日本国召喚×不沈戦艦紀伊   作:明日をユメミル

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第23話

戦闘が終結し、基地機能をほぼ失ったバルクルス基地。

夜が明ける頃には第7師団が突入、その日のうちにバルクルス基地は占領された。

 

 

「陸将、捕虜の移送終わりました」

 

 

爆撃で破壊された基地の滑走路の一角に設けられた指揮所で大内田は戦後処理に追われていた。

 

 

 

「ご苦労。それと、ムーの基地占領維持部隊の方は?」

 

「今、到着しました」

 

 

 

ふと何処からかディーゼルエンジンの音が聞こえてきた。後片付けをしていた隊員は、基地の正門から入ってきたムー陸軍の姿に釘付けとなっていた。

 

 

 

「スゲェ……動いてる所、初めて見たぞ」

 

「またエラい骨董品だな」

 

 

お椀をひっくり返したしたような形状の砲塔から延びるT字型のマズルブレーキを装着した90㎜口径の砲身に、2メートルを越える全高を持つ、陸上自衛隊の初代主力戦車を勤めた『61式戦車』が黒煙を上げながら基地へと入っていく。

 

 

 

「あんなのまだ残ってたんだな」

 

「スクラップ置き場にあった奴をレストアしたんだとさ。思いきったもんだ」

 

 

 

20代や30代の比較的若い隊員達がそんな指摘をする61式戦車の砲塔側面と操縦席がある車体前面にはムー軍の所属を示す国章が大きく描かれている。

 

 

 

「おい、見ろよ。次の骨董品のお出ましだ」

 

 

 

61式戦車に続き、2門の105㎜無反動砲をのせた『60式自走無反動砲』、装甲兵員輸送車の『60式装甲車』、更には『L90高射機関砲』までやって来る。何れも陸上自衛隊で使用され退役して久しいものばかりであり、先の61式と同様にムーの国章が描かれてる。

これらは全て、日本のグラ・バルカスへ対する戦略の一環としてムーに対しての研究機材と言う形で供与された物ばかりである。

これらの装備は退役から10年以上が経過している装備のみと言う条件で選出された物であり、万が一にグラ・バルカスに鹵獲され解析されたリスクを考慮した上で選出されたものばかりである。

 

 

 

 

「親父世代の自衛隊見てるみたいだな」

 

「うちの師団長がまだ子供だった頃の光景だぜ」

 

 

 

基地内に入ってきたムーのバルクルス基地占領維持部隊は車両を所定の位置に停車させ、一斉にそれらの車両からムー兵達が降りてきた。

整列したムーの兵士達の元に大内田がやって来た。

 

 

 

「大内田閣下!統括軍本部より当基地の占領維持の特命を受けました、陸軍特別試験評価群の大隊長を勤めます、『オリエント・ヴァンクリーフ』大佐であります!」

 

 

特別試験評価群とはムー陸軍内に試験的に創設された部隊で、主に地球世界の戦術や新兵器の研究を行うテスト部隊であり、彼等が保有している陸上自衛隊の旧車両も研究の一環として保有しているものであり、自衛隊からすれば旧式も良いところだが、彼等からすれば最新兵器の目白押しであった。

 

 

「ご苦労様です。明後日には我々は当基地を撤収しますので、その間、我々は貴隊を全力でサポートいたします」

 

「お気遣いありがとうございます!それでは我々はこれより当基地の調査と休息に入ります。失礼いたします!」

 

 

 

オリエント大佐は部下達と共にバルクルス基地の内部調査作業に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

それから日が経ち、レイフォルにあるグラ・バルカス帝国外務省レイフォル出張所。

出張所内にある会議室には、グラ・バルカス側の代表を勤めるシエリアとダラス、日本代表の朝田と篠原、ムー代表のムーゲとオーディグスらが、今回の両軍との衝突についての実務者協議を行っていた。

 

 

「では今回の武力衝突については、ガオグゲル将軍とボーグ司令官の聴取通り、貴国の軍上層部は指示も関与もせず、全て彼らによる独断と言う事で宜しいですね?」

 

「そうだ。我が国の軍上層部はバルクルス基地駐留の第8軍団に対して、戦闘の指示は出していない」

 

「しかし、それに関する証拠がありませんと我々としても貴国のその言葉について受け入れるのは…」

 

 

 

協議の進捗はやはり平行線を辿っていた。

日本とムー以上にこの軍事衝突はグラ・バルカス側にとっても想定外だった。

元々、ムーを含めた第2文明圏への軍事侵攻は以前から計画されていたが、カルトアルパスや3ヶ月前のオタハイト・マイカルへ対する軍事攻撃の件で軍部を含めた帝国上層部は計画の実行について慎重になり、敵国の軍事力を含めた情報収集活動を中心にした方針が決まった矢先に今回の前線部隊の独断による軍事行動。

 

 

これは戦略的に大きな痛手である。

 

 

もしここで日本及びムーと衝突すれば、帝国は世界制覇のための貴重な戦力を失う事になる。帝国政府は火消しに走り、シエリアとダラスは今回の実務者協議ではいつも以上の緊張感を持って臨んでいた。

 

 

 

「証拠も何も、我々は指示をしていない。指示をしていないので証拠など元から存在しない」

 

「では本当に今回の事については貴国の意向では無いと?」

 

「そうだ。今回の第8軍団の行動について我々は、皇帝陛下の意向に背いた重大な反逆行為と認識している。決して我が国の総意ではない」

 

 

 

シエリアは毅然とした態度で答える。

会議室内の空気が張り詰める。朝田は書類を取り出し、その内容を読み上げる。

 

 

 

「我が日本国とムー国は貴国の前線部隊との軍事衝突を突発的な国境紛争と認識します。それを踏まえて貴国には軍事衝突で発生した損害へ対する賠償金の支払いと謝罪を要求します」

 

 

 

それを聞いたシエリアとダラスは驚いた。

普通なら宣戦布告とも取れない事をした上で謝罪と賠償金の支払いだけを要求してきた。

 

 

 

「賠償金と謝罪のみで今回は手打ちと言う認識でよろしいか?」

 

「はい。我が国とムー国は共に平和を愛する者としてこれ以上の事は望みません」

 

「……………………承知した。今回の件は私が責任を持って本国に持ち帰る。謝罪に関しては時間が掛かると思う、賠償金に関しては直ぐと言う訳にはいかないが何とか用意するよう努力する」

 

「ありがとうございます」

 

 

 

 

日本とムーからの要求はシエリアを通じて本国に持ち帰られ、後日、要求した以上の賠償金とグラ・ルークスの署名入りの謝罪文が送られた。

 

 

 

 

 

 




次回は、ちょっとした閑話休題を投稿する予定です。


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