首を横に振る。
「閣下、やはりこれは自然的なものではなく人為的なものなのでは?」
「………確かに通信妨害は理論的に可能とは聞いた事がある。だが我が軍ですらまだ構想段階な物を敵が使ってくるとは思えん。そうなると自然現象としか考えられん!」
彼の思考は典型的な帝国至上主義で、彼の場合は自分たちは他より優れた力を持っており、他国の軍など自分たちが少し本気を出せば恐れるに足らずな考えである。
最強を名乗る第8帝国軍人が自身が率いる部隊が敵から一方的に良いように様にされ、何の成果も得られていない状況では、敵の事を理解する事は難しかった。
「これが収まるまでは空中哨戒と付近の警戒を厳重に。それと周辺の警戒も厳にせよ」
「了解」
ガオグゲルは有線電話による基地内の施設と部隊間での連絡の緊密、見張り塔への見張り員の増員、空中哨戒網の厳重化と航空部隊による24時間待機を指示し、 守りを固めた。
しかし尚もガオグゲルは心中は穏やかなものではなかった。
(第4機甲師団と第1次攻撃隊との連絡途絶………それの前後で起きた通信とレーダー不調………偶然ではない。明らかに敵からの攻撃によるものだ。だが敵はどんな方法で)
深刻な表情で考えにふけるガオグゲル。答えらしい答えは導き出せず、もう来る筈の無い第4機甲師団からの伝令兵の到着を待つしかなかった。
それから時刻が午前0時を過ぎ、日付が変わった頃。
「閣下!」
「どうした?」
「警戒に出ていた第20偵察隊より、アルー方面から敵軍が当基地に向かってきているとの事です!」
「何っ!本当か!?」
「はい。報告では、敵軍は巨大な戦車と装甲車を多数保有していたとの事です!」
「直ちに迎撃態勢をとれ!第3師団を迎撃に出せ!航空部隊も直ちに出撃だ!」
「了解!」
バルクルス基地に警報が鳴り響き、基地内に居た陸軍第3師団、航空部隊が直ちに出撃準備に取り掛かり、僅か10分足らずで第3師団が基地より出撃した。
一方その頃、バルクルス基地より南東方向を空中哨戒部隊のアンタレス3機が飛んでいた。
「もう直ぐ交替の時間だな」
哨戒隊の隊長は、腕時計で時間を確認する。
「しかし無線が使えないと不便だな」
隊長は自ら乗り込むアンタレスに搭載されている無線機の不調に悩まされていた。今の所、近くの友軍機同士とは発光信号で何とかやり取り出来ているので問題はないが、やはり無線交信に慣れると原始的な伝達方法は効率が悪い様に感じた。
「交替時間だな。さっさと帰るか」
交替の時間となり、基地に引き換えそうと操縦桿を捻ろうとした時、目の前に一瞬だけ光点が3つ程光ったのが見えた。
「ん?」
その方向に目線を向けた瞬間…
「うわぁ!」
目の前が強烈な光に包まれ、彼等は愛機共々、空中で四散した。
『こちらエクセル、目標地域に航空脅威なし』
「こちらモールリーダー了解」
空中哨戒隊を撃墜した第203飛行隊と後続の第3飛行隊はバルクルス基地への第1空挺団、第22特殊空挺連隊の降下に備えて予定通りに動いていた。
「こちらモールリーダー、バフへ」
『こちらバフ』
「敵航空目標を排除、貴隊は目標へ突入されたし」
『了解』
203飛行隊の後方に居た第3飛行隊のF-2が麻痺状態のバルクルス基地の哨戒網を突破し、悠々と基地上空10000メートルへと到達した。
『バフリーダーより全機へ、爆撃用意』
第3飛行隊のF-2戦闘機20機のエアインテイク脇に備えられていたレーザー目標指示ポッドから、バルクルス基地の戦闘機格納庫と弾薬庫にレーザー光線を照射する。
『ドロップ、レディ………ナウ!』
F-2に装備されていたGBU-54LJDAM、GBU-12ペイヴウェイが投下された。
地上に向けられるレーザー照射光を落下中の爆弾本体に搭載された受光装置が受け取り、その場所へ精密に落下する機能を持つレーザー誘導爆弾は、目標を捉え進路を変えながら落下していく。
そして、全爆弾は基地の航空機格納庫と弾薬庫に直撃し、基地に爆炎と煙が立ち込めた
続く
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