日本国召喚×不沈戦艦紀伊   作:明日をユメミル

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第21話

爆撃を受けたバルクルス基地に、爆発による衝撃波が伝わる。基地司令室の窓が衝撃波で割れ、中に居たガオグゲルは奥の壁に叩きつけられた。

 

 

「うぅ………」

 

 

背中から感じる痛みに耐えながら立ち上がり、ガラスが割れた窓から外を見ると、航空機格納庫と弾薬庫が炎上しているのが見えた。

 

 

「格納庫と弾薬庫が…………」

 

 

その直後、別の方向からまた爆音が聞こえてきた。その方向を向くと、レーダーと通信用アンテナが爆炎に包まれ、崩れ落ちていた。

 

 

「バカな!こんな暗闇の中をどうやって狙ったんだ!こんなもの練度でどうにかできる問題ではないぞ!」

 

 

 

帝国軍でも精密爆撃と言う概念はあり、その方法とはもっぱらレーダー照準で搭載量が少ない爆撃機で爆弾を効率的に投下するための照準の補助に過ぎない。しかし彼の目の前には、正確に射貫かれたのように爆撃を受け炎上する格納庫と弾薬庫、レーダーと通信アンテナの姿がある。

 

 

 

「クソ!基地防空隊に連絡!直ちに敵航空機の迎撃の準備に掛かれ!また来るぞ!」

 

 

 

ガオグゲルは直ちに基地防空部隊に迎撃態勢を取らせるが、レーダーが使えない状況では、敵の位置や方位が分からないため対空砲が打ち上げられない。

 

 

 

「敵航空機は視認できたか!」

 

「駄目です!サーチライトを使って捜索していますが、発見できていません!」

 

 

 

一応、サーチライトを使って空に向けて目標を探すが、光が照射される距離が短いため、中々発見できない。

 

 

 

「これだと敵が何処に居るか分からんではないか!」

 

 

 

まさかの状況にガオグゲルも他の幹部達もどうしたら良いのか全く分からないでいた。

 

 

「閣下!」

 

「どうした!」

 

「対空砲陣地が攻撃を受けました!」

 

「何だと!?」

 

 

再び外を見ると、先程まで存在していた対空砲陣地から炎と煙が上がっていた。

 

 

「対空砲まで………これでは基地は丸裸だ!他に防ぐ手立ては無いか?」

 

「一応、整備に回していた対空機銃が2基ありますが」

 

「直ぐに準備させろ。今は機銃1丁でも貴重だ」

 

「了解!」

 

 

だが機銃2丁では気休め程度にしかならない事は分かっているが、今の状況を考えれば使える機銃があった事は幸運と思わなければならない。

 

 

 

 

 

 

 

その頃、バルクルス基地へ続く平原で第7師団は動きを止めていた。

 

 

「敵基地爆撃終了」

 

 

指揮所のメインモニターには戦闘機に搭載されているセンサーカメラからのリアルタイム映像が写し出されている。映像ではバルクルス基地から煙と火の手が上がっており、人や車両の動きも活発になっているのが鮮明に捉えられている。

 

 

「既に敵基地周辺の制空権を確保したとの事です。基地に籠っていた敵地上部隊も動出しました」

 

「敵地上部隊の現在位置は?」

 

「先行している第7偵察隊からの報告では、間も無く榴弾砲の射程距離に入ってきているとの事です」

 

「全隊は直ちに予定位置まで後退を開始」

 

 

 

第7師団はその場で後退を開始した。第7師団の戦車部隊と普通科部隊は敵基地から敵地上部隊を引き離すのが作戦で、彼らに食い付いた敵部隊を榴弾砲の射程圏内に引き込む役割がある。

敵に悟られないよう、変則的に速度を変えて敵が追い付けそうで追い付けないように動き、かつ敵に出血を強いる様に攻撃する難易度の高い作戦だが、第7師団ならそれが可能である。

 

 

 

「予定位置に達したら一時停止。その後、特科による砲撃開始だ」

 

 

 

後方では既に第7特科連隊が砲撃準備に入っている。後は敵を事前に設定した着弾位置に誘い込むだけである。

 

 

 

「陸将、敵地上部隊の熱源を捕捉!」

 

「来たか!」

 

 

後退予定位置に近づいた時、暗視装置が敵地上部隊の熱源を補足した。

 

 

「師団本部より各隊へ、作戦開始!」

 

 

作戦開始の合図で第7師団の戦車部隊が動き出した。

 

 

『連隊本部よひ各中隊、状況開始!』

 

 

敵を引き付ける囮を任された第72戦車連隊を構成している4個戦車中隊には合計52両の90式戦車を保有している。各中隊には13両の90式があり、命令を受けた全中隊は早速行動を開始する。

 

 

『中隊各車、前進用意前へ!』

 

 

不味動き出したのは第1戦車中隊だ。1500馬力のディーゼルエンジンが唸りをあげ、マフラーから大量の排気ガスを吐き出しながら向かってくる帝国軍部隊に向けて前進する。

 

 

『中隊長より各戦車小隊、攻撃開始!』

 

『こちら第1小隊長了解!』

 

 

中隊の前衛である第1戦車小隊の90式が増速し、暗闇の中を向かってくる敵戦車に自慢の120㎜滑腔砲を向ける。

 

 

『小隊各車、目標敵戦車。弾種対榴、小隊躍進射、撃て!』

 

 

小隊による120㎜滑腔砲の一斉射撃が始まった。撃ち出された対戦車榴弾はライトを光らせて向かってきていた帝国軍主力中戦車ハウンドに直撃する。そしてほんの僅かな時間のうちにシェイファーは炎上、弾薬の誘爆により車体は大爆発し砲塔が高く吹き飛ぶ。

 

 

『命中!撃ち方待て!目標変換!』

 

 

次の目標へ向けて照準を合わせる。

 

 

『撃て!』

 

 

再び一斉射撃を敵に向かって放つ。狙われたのはハウンドに続き軽戦車シェイファーで、こちらもハウンドと同じ運命を辿った。

 

 

『敵部隊増速!』

 

『小隊停止!』

 

 

前進していた第1小隊はその場で停止し、停止射撃の姿勢を取る。

 

 

『撃て!』

 

 

停止した各90式が砲撃しシェイファーとハウンドを次々と撃破していく。夜間で90式に搭載されている暗視装置と火器管制システムは大いに仕事をしており、砲手席に座る砲手は照準器を覗きながら暗視装置で敵を捕捉、それに向けて照準を合わせてステイックのボタンを押して砲撃、別のボタンで弾種を選択し自動装填装置が砲弾を装填し再び砲撃すると言う動作を何度も繰り返す。

 

 

(まるで鴨狩りだな)

 

 

小隊のある車両の砲手は内心そう思った。

 

 

「車長、残弾10」

 

 

自身の乗り込む車両の残弾を車長に報告する。

 

 

「了解。小隊長、こちら3号車。残弾10」

 

『了解。小隊各車、射撃しつつ後退!』

 

 

残弾が残り少なくなった第1戦車小隊は後退を開始する。操縦手がギアをバックに入れる。

 

 

『操縦手、後退!』

 

 

アクセルを踏み込み、履帯が土を巻き上げながら一気に後退する。

 

 

『砲手、撃ち続けろ!』

 

 

敵に対して砲撃を続けながら後退する第1戦車小隊。敵は後退する第1戦車小隊を追撃しようと速度を上げ追尾してきた。

 

 

『小隊各車、残弾0!』

 

『了解。第2小隊、攻撃用意!』

 

 

後方の第2戦車小隊の隊列の間を第1戦車小隊がすり抜けていく。今度は後退を支援する第2小隊が攻撃を開始する。

 

 

『撃て!』

 

 

第2小隊は最初の一斉射を停止射撃で砲撃、その瞬間に小隊はゆっくりと後退を開始する。

その直後、敵部隊から照明弾がいくつも撃ち上がる。上空で炸裂した照明弾の光は後退する第2小隊を照らし出す。

 

 

 

『小隊各車、発煙弾撃て!』

 

 

しかしそれに慌てる事なく、敵から身を隠すため90式の砲塔に備えられた発煙弾発射機から発煙弾が撃ち上がり、一気に煙幕を展開する。

敵側は煙の壁を前にして90式を見失うが、煙を突き破って砲弾が自車に命中し撃破、砲撃を何とか掻い潜り煙幕に突入するも視界を奪われ速度を落とした所を砲撃を受けた撃破され、夜間による視界不良を相まって混乱が広がっていく。

 

 

「怯むな!突撃ぃ!」

 

「行けぇぇ!!」

 

「突撃ぃぃ!」

 

 

しかしそんな中でも気合いと冷静な判断を下せる兵士も存在しており、煙幕を突き抜けて尚も喰い下がる姿勢を見せる帝国軍。

 

 

 

「勇猛果敢、元気旺盛とはこの事だな」

 

 

 

第2小隊長は車長用サイト越しに、迫ってくる帝国軍に感心する。

 

 

「だがそれが命取りになるんだよ」

 

 

 

第72戦車連隊は囮としての任務を続け、敵との距離を保ちつつ一気に後退速度を上げて、予定地点を過ぎると待機場所へ戻り停止する。

 

 

 

「こちら連隊本部、敵は予定位置に達した」

 

「了解。特科に伝えろ」

 

 

大内田は第7特科連隊に指示を出した。

特科は待ってましたと言わんばかりに、砲撃を開始した。

 

 

『弾着………今!』

 

 

 

敵地上部隊の方向から多数の爆音が聞こえてきた。

熱線映像装置からのカメラ映像では、白黒映像で熱を持った敵地上部隊が白く写し出され、砲弾の爆発により映像が真っ白な靄に覆われ姿が見えなくなった。

 

 

 

「初弾、全弾近。修正射!」

 

 

 

観測員からの報告と砲撃要請に従い、特科は修正をしながら砲撃を続ける。

 

 

「全弾命中!同一諸元、効力射!」

 

 

敵地上部隊には特科の砲撃が大雨のように降り注ぎ、爆発の衝撃波が嵐のように吹き荒れる。

 

 

 

「スッゲェ…」

 

「ヤキマでもこんなに撃たねぇよな……」

 

 

 

陸自隊員も普段の訓練以上の砲撃をする特科に関心と、敵に対して哀れむ。

 

 

「俺らの出番あるかな?」

 

「さぁ……」

 

 

延々と続くかと思われた砲撃も10分で終わった。

爆音が止み、炎の勢いが収まると、戦果確認のためOH-1が現場に急行する。

 

 

『こちらオメガ、戦果確認。砲撃地点の敵部隊は甚大な被害を負っている。後方の敵部隊は戦闘力を維持している模様』

 

「了解。直ちに攻勢に出る。第71戦車連隊前進!日頃鍛えた技術を見せてやれ!」

 

 

 

動きを止めていた第7師団は第71戦車連隊の10式戦車を先頭に、進撃を開始した。

 

 

 

「71戦本管、各中隊攻撃開始!」

 

 

 

第71戦車連隊が一番槍となり、5個の戦車中隊が攻撃を開始した。敵戦車や火砲の射程距離外からFCS制御による照準で放たれた120㎜弾は正確に敵戦車と装甲車に直撃、撃破していく。

 

 

 

『奴ら撃ってきやがった!!恐ろしく正確だ!』

 

『慌てるな!動き回っていれば当たりはしない!』

 

 

 

敵戦車隊は夜間でも正確に撃ち込んでくる砲撃に対して、少しでも被弾のリスクを減らそうと全車両が各々に動き回る。

 

 

 

「敵さんは判断が早い。だが相手が悪かったな」

 

 

だが、世界一の射撃精度を誇る10式のFCSは動目標でも正確に捕捉して1発必中で砲弾を叩き込めるのと、自動装填装置による迅速な装填により無駄弾を撃つ事なく、尚且つ一定の発射速度を維持しながら効率的に敵を仕留めていく。

 

 

『クソ!奴等、1発で当ててきやがる!』

 

『兎に角動き回れ!』

 

『駄目だ!履帯が保たな………ガガガガッ』

 

『4号車がやられた!被害甚大!』

 

『どうしろってんだよ!』

 

 

帝国側の戦車隊は夜間の暗闇中で僅かな光を頼りにした目視照準でしか方法が無いため、殆ど命中弾を与えられず、次々と撃破されていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

「連中、派手にやってるな」

 

 

 

第71戦車連隊が活躍する中、敵部隊の左右側面方向に第72戦車連隊第3、第4中隊が待機していた。

連隊に属する4個戦車中隊を指揮する本部管理中隊の隊長は指揮車両から、第71戦車連隊の動きを眺めていた。

 

 

「中隊長、我々もそろそろ?」

 

「頃合いだな。これより敵側面を突く。各中隊前進前へ!」

 

 

 

第72戦車連隊の各戦車中隊は敵の左右と後方を突き、第71戦車連隊が前を、第72戦車連隊が周囲と後方を塞ぐように包囲する任務を担っている。

 

 

「敵部隊視認!」

 

 

第3と第4中隊は左右から横列隊形をとり、敵の左右側面に姿を表した。

 

 

 

『左敵戦車!』

 

『右からも敵部隊が現れた!』

 

『後ろからも見える!完全に包囲されてる!』

 

 

 

 

敵は左右と後方から現れた部隊に慌てて反撃準備するが、戦車部隊は前方の第71戦車連隊と交戦中で支援が期待出来ず、歩兵部隊が僅かな火力を使い対抗するため前に出る。

 

 

 

「1中の奴らちゃんと残しといてくれたな。各中隊、攻撃開始!」

 

 

 

第3、第4戦車中隊は中隊長のタイミングで攻撃を開始した。

厄介な対戦車砲を優先的に攻撃し、対戦車砲牽引車と砲弾を搭載したトラックを次々と破壊していく。

 

 

 

『クソ!射撃が正確すぎる!』

 

『後退だ!後退しろ!』

 

 

 

敵地上部隊は陸自唯一の機甲戦力を前に歯が立たず、既に保有している戦車戦力と装甲戦力の半分を失っていた。

第7師団と敵地上部隊との激突は、第7師団側の圧倒的優勢で進み続けている。

 

 

 

 

 

その頃、暗闇の空をC-2とC-130がバルクルス基地に向けて飛行していた。

 

 

「降下10分前です!」

 

 

C-2に搭乗していた特殊空挺連隊は降下に備え、パラシュートや武器等の装具の点検を行う。

 

 

 

「1番機ぃぃぃ、行くぞ!」

 

「「「「「おうっ!」」」」」

 

「行くぞ!」

 

「「「「「おうっ!」」」」」

 

「立てぇい!」

 

 

 

指揮官の掛け声に皆が応え気合いを入れ、一斉に全員が座席から立ち上がる。貨物室内の左右一列に並び、パラシュートから延びる開傘索を機内のワイヤーに引っ掛けて降下に備える。

 

 

 

「この作戦の成否が今後の戦いに大きく影響する!良いかぁ!俺達は何だ!」

 

「「「「「精鋭無比!ムー最強!」」」」」

 

 

 

降下長が機内のランプドアを開け、全員が降下準備に入る。開けられたハッチの向こうを見ると月明かりのない暗闇が広がり、下を見ると暗闇で真下にあるであろう降下予定地点はハッキリとは見えないが僅かに炎による明かりが見える。

 

 

 

「もうすぐ直ぐ降下だ!備えろ!」

 

 

 

降下長の言葉に、降下のため全員身構える。

 

 

 

『コンボイ1番機、コース良し、コース良し!用意、用意、用意…………降下!降下!降下!』

 

 

 

 

ランプドアの側にある表示灯が赤から青に変わり、降下長が合図を出すと同時に先頭の隊員が一歩踏み出し、機外へと飛び出していき、流れるように後続の隊員達も次々とC-2から飛び降りていく。

飛び降りた隊員のパラシュートを繋いでいるワイヤーが強制的にパラシュートを開き、夜空に紛れるような黒色の落下傘を頼りにバルクルス基地へ向けて降下していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




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